概要
2020年9月28日に東京都(以下、都)における「プラスチックの持続可能な利用に向けた新たなビジネスモデル」に選定されたLoop Japan合同会社(以下、Loop Japan)の「オフィスビル内飲食店のテイクアウト弁当にリユース容器を使用するビジネスモデルの検証事業」について、公益財団法人東京都環境公社(以下、公社)が取材しました。
※オフィスビル内飲食店のテイクアウト弁当にリユース容器を使用するビジネスモデルの検証事業
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/recycle/single_use_plastics/company.html
取材内容
LOOP JAPAN
アジア太平洋統括責任者/日本代表
エリック カワバタ様
(公社)
本事業を取材するにあたりまして、まずLoopの取り組みについて全体的な概要を教えてください。
(Loop Japan)
Loopの取り組みは、リユース容器による商品提供サービスであり、使い捨て社会への挑戦が目的である。
そもそも日本における容器は、牛乳ビンを例にして考えると、以前は牛乳ビンのように、メーカーの資産であるものが多かったため、耐久性の高い容器とし、できるだけ長く使用することで減価償却できた。
これらと同様の取り組みを実施することで、持続可能なサプライチェーンを構築したいと考えている。
2019年1月のダボス会議でLoopを発表したところ、メディアで大々的に報道される等、社会的に大きな反響を呼んだ。
Loopは世界的にも広がりを見せている。具体的には、2020年7月にイギリス、来年初頭にカナダ、2021年3月に日本、2021年6月にオーストラリアで実証試験が始まる。
ECサイト(※1)への参加メーカー数は、当初の12社から現在では150社以上に増えている。取り扱う商品についても、当初は30~40種類であったが、今では500種類程度まで増えている。
(※1)ECサイト
インターネットや専用線などのネットワークを利用して、売買や決済、サービスの契約などを行うウェブサイト
(公社)
今回、大規模オフィスビル2か所の飲食店でのテイクアウト弁当及びスーパーマーケットの惣菜にリユース容器を使用する本事業の実施に至った経緯について、具体的に教えてください。
(Loop Japan)
関係者のみが出入りするオフィスビルと消費者の定期的な来訪が期待できるスーパーマーケットであれば、使用済み容器の回収が容易となり、本事業における循環型スキームの検証が効果的に行えると考えている。
コンビニエンスストア等でも、リユース容器の使用に高い関心を持っている。同様の取組が展開できれば効果が大きいと思われるため、今後、本事業の実証結果を活かせれば良いと考えている。
(公社)
本事業で使用するリユース容器について、何か工夫した点があれば教えてください。
(Loop Japan)
他の容器メーカーやNPO法人と協議し、リユース容器について遵守すべき基準を決定した。それは、①最低10回使いまわせる耐久性を有していること、②洗いやすい形状・デザインであること、③容器の素材がLCA(※2)の観点で優れていること、という3つの基準である。
これらの基準を遵守しつつ、消費者が「リユースは楽しい」と感じてもらえるよう、高品質のデザインを有する容器にしている。例えば、容器の素材がプラスチックからステンレスになれば、「かっこいい」と感じてもらえる可能性が高くなる。
(※2)ライフサイクルアセスメント
製品の資源採取から原材料の調達、製造、加工、組立、流通、製品使用、さらに廃棄にいたるまでの全過程(ライフサイクル)における環境負荷を総合して、科学的、定量的、客観的に評価する手法。
本事業においてオフィスビルで使用するリユース弁当容器
(公社)
三菱地所㈱と森ビル㈱のオフィスビルで実施するとありますが、それぞれのオフィスビルでの具体的なスキームについて教えてください。
(Loop Japan)
リユース容器を使用した弁当の購入者は、テナントに入っている特定の企業の社員限定であり、希望者は社員証を提示して購入する。
使用済み容器は、オフィスフロアに設置された返却箱に返却され、ビル管理者に回収される。その後、オフィスビルから洗浄施設へ運ばれ、洗浄・消毒される。洗浄後の容器は梱包され、提携物流会社によって発送されることになる。
容器が返却されると、購入者には次回購入時に使えるクーポンが配布される。
(公社)
惣菜事業として小売店でリユース容器を使用するとありますが、具体的なスキームについて教えてください。
(Loop Japan)
都内の小売店において、量り売り商品で使用することを想定している。
購入者は商品を容器とともに自宅に持ち帰り、次回の来店時に持参して返却箱に返却する。返却者には何らかのインセンティブを付与することも検討している。
(公社)
リユース容器の洗浄・消毒について、洗浄・消毒工程を具体的に教えてください。
(Loop Japan)
専門の洗浄施設において、洗浄力の強い洗剤や強い水圧で洗浄するようにしているため、衛生的に安心できる仕組みになっている。
(公社)
本事業の実施スケジュールを教えてください。
(Loop Japan)
物流・配送経路の確保や容器の洗浄・消毒テストは、既に実施済みである。実際に販売を開始する時期については、オフィスビルの弁当事業では2020年12月、小売店の総菜事業では2021年1月を、それぞれ予定している。
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(公社)
本事業にも関連しますが、昨年度、都が実施した「プラスチックの持続可能な利用に向けた新たなビジネスモデル」においても、LOOP Global Holdings LLC及びTerraCycle Japan 合同会社による「リユース容器を利用した商品提供プラットフォーム(Loop)」が選定され、2020年2月に事業が終了しました(※3)。当該事業についてもお伺いします。
(※3)プラスチックの持続可能な利用に向けた新たなビジネスモデル事業報告書の掲載について
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/recycle/single_use_plastics/pla_report.html
エコプロ2019に出展した昨年度の事業
(公社)
実施報告書において、本プロジェクトに参画するメーカー各社の日用消耗品や食品など、リユース容器を利用した商品の先行販売および使用後の容器回収を開始するとありますが、この取組の進捗について教えてください。
(Loop Japan)
2020年秋から開始予定であったが、日本では初めての試みとなるため、また利用者の皆さんに安心していただくためにも準備を万全にする必要があると考え2021年3月に変更となっている。
(公社)
本プラットフォームのパートナー企業等の新規参画予定など、進捗があれば教えてください。
(Loop Japan)
最初は大手企業が主に参画していたが、最近は中小企業の顔ぶれも見られる。現時点でのパートナー企業は合計22社となっており、直近でも参画を予定している企業はある。
(公社)
昨年度のエコプロ2019に出展されて、参加者やメディアから多数の反響がありましたが、今後、同様にイベントやセミナー出展などの予定があれば教えてください。
(Loop Japan)
2021年3月に、ローンチイベントの開催を予定している。開催場所については、現在検討中である。
今後の予定
本事業の進捗については、次回「オフィスビル内飲食店のテイクアウト弁当にリユース容器を使用するビジネスモデルの検証事業への取材part2」で報告します。
LOOP JAPAN カワバタ様、取材へのご協力ありがとうございました。
以上