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ワンウェイプラスチックの水平リサイクルに向けた資源循環型モデル事業への取材 part2

2021.03.17

概要

 2020年9月2日に東京都(以下、都)における「プラスチックの持続可能な利用に向けた新たなビジネスモデル」に選定された花王株式会社(以下、花王)の「ワンウェイプラスチックの水平リサイクルに向けた資源循環型モデル事業」について、公益財団法人東京都環境公社(以下、公社)が、2020年10月26日に公開した取材part1に引き続き取材しました。

 

※前回

ワンウェイプラスチックの水平リサイクルに向けた資源循環型モデル事業への取材part1

https://www.tokyokankyo.jp/waste-plastic/stakeholder/516.html

 

※ワンウェイプラスチックの水平リサイクルに向けた資源循環型モデル事業

https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/recycle/single_use_plastics/company.html

 

 

取材内容

 

(公社)

 単一素材パウチ(以下、パウチ)及び再生樹脂を使用したボトル(以下、ボトル)について、製造の進捗状況を教えてください。

 

(花王)

 ①パウチ

 凸版印刷株式会社が単一素材のパウチを製造した。単一素材として、ヒートシール性(※1)に優れるオレフィン系樹脂を用いた。ハンドソープ400mlを充填できるスタンディングタイプの詰め替えパックを設計した。つめかえ時の注ぎ口は、ハサミでカットする仕様である。このパウチに花王にてハンドソープを充填した。

 (※1)ヒートシール

 シール加工法の一つ。一定の加熱・加圧によってプラスチックフィルムを溶融接着させる方法。
 

詰め替えパック(左:表、右:裏)

 

 ②ボトル

 株式会社市川環境エンジニアリングで製造し、2,000本を用意した。

 ボトルの構造は、「バージン層(PE ポリエチレン)/接着層/バリア層(EVOH エバール)/接着層/リサイクル層/バージン層(PE ポリエチレン)」の6層である。

 

ボトル層の構造

 

 リサイクル層の割合は約50%であり、ここに、洗浄・分別した発泡トレイ等をエコミラ江東(※2)で再生した樹脂が使われている。ポンプ部分は市販の花王の泡ハンドソープに使用しているポリプロピレン製(バージン材)のものを使用した。

 (※2)エコミラ江東

 江東区とNPO法人地球船クラブの協働による環境福祉事業によって開設されたリサイクル施設。

 

発泡トレイ(白色)の選別              再生PS(ペレット)の製造

 

製造したボトル外観

 

 再生PSを用いたボトル及び使用済みパウチを用いたボトルは、それぞれにおける再生材比率が最大50%を目標にしている。

 


 

(公社)

 再生樹脂の使用したボトルについて課題があれば教えてください。

 

(花王)

 PSの再生樹脂を使用したボトルで自社ハンドソープを提供した実績が無かったため、再生樹脂由来の影響(容器強度、不純物の溶出に対する安全性)について試験中である。

 


 

(公社)

 パウチ・ボトルの製造について、品質管理(強度やバリア性など)で苦労したことがあれば教えてください。

 

(花王)

 ①パウチ

 本事業における容器の品質に関する規格(袋強度、ヒートシール性、ヒートシール強度など)を満たす為の改良に苦労した。

 

 ②ボトル

 大きな問題は無かったが、安全性を考慮して円形と楕円形の二種類の試作を行い、落下強度や設置した際の安定性から、円形を採用した。

 


 

(公社)

 単一素材のパウチ等を今後市場で販売していくとした場合、現時点での課題などを教えてください。

 

(花王)

 以下の課題が想定される。

 ①バリア性

 バリア性については、紫外線などの光に対するバリアと、酸素及び水蒸気などガス(気体)に対するバリアである。これらに関しては、パウチメーカーが有するアルミ蒸着等に代わる非金属透明バリア技術の適応に期待している。

 

 ②強度(ヒートシール部分)

 強度(ヒートシール部分)については、単一素材の場合、複合材のように融点差を活用して接着できないため、条件設定が非常に難しい。生産性とシール強度がトレードオフになることが課題になりそうである。

 


 

(公社)

 パウチ・ボトルの配布先及び配布時期について教えてください。

 

(花王)

 配布先は、江東区内の小中学校全70校の他、スポーツ施設・文化施設等20施設を予定。

 配布時期は、20214月上旬(学校の始業式以降)を目途に配布を開始予定。

 


 

(公社)

 ボトル1個製造するに当たり、パウチを何個回収するとできるのでしょうか。

 

(花王)

 一般論としては、再生材100%のボトル1個を作るためにパウチが4~5個必要となる。

 


 

(公社)

 配布場所に学校が含まれていますが、配布する際に、何か工夫や配慮した点があれば教えてください。

 

(花王)

 江東区の要望により、本事業の教育上における意義を簡潔に伝えるため、配布先の手洗い場に掲示するPOPやボトルに貼り付けるラベルを作成した。

 


 

(公社)

 今回、パウチについてモニター調査を実施されましたが、その内容、反響等について具体的に教えてください。

 

(花王)

 「シンプル」「エコな感じがする」「ごみが少なくなりそう」等といった意見が出ており、概ね好印象である。一方で「(パウチの詰め替え口を)ハサミで切るのは面倒」が約6割を占めており、「詰め替えにくい」が最大の課題である。今後は頂いたご意見を踏まえて改良を加えていきたい。

 


 

(公社)

 本事業の今後のスケジュールを改めて教えてください。

 

(花王)

 パウチ及びボトルは、20214月上旬を目途に江東区の公共施設(江東区内の全小中学校等)への配布を開始した後、5月下旬までに使用済み容器を回収する。

 


 

(公社)

 本事業におけるワンウェイプラの水平リサイクルを踏まえて、御社は今後、どのようにプラスチックの国内資源循環を進め、本モデル事業を今後どのように発展させていくお考えでしょうか。

 

(花王)

 今後、プラスチック資源循環の最重要課題はCO2削減と経済性(コスト)の両立であり、これが環境ビジネスを回すことのポイントである。そのためには、安価で無駄のない分別回収システムの開発や、ソーターなどを用いたプラ容器の精密選別の開発、環境配慮型容器設計の標準化(基準・規格作り)が必要である。

 


 

(公社)

 第1回目の取材においてCLOMAとの関わりを話されていますが、CLOMAでの今後の展開はどのようにお考えでしょうか。

 

(花王)

 CLOMAというプラットフォームを活用して他社の技術と連携しながら開発を進めたい。今回の取り組みに関しても、オープン/クローズで可能な限り開示する事が重要である。競争領域(ビジネス)と協創領域(環境貢献)を明確にしていけば可能なはずである。

 

 

 花王株式会社 南部様、取材へのご協力ありがとうございました。

 

以上