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ダイオキシン、PCBの都内環境実態と対策事例

 ダイオキシン類は、 ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、コプラナーPCBCo-PCB)の3種の化合物群の総称で、燃焼、漂白等の塩素処理、農薬製造時の不純物、PCB製品などが汚染原因として知られています。強い毒性から社会的な関心も高く、近年対策が進み、排出量は大幅に減少(※1しています。しかし、環境中では分解しにくい化学物質のため、過去に排出されたダイオキシンによる汚染が課題となっています。

 近年のダイオキシンの発生量は99%が燃焼起源で、排出先は大気と考えられていますが、焼却炉対策の進展を反映し、大気の濃度は年々低下※1しています。ただし、ダイオキシン類の1割近くを占めるCo-PCB濃度はあまり低下せず、環境中に漏洩したPCB製品が大気濃度にも影響しているのがわかってきました。

 水環境では、農薬不純物由来と思われるダイオキシンの影響で河川下流や都内湾の水底土砂(底質)に若干の濃度上昇が見られるものの、ほとんどの地点の濃度レベルは低いという結果(※1が得られています。しかし、東京湾に近い小河川の底質から高濃度ダイオキシンが検出され、詳細分析から塩素処理で生成する汚染であることがわかりました。そこで、同地区は平成17年に河床をセメント固化する対策が実施されました。また、周辺で釣りが行われていることからハゼの調査も行ったところ、問題となる濃度ではないもののハゼには底質を汚染している PCDFではなくCo-PCBが蓄積していることがわかりました。都内湾のスズキやアナゴの調 査(PDFファイル3295k)を行った際もPCB製品由来のCo-PCBがダイオキシン汚染の主体でした。日本人のダイオキシンの摂取由来の8割は魚介類のため、ダイオキシンの中でも生物濃縮しやすい性質をもつCo-PCB汚染対策は焼却対策とともに重要な課題と考えられます。東京では平成17年からPCB製品の最終処理が始まりましたが、保管PCBの処理には約10年かかるため、処理が完全に終了するまでPCBの漏洩防止やその検証を行っていかなければなりません。

 土壌のダイオキシンの場合にも、都内のほとんどの地点は濃度レベルが低いものの、一部にPCB製品などに由来する汚染が判明し、掘削・土壌処理が実施されました。こうした汚染場所の調査修復には長い時間と人手、多額の費用が必要となります 。環境汚染という負の遺産を次世代に残すことがないように、有害影響の恐れのある化学物質の調査・研究を進めていきたいと考えています。

 

※1)こちらをご覧下さい→平成1 8年度都内ダイオキシン類排出量推計結果及び環境中のダイオキシン類調査結果について(東京都環境局HP)

ダイオキシン類、PCB図