Interview

親子で体験、楽しみながら学ぶ「TOKYO-ecosteps」

東京都環境公社のメンバーシッププログラム「TOKYO-ecosteps」。自然への理解を深める体験や環境保全活動など、さまざまなイベント情報が見つけられるプログラムです。プログラムの会員登録をすれば、体験やイベントに参加するたびにポイントが貯まり、エコアクションを日常に組み込むきっかけづくりにもなります。

そんな「TOKYO-ecosteps」で紹介されているイベントの一つが、環境学習講座「都会で楽しむ鳥さんぽ~命にぎわう夏~」です。豊かな自然環境が保全されている公園で、専門家の解説とともに鳥や虫、植物を観察できます。

今回は、日頃からInstagramで親子のお出かけ情報を発信しているまさよさんと、お子さんのまおさんに参加してもらいました。お二人の感想も交えながら、イベントの様子をレポートします。

自然界の夏は「命にぎわう」季節

イベント会場は、とある都内の公園。周囲は物流倉庫に囲まれ、道路には大きなトラックが行き交います。しかし、公園のなかに一歩足を踏み入れれば、池や芝生、木々が生い茂るエリアなど自然に囲まれた空間が広がっていました。都内にありながら、ここでは年間120種類前後の野鳥が観察されるそうです。

まさよさんとまおさんは、普段から自然スポットに出かけるのが好きだといいます。公園入口からイベント会場へ向かうわずか数分の道を歩いているだけでも、普段の生活では見かけない植物や虫を見つけていました。

「綺麗な紫陽花だね!」「こんな所にキノコが生えてるよ」「見たことない色の蝶々がいる」と、まさよさん・まおさんの会話も弾みます。

まさよさんとまおさんが公園を歩きながら植物や虫を見つけている様子の写真

この日のイベントには、30人近くの参加者が集まりました。家族連れで参加されている方もいれば、夫婦で参加されている方、もちろん1人の参加者もいます。まずは参加者全員で、講師の先生から野鳥観察のレクチャーを受けました。

講師は、公益財団法人日本野鳥の会参与の安西英明先生が務めます。野鳥や自然観察、環境教育をテーマとした講演や、野鳥図鑑の解説を行ってきたプロフェッショナルです。

安西先生が講義をしている様子の写真

「命にぎわう夏」と副題のついた今回のイベントについて、安西先生は次のように解説します。

安西先生「“命にぎわう夏”という言葉には、いくつもの意味が含まれています。まずは、春に生まれた鳥たちがすくすくと育つ季節としての夏。そして、鳥たちのエサとならずに、生き延びた虫たちも元気に活動する夏。さらに、花がたくさん咲く季節でもある。夏は、あらゆる命がいっせいに躍動する季節なんです」

解説を聞くほど、鳥の名前や見分け方がわかっていく

レクチャーを終え、まずは施設のなかから水辺の鳥たちを観察しました。施設には野鳥が観察できるよう、大きな窓の近くに望遠鏡が用意されています。安西先生が、双眼鏡や望遠鏡の使い方をレクチャーしてくださいました。

まおさんが双眼鏡をのぞき込んでいる様子の写真

安西先生「鳥を見るときは、はじめから双眼鏡や望遠鏡を覗いてはいけません。コツは、まず肉眼で鳥を探し、大まかに方向を定めてから、観察したい鳥に合わせてピントを調節すること。肉眼のほうが、双眼鏡や望遠鏡よりも視野が広いからです。それから、鳥はいつ動くかわからないので、遠慮せずにパッと見ましょう!」

水辺を眺めていると、茶色っぽい鳥や白っぽい鳥、大小さまざまな野鳥が集まっています。例えば、カラスと同じくらいのサイズのコサギ、それよりも少し大きなサイズのダイサギが見られました。

よく「シラサギ」と呼ばれる鳥ですが、学術的には「シラサギ」は存在せず、「ダイサギ」「チュウサギ」「コサギ」とサイズで区別されるのだとか。

そして、エメラルドグリーンの目が特徴的なカワウもたくさん集まってきます。まおさんも、望遠鏡を覗きながら、じっくりとカワウを観察。

まおさん「見えた! 茶色い羽の鳥がたくさんいる。みんな同じ方向を向いてる!」

たくさんのカワウが同じ方向を向いている様子の写真

安西先生は、「鳥は風向きに合わせて身体の向きを決めます」と言います。見てみると、この日はたくさんのカワウが右向きに並んでいました。

そのほかにも、水辺をトコトコと歩くコチドリやシギ、唯一日本で繁殖するカモであるカルガモなど、複数の鳥たちを一度に眺めることができました。安西先生の解説や、施設にある展示とともに楽しむことで、何気なく見ていた鳥たちの名前や見分け方がわかるようになっていきます。

公園の生き物や植物も、先生と歩けば発見の連続

施設を飛び出して、公園内を歩きながら自然の観察も行います。

まおさんが虫眼鏡で植物を観察している様子の写真
まおさんが花をカメラで撮っている様子の写真

安西先生は、鳥だけにとどまらず、鳥たちが暮らす自然環境や虫にも詳しい先生です。「公園内に茂った笹の葉は、実はイネ科の植物です。アオスジアゲハという蝶は、実はクスノキ科の植物の葉を食べます」など、先生のお話を聞きながら歩いているだけで発見の連続。

またクスノキは、香りも特徴的な植物。まおさんは、公園内で拾った葉を嗅いで驚きます。

まおさん「いい匂いがする!」

まおさんがクスノキの葉を嗅いでいる様子の写真

最後は「羽」を観察し、生物多様性を考える

外での観察を終えたら施設に戻り、鳥の羽を使った実験を行いました。夏は鳥たちの換毛の時期でもあります。

安西先生「鳥の羽はとても精巧な仕組みになっています。水を弾くので、雨が降っても傘いらずです」

実物の羽を観察すると、1本1本の羽毛にはフックのような構造がありました。これによって羽毛同士がしっかりと絡み、きれいに連結されています。この羽と羽の絡み合いに加え、鳥たちは自身の腰から分泌する油を羽繕いしながら羽毛に塗っています。それらの効果によって水を弾くようになっているのだそうです。実際に、鳥の羽に水滴を載せてみると、吸収されることなく、弾かれました。

まおさんが鳥の羽に水滴を載せて実験をしている様子の写真

また、フクロウといった貴重な猛禽類の羽の観察をする時間もありました。ふわふわとした手触りに参加者たちから声が上がります。

まおさん「気持ち良い羽だよ。ママも触ってみて」

まおさんも、羽に夢中です。

まおさんがフクロウの羽を触っている様子の写真

そして、最後は安西先生の講演で締めくくられます。安西先生は「もともと多様な動植物が暮らしていたはずの地球ですが、地球上の哺乳類の質量で比較すると、現在は野生動物が4%、人間が36%、人間のために育てられている家畜が60%といった割合になっています」と解説。人間と家畜を合わせると96%にもなり、いつの間にかほとんど人間のための惑星になってしまったかのようです。

こうした状況のなかで、自然の多様性を回復させるために提唱されているのが、「ネイチャーポジティブ」(※)という考え方です。これは、自然が元に戻っていく状態をつくるため、生物多様性の損失を止め、反転させることを指します。

東京都では、2030年にネイチャーポジティブを実現するため、「自然と共生する豊かな社会を目指し、あらゆる主体が連携して生物多様性の保全と持続可能な利用を進めることにより、生物多様性を回復軌道に乗せる」という目標を掲げています。

今回の講座で観察したような野鳥たちを守ることも、ネイチャーポジティブの実現に向けた取組のひとつです。

出展:「東京都生物多様性地域戦略」

安西先生が講義をしている様子の写真

安西先生は日本野鳥の会創設者・中西悟堂の言葉を引用し、「人類は月に行けても、木の葉すらつくれない」と語りました。自然は人間の暮らしに欠かせないものでありながら、人間の力で簡単に生み出せるものではありません。いまある自然を守り、活かしていく姿勢が大切なのです。

日常のなかで、自然と触れる機会をつくる大切さ

野鳥や自然の観察から、安西先生の講演まで盛りだくさんだった本イベントを振り返って、まおさんはこんなふうに話してくれました。

まおさん「双眼鏡で鳥を眺めたのが楽しかったです! あと、鳥の羽を観察したのも初めて。水を弾くのが綺麗だった」

まさよさんとまおさんが手をつなぎながら、まおさんがこちらを向いている様子の写真

まさよさんは、子どもだけでなく、むしろ大人にとっても学びや発見の多い講座だったと語ります。

まさよさん「先生のお話や、ほかの参加者さんの質問が印象的でした。『なぜ最近のスズメは逃げないのか』とか、風景の解像度が上がる時間でした。それに、鳥の羽を実際に触る機会もなかなかありません。鳥によって羽の様子もこんなふうに違うということを体験できたのが、私にとっても子どもにとっても貴重な機会になりました」

普段から自然のある場所に出かけているというまさよさんご一家。都内で暮らしているからこそ、意識的に自然と触れあう機会をつくることを大切に考えているそうです。

公園の植物の写真

まさよさん「都心に住んでいるので、意識しないと自然と触れ合う機会が少なくなりがちです。まおがもっと小さかった頃、マグロの解体ショーを見て『これはマグロじゃない』って言ったんです。切り身の状態しか知らなかったから、マグロという魚が本来はどういう生き物なのか知らなかったんですよね。

同じようなことは、野菜でも起きると思います。野菜がどのようなかたちで育つのか、土に埋まっているのか枝に実るのか。解体ショーでのまおの反応を見て、もっと自然に触れる機会をつくらなきゃと思ったんです」

商業施設やマンション、ビルなどの多いエリアで暮らしていると、自然本来の姿を知る機会は限られてしまいがちです。だからこそ、意識して自然に触れる時間をつくることが、地球環境へも意識を向けるうえで大切なことなのかもしれません。

川遊びで気づいた、環境保護の大切さ

意識して自然に触れる機会を増やしたことで、まさよさん自身もエコや環境保護を意識する機会が増えたといいます。

まさよさん「夏に川へ遊びに行くと、きれいさが場所によって本当に違います。澄んだ川と、汚れてしまった川を比べると、私たちが日常的に環境に良い生活を意識しなきゃと感じます」

「TOKYO-ecosteps」では、野鳥観察以外にもさまざまなプログラムを紹介しています。まさよさん一家も、家族でのお出かけだけでなく、専門家やほかの参加者さんと一緒に楽しめるイベントにもまた参加してみたいと教えてくれました。

「TOKYO-ecosteps」公式サイトの画面スクリーンショット
「TOKYO-ecosteps」公式サイト

まさよさん「いつものお出かけとは違う特別な体験になると思います。『TOKYO-ecosteps』には、里山での田植えや稲刈り体験、海岸の清掃活動などもあると聞きました。もう少し子どもが大きくなったら、そういった体験をしてみるのも良いんじゃないかなと思います。自然を肌で感じられるプログラムがたくさんあることがわかったので、今後も参加してみたいです」

「TOKYO-ecosteps」では、自然への理解を深めたり、環境保全につながる行動を実践したりできるプログラムを紹介しています。ぜひ、皆さんもウェブサイトをチェックしてみてくださいね。

取材・執筆:白鳥菜都 撮影:佐藤翔 編集:森谷美穂(CINRA, Inc.)

まさよさんとまおさんが向かい合い、手を握っている様子の写真
まさよさん(まおさん)
子連れお出かけクリエイター

東京在住。家族で47都道府県を制覇し年80泊する子連れ旅のプロ。自然体験や絶景を通じた「旅育」で娘たちの生きる力を育む。自身の体験をもとに、ママたちが失敗しない「わざわざ行きたい全国のスポット」を発信中。

Instagramアカウント:@masayo_to_travel

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