日本では、2018年に「気候変動適応法」という法律が制定されました。気候変動適応法は、国・自治体・事業者・国民が連携し、気候変動による被害を防いだり、軽減したりするための適応策を推進する法律です。では、実際に取り組まれ、実行されている適応策にはどのようなものがあるのでしょうか。 このページでは、気候変動に対する適応策としての世界、日本、そして東京の取組を見ていきます。

「適応(Adaptation)」の概念と重要性

気候変動への対策として、ぱっと思い浮かぶのは「二酸化炭素の排出量を減らし温暖化を食い止めよう」というものではないでしょうか?こうした対策のことを「緩和策」と言います。ここからは、もう1つの気候変動対策である「適応」という考え方についてご紹介します。

2つの気候変動対応策

気候変動への対策は大きく2つに分けて考えられています。ひとつは温室効果ガスを減らし、変化の進行を抑える「緩和」。もうひとつは、すでに起きている・これから起きる影響に備える「適応」です。

仮に今すぐ温室効果ガスの排出を止めることができたとしても、大気中には温室効果ガスがとどまっており、気候変動をすぐに止めることは困難です。そのため、すでに進んでしまっている温暖化の影響による被害を減らすための「適応策」も同時に進めていく必要があるのです。

このページでは特に、私たちの暮らしを守るための「適応」をわかりやすく整理していきます。

気候変動対応策に関する国際的な取組

気候変動は国境を超える課題です。国際的な合意と国の計画があり、その方向性が東京都の施策にもつながっています。国際的な合意として最も大きなものが「パリ協定」とそこで定められた「1.5℃目標」です。

パリ協定とは

2020年以降の地球温暖化に関する国際的な取組として、「世界の平均気温上昇を産業革命前と比べ2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求する」という世界共通の長期目標「パリ協定」が採択されました。パリ協定では気候変動に対する適応策を、温室効果ガスの削減(=緩和策)と並ぶ国際的な枠組みとして位置付けています。

1.5℃目標

気候変動の影響を最小限にするために、パリ協定では世界の平均気温上昇を1.5℃未満に抑えることを目標としています。1.5℃を超えてしまうとドミノ倒しのように環境の変化や種の損失等が起こり、後戻りできなくなるポイントと言われています。

このまま地球温暖化が進んでしまうとどうなる?

このまま何もせず地球温暖化が進んでしまい、1.5℃を超えてしまうと、一体どうなってしまうのでしょうか。

日本における気候変動への適応計画

日本では、平成30年11月に気候変動適応計画が策定されました(令和3年改定)。気候変動適応計画には、下記の基本戦略のもと、分野別の施策が定められています。

  • あらゆる関連施策に気候変動適応を組み込む
  • 科学的知見に基づく気候変動適応を推進する
  • 我が国の研究機関の英知を集約し、情報基盤を整備する
  • 地域の実情に応じた気候変動適応を推進する
  • 国民の理解を深め、事業活動に応じた気候変動適応を促進する
  • 開発途上国の適応能力の向上に貢献する
  • 関係行政機関の緊密な連携協力体制を確保する

東京都の気候変動適応策

東京都では、令和6年3月に、気候変動適応法第12条に基づく「東京都気候変動適応計画」を改定し、下記の5つの分野ごとに、今後の取組をまとめています。

  • 自然災害
  • 健康
  • 農林水産業
  • 水資源・水環境
  • 自然環境

東京都気候変動適応センターは、気候変動に関する情報の収集・整理・分析などを通して、東京都が推進する適応策を積極的に支援していきます。

自然災害

激甚化する豪雨や台風に伴う洪水、内水氾濫、高潮、土砂災害等の自然の脅威に対して、ハード・ソフト両面から、最先端技術の活用、都市施設の整備を推進します。近年の台風の大型化や豪雨の頻度増加に対処するため、施策の更なるレベルアップを図ります。

  • 河川における護岸や調節池の整備
  • 無電柱化の推進
  • 地下鉄等における浸水対策
  • 水防災情報の発信強化  など
健康

熱中症や感染症などの患者発生、大気汚染による健康被害の発生など、気温上昇による健康影響を最小限にするため、適切な予防策や対処策の更なる強化を図ります。

  • クールスポットの創出
  • 遮熱性舗装等の整備
  • スマートポールの整備・活用
  • 蚊媒介感染症対策
  • PM2.5・光化学オキシダント対策  など
農林水産業

気候変動の影響による栽培適地の変化、品質低下、台風被害などの懸念に対して、気温上昇などに適合する品目・品種への転換に対する技術支援・普及対策、農業施設の整備、海洋環境等の変化の影響調査を行い、強い農林水産業を実現していきます。

  • 東京型スマート農業の推進
  • 山地災害に強い森林の育成
  • 水産物供給基盤整備  など
水資源・水環境

高品質な水を安定して供給するため、厳しい渇水や原水水質の悪化等に対し、リスクを可能な限り低減します。合流式下水道の改善や高度処理施設の整備による水質改善、河川や運河における水質の維持・改善を通じて快適な水環境を創出します。また、継続的にモニタリングを実施していきます。

  • 水源林の保全管理
  • 下水の貯留施設の整備
  • 処理水質の向上  など
自然環境

気候変動の影響による生物の分布の変化など、生物多様性への影響を最小限にします。また、レジリエンスを向上させるため、自然環境が持つ機能の活用や回復に関する取組の強化を図ります。

  • 生物多様性地域戦略の改定
  • 貴重な生物多様性を守る保全地域の拡大
  • 多摩の森林再生
  • 緑の創出・保全
  • 野生生物の適正管理  など

国際的な枠組みと東京都の取組についてお伝えしてきましたが、大切なのは、私たちが日々の暮らしの中で何をするか。

次のページでは、今日からできる適応アクション(適応策)についてご紹介します。