植物と共存する微生物の生命活動により土や水の中 で放出される電子を利用して発電するbotanical light(ボタニカルライト)。開発したのは、植栽演出や季節装飾の企画、設計、施工などを通じた空間づくりを行う株式会社グリーンディスプレイ(https://www.green-display.co.jp/)です。このユニークな発電システムについて、同社の細川さんに伺いました。


―ボタニカルライトはどのような仕組みで発電するのですか。

水も普通にあげて大丈夫だそうで、植物を育てる過程と同じ状態から電気も生みだせるのです。植物にとっていい環境を作ることが、長期的に発電をさせる必須の条件です。   

植物は光合成によって成長に必要なデンプンを作りますが、不要になったものは根から排出されます。それを微生物が食べ、その際に出ている電子を吸収して電気に変えているのです。植栽の土の中には、マイナス電極となるマグネシウムとプラス電極となる備長炭が入っています。排出された電子をマグネシウムで吸い上げて備長炭に流す過程で、電気が発生する仕組みです。

―どのようなきっかけで開発することになったのですか。

私たちはよく植物に癒されると言いますが、癒しを与える以外の役割はないだろうか?また、光を使用し成長する植物から、逆に光を発することはできないのか?と弊社の開発担当者は社内でずっと考えていました。海外などでは既に植物発電はあったようで、それを海外から取り寄せ熱心に調べていた弊社の社員が、展示会で植物発電に取り組んでいる会社のシステムが海外のシステムより優れている点が多い事に気付き、共同開発がスタートしました。

―現在どのような場所で採用されているのですか。

主にはイルミネーションとしての活用です。最近では、神奈川県藤沢市の江の島シーキャンドルのライトアップイベント「湘南の宝石2022-2023」(2022年11月~2023年2月開催)で、イルミネーションの一部として取り入れていただきました。

イルミネーションを光らせる以外にエネルギーの活用ができないかと模索をし、他の動力に変換できる蓄電システムの開発を行いました。実験は本社ショールームにて行なっています。この蓄電システムを利用して、デニーズ(㈱セブン&アイ・フードシステムズ)様一部店舗で、ボタニカルライトで蓄電した電池を呼び鈴に使用しています。他にも、ホテルの部屋の中にある電気器具に使う電池を充電できないかというご相談を受けたりもしています。

最近テレビや雑誌に取り上げられたことで企業から大学まで多くの問い合わせをいただいており、同じ世田谷区の東京農業大学とは植物とボタニカルライトによる未来について話し合っています。

―他にもさまざまな企業や学校、自治体とも連携しながら普及に努めているそうですね。


東京都調布市の環境啓発イベント「ボタニカルライトキャラバン」の一環で、2022年3月26日に開催されたデニーズ調布店でのライトダウンイベント「EarthHour2022」の際にボタニカルライトを点灯しました。同市と連携協定を結んでいるユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングの方がサステナビリティの観点から興味を持って下さったのがきっかけで、キャラバン終了後は駅前の公衆トイレに設置していただいています。自治体と連携していくことで地域の事業者さんとのつながりができるという点で、非常に波及効果があると実感しています。

また、東京都世田谷区の太子堂小学校にも置かせてもらっています。ここはただ置かせてもらっただけでなく、生徒さんたちと一緒にグリーンを植えてイルミネーションを光らせる授業を行いました。植物を大切に育てることでエネルギーも得られる、今あるものを活用して新しいものを生み出せるということを伝えたいと思いやらせていただきました。教育現場との連携は、今後さらに深めていきたいですね。

――ボタニカルライトは今後、どのような用途で展開したいと考えていますか。

ボタニカルライトは電極の数を増やせば発電量を増やせますが、高い電圧を安定的に保つことが難しいため、今はまだ少量しか発電できません。現在、イルミネーションとして人目に触れやすい商業施設やオフィスの植栽などで展開していますが、将来的にはエネルギーとして使ってもらいたいと考えています。

最大の目標は、災害時の非常用電源として使えるようにすること。あるいは、暗い場所での街路灯などです。ボタニカルライトは24時間、雨でも雪でも発電できます。今はまだ微弱な発電量ですが、今後発電効率を上げるため土壌の研究や電極の改善に努めていきたいと考えています。また他の電力とのコラボレーションも考えています。太陽光発電は植物発電に比べ最大の発電量が多いですが、天候や時間で発電をできない時間があります。そんなお互いのデメリットを補い合う発電の開発についても現在取り組みを進めています。

 

■「植物が未来のエネルギー!?展」

 

3/2(木)~3/5(日)の間、下北沢BONUS-TRACKにてボタニカルライトをメインとした展示会を開催いたします。ボタニカルライトの仕組みや新たな可能性をご覧いただけるブース、開発秘話などのトークイベントやボタニカルライトの光に包まれるナイトパーティーなども開催予定です。下記より特設サイトをご覧ください。

https://www.botanicallight-exhibition.com/

●グリーンディスプレイTwitter

https://twitter.com/greendisplay_jp

●#これサー!とは

東京サーキュラーエコノミー推進センター | 「#これサー! Vol. 0  サーキュラーエコノミーに取組む企業様・団体様の取組みをインタビュー「#これサー!」を発信します!」 (tokyokankyo.jp)