Clear Sky 大気環境の改善に取り組んでいます
Interview

東京の空をもっときれいに!みんなで目指す「Clear Sky」

私たちは、毎日どこかで「今日の天気はどうかな?」と空を見上げます。東京の空は、きれいでしょうか?東京の大気環境は、ここ数十年で大幅に改善されています。しかし毎年、光化学スモッグ注意報が発令されるなど、まだまだ改善が必要です。東京都環境公社(以下、環境公社)では、都民や事業者の皆さんと共に、快適な大気環境「Clear Sky(クリアスカイ)」を目指す様々な取組を行っています。この夏に開催される「Clear Skyフォトコンテスト」などについて、環境公社技術支援部の森山さんと川上さんにお話を伺いました。


お話をしてくれた人
写真左:森山純子さん(東京都環境公社 技術支援部技術課 環境改善係)
写真右:川上里美さん(同上)


森山純子さん・川上里美さんが並んで立っている写真

きれいになった東京の空 でもPM2.5や光化学スモッグは……

―東京の空はきれいに見えますが、実際の大気環境はどうなのでしょうか?

森山さん:東京では、かつて大気汚染が深刻でした。しかし、1970年代に工場などのばい煙規制や自動車排出ガス対策、90年代にはディーゼル車規制など、様々な法律や条例によって大幅に改善されてきました。ただ、現在も、光化学スモッグ注意報が毎年発令されていますし、PM2.5(微小粒子状物質)もゼロにはなっていません。PM2.5は、環境基準を2019年以降はクリアしていますが、光化学スモッグの原因である「光化学オキシダント」についてはこれまで環境基準を達成したことはないんです(2023年度の結果はこちら)。

―光化学オキシダントは、そもそもどうして発生するのでしょう?

森山さん:光化学オキシダントは、自動車や工場などで燃料を燃やすときに排出される「NOx(窒素酸化物)」や、塗料や溶剤などに含まれる「VOC(揮発性有機化合物)」が太陽光から紫外線を受けると、化学反応を起こして発生します。気温が高くて風が吹かないと、光化学オキシダントの濃度が上がり、光化学スモッグが発生します。光化学スモッグが発生すると、目や喉の痛み、頭痛などの健康被害を及ぼすことがあります。

―気候変動の影響で気温が上昇する中、光化学スモッグが発生することは今後も増えそうですね。

森山さん:令和6年は、都内の光化学スモッグ注意報の発令日数が15日あり、過去10年間の平均日数7.3日を上回っていました。今年、令和7年は早い時期から暑くなったこともあり、注意報の発令時期が早めでした。今後の更なる状況の悪化を防ぐため、原因物質を減らしていく必要があります。

都民や事業者、東京都が一丸となって、よりきれいな空に

―原因となるNOxやVOCなどを、どうすれば減らせるでしょうか。

川上さん:NOxやVOCは、実は私たちの日常生活に深く関わっています。NOxは主に工場からですが、自動車からも排出されます。また、VOCはその2割が家庭からの排出なんです。身近なところでは、DIYで使うスプレーや塗料、接着剤、油性マジック、マニキュアなどから発生しています。

法律や条例などすでに規制が厳しく設定されている中で、さらに改善するには、都民や事業者が一丸となって取り組んでいく必要があります。そのために、東京都環境局と環境公社では「Clear Sky実現に向けた大気環境改善促進事業」を行っています。

―その事業ではどんな取組をされていますか?

森山さん:PM2.5や光化学オキシダントの低減に取り組む企業などに向けて、「Clear Skyサポーター」登録制度を設け(現在約320社が登録)、取組を表彰する「Clear Skyサポーターアワード」を開催しています。企業にとっては、自社の取組を発信できるほか、他社事例や最新情報などを知る機会になっています。また、都民向けの「Clear Sky応援個人サポーター」制度には、約440名の方が登録しています。
※2025年3月末時点

小学校での出前授業の様子の写真
小学校での出前授業の様子

川上さん:Clear Skyの普及啓発イベント出前授業も行っています。わかりやすい説明や楽しく学べる企画を心がけています。昨年は、お笑いコンビ「テツandトモ」と日本テレビお天気キャラクター「そらジロー」を迎え、身近にできる大気環境対策を学ぶイベントを開催して、子どもたちは大盛り上がりでした!また、小学校などで行う出前授業では、子どもたちが真剣に聞いてくれて、たくさんの鋭い質問が飛び出しました。2年連続で出前授業をした学校で、「去年教わったことをちゃんと実践していますよ」と先生から伺ったときは、とても嬉しかったですね。

「Clear Skyフォトコンテスト」に寄せられる、美しい空と熱いメッセージ

東京の青空と街並みの写真
第7回Clear Skyフォトコンテストの子ども部門※最優秀賞の作品(©mimimi.tea)
※第8回からは大人部門・子ども部門に分けず統合しています。

―都民の皆さんに身近に考えていただくイベントとして、毎年「東京の空」をテーマにした「Clear Skyフォトコンテスト」を開催されていますね。

森山さん:Clear Skyフォトコンテストは、今年で第8回目になります。空の写真を撮影することで、空を意識するきっかけになり、日常のアクションにつながればと思っています。応募にあたっては、公式インスタグラムをフォローしていただいた上で、写真とメッセージをハッシュタグ「#クリアスカイフォトコン2025」とともに投稿してください。事務局の審査を経て、受賞作品が決まります。

―どのような写真が投稿されていますか? 昨年度、印象に残っている写真があれば教えてください。

川上さん:昨年度は500件近い応募がありました。きれいな雲や面白い形の雲が浮かんでいる青空と、東京の街並み・風景が一緒に写った写真が多かったですね。ビルや観光名所だけでなく、緑豊かな公園や森林、島々の風景などもあり、東京の魅力を再発見できました。

フォトコンテストの審査をしている様子の写真
審査風景

森山さん:印象に残っている作品の一つに、上野公園で撮影された写真があります。写真には「上京した頃に訪れた思い出の場所です」というメッセージが添えられていました。フォトコンテストが、東京で思い入れのある場所や風景を見つめ直すきっかけにもなっていることを嬉しく思いました。

川上さん:「昔両親と食事をした場所に、子どもたちと一緒に来ました」というメッセージが添えられた写真もありましたね。時代を超えて、そこに美しい空があるということが心に響きました。「たくさんの人たちの努力が積み重なって、きれいな空になっているんだ」「ありがとう」といった感謝のコメントも寄せられ、皆できれいな空を守っていくという想いが広がっているように感じ、私たちのモチベーションにもつながっています。

森山さん:「当たり前だけど、当たり前じゃない」というコメントを下さった方もいて、とても刺さりました。主催する私たちも「もっとがんばろう」という想いになり、気づかされることが多いですね。

今年度のテーマは「東京の『空』×『乗り物』」

第8回Clear Skyフォトコンテストのテーマは「東京の『空』×『乗り物』」。東京の空の下、あなたの好きな乗り物を撮影して投稿してください!

―今年度は、何か新しい仕掛けがあるのでしょうか?

森山さん:今年度は「東京の『空』×『乗り物』」というテーマを設定しました。Clear Skyの実現に向けて都民ができるアクションの一つに、乗り物対策があります。自転車や公共交通機関を使う、エコドライブを心がけるなど、小さな行動の積み重ねがきれいな空につながることを意識するきっかけになれば嬉しいです。

川上さん:公式インスタグラムのフォロワー以外にも認知を広げるため、今年度はリール投稿やストーリーなども力を入れようと、森山さんと私で頑張っています!賞品もさらに充実させていますので、ぜひご応募お待ちしています!

さらに多くの都民や事業者の皆さんに広げたい

―Clear Skyの実現に向けて、今後お二人が力を入れたいことはありますか?

森山さん:認知をさらに広めるため、様々なイベントを行うことが欠かせませんが、その場限りの面白さで終わっていないか、課題に対する理解やアクションにきちんとつながっているかという課題感もあります。そういう意味で、イベントなどを通じて「Clear Sky応援個人サポーター」に登録してくださった方々を対象にしたプログラムを、もっと充実できたらいいなと考えています。

川上さん:Clear Skyの実現に向けて、事業者の取組もとても重要です。様々な産業でClear Skyに向けた取組のメリットや意義を感じていただけるよう、「Clear Skyサポーターアワード」のように企業の取組をPRできる機会をもっとつくっていきたいです。この事業は、都民と事業者の両方を対象にしているため、伝える内容やアプローチが異なる中で難しさもあります。でも、だからこそ意義があって、フォトコンテストやアワードなどで前向きな反応を頂くと、やりがいや楽しさを感じます。今後も、新しいことに挑戦しながら進めていきたいです。

森山さん:第8回Clear Skyフォトコンテストは、8月1日(金)~9月15日(月・祝)まで開催しています。皆様の写真を楽しみにしていますので、ぜひご応募ください!

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