東京都環境科学研究所

大気環境

大気環境研究分野では、東京都による様々な大気環境行政の展開に必要な科学的知見を提供するため、現在も大気環境基準を達成していない光化学オキシダント(Ox)や微小粒子状物質(PM2.5)の対策に向けた研究、大気環境測定の精度管理や都区市町村職員を対象とした研修等の技術支援を行っています。

主要研究課題

1.高濃度光化学オキシダントの低減対策に関する研究

 都内では、春から夏にかけて、光化学オキシダント(Ox)が高濃度になり、光化学スモッグ注意報が発令される日があります。Oxは、太陽の紫外線等により、大気中の窒素酸化物(NOx)と揮発性有機化合物(VOC)が反応して生成します。

VOCは揮発性があり、大気中で気体状となる有機化合物の総称で、単一の物質ではありません。工場や自動車のほか、ガソリンや有機溶剤系塗料、スプレー缶の噴射剤など一般家庭で使われるものや植物等からも排出されます。

本研究では、VOCの多成分観測等により、Ox生成に寄与の大きいVOC成分やOx生成プロセスの解明に取り組んでいます。

【出典】東京環境局ホームページより
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2.微小粒子状物質(PM2.5)の濃度低減等に関する研究

 PM2.5の大気環境濃度は、年平均値では減少傾向にあるものの、季節によっては高濃度日が出現するため、高濃度化現象の解明を目指した研究を進めています。

PM2.5は単一の物質ではなく、粒径が2.5μm以下の粒子であれば全て該当するため、様々な成分や発生源があります。また、発生プロセスについても、黒いススのように2.5μm以下の粒子で直接排出されるだけでなく、大気中に排出された時にはガス状であったものが化学反応を起こし、粒子に変化するものがあります。

そのため、PM2.5の大気環境濃度だけではなく、PM2.5中の成分分析や関連するガス状物質の濃度測定等を行い、発生原因や発生プロセスの解析等に取り組んでいます。

【出典】東京都環境局

技術支援

1.低沸点炭化水素類の測定

 東京都では、毎月1回、都内15地点において、大気汚染防止法に基づく有害大気汚染物質のモニタリング調査を実施しています。

これに併せて、当研究所では、東京都へVOC対策事業を進めるための基礎情報を提供するため、光化学オキシダントの生成に寄与することが懸念されるエタン等低沸点炭化水素類の環境大気濃度の測定を行っています。


2.VOC簡易測定機による測定結果のクロスチェック

 東京都では、中小企業のVOC排出量削減に向けた自主的取組を支援するため、VOC対策アドバイザーを派遣しています。

この派遣制度では、派遣の申し込みのあった事業所において、ハンディー型のVOC簡易測定機による測定を実施し、測定結果等を元に、事業所の方へ効果的な対策を助言します。

当研究所では、簡易測定実施と同時にバッグ採取した検体を大気汚染防止法に定める測定法に準拠した方法に基づき測定し、VOC簡易測定機による測定結果の精度管理を行っています。


3.光化学オキシダント自動測定の精度管理

 当研究所にはオゾン濃度計の三次標準器が設置されています。

この三次標準器の定期的な保守管理や校正を行うとともに、東京都や区市町村の四次標準器の校正に対応しています。

これより、国際的なトレーサビリティを保つため環境省が構築した精度管理体制に基づく、自治体の大気汚染常時監視測定局における光化学オキシダント自動測定の精度管理を支援しています。


4.都及び区市町村の職員への技術支援

【VOCの排出抑制に関する実務説明会】

VOC排出事業所への指導等、行政によるVOC排出抑制対策を支援するため、当研究所では、東京都や区市町村の職員を対象とした研修を行っています。

この研修では、VOCの特性に関する知識やVOCの排出抑制技術等に関する講義のほか、VOC測定実習等も行っています。

参考URL

・暮らしの中のVOC(東京都環境局HP) https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/air/air_pollution/voc/voc_life/index.html

・VOC対策アドバイザー派遣制度 (東京都環境局HP)https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/air/air_pollution/voc/adviser/index.html