東京都環境科学研究所

自主研究

 

今年度の研究テーマ

先行的研究

1 簡易な試料採取方法によるVOC大気環境調査の分析精度に関する研究 有害大気汚染物質測定マニュアルによるVOCの調査方法は、分析精度は高いが、各々の調査対象物用の捕集剤に合わせてポンプの流量設定等が必要になるなど、緊急時に誰もが試料採取を行うことは困難であります。本研究では、緊急時にサンプリング経験の無い人でも簡単に行える大気試料採取方法を対象に、測定可能なVOC成分や分析精度を調査します。
2 多摩川最上流域における外来付着珪藻の繁茂実態調査 外来の大型珪藻であるミズワタクチビルケイソウは、近年、日本の各地で生息が確認され、河川生態系への悪影響や景観の悪化などが懸念されています。多摩川上流域で繁茂している当該種の主要な発生源については以前不明のままです。本研究では、多摩川最上流域までの区間における管理釣り場の直下及び小河内ダム湖流域において当該種の繁茂状況の実態調査を行い、多摩川における発生源の有無に関しての基礎情報を得ることを目的とします。
3 感潮河川におけるマイクロプラスチックの鉛直分布と挙動に関する検討 これまでの研究により、河川において①マイクロプラスチック(MPs)は水面に偏在していること、②流通量の多いPETがほとんど採取されないこと、等が明らかになりました。本研究では、陸域から海域へのMPs輸送量推定に向けた基礎的資料を得ることを目的とし、河川の感潮域におけるMPsの鉛直分布や底泥のMPsを調査します。これにより、MPsの分布や沈降・堆積等の挙動沈降についても実態の把握を試みます。
4 実路走行時の窒素化合物の排出量計測及び排出量原単位の算出に関する研究【新規】 実路走行時のNH3、N2Oの計測に向けた測定手法の検討と、台上試験、実路走行ベースの排出量原単位の算出・比較を行います。これらの結果は、今後の排出ガス低減対策に資することが期待されます。
5 森林保全の地下水涵養に及ぼす影響に関する研究【新規】 森林の保全が水源涵養に与える影響はこれまで多く研究されてきたが、河川流量に関するものは多いものの、地下水涵養に与える影響は評価されていません。本研究では、都内の森林の保全により、地下水涵養量がどの程度増加するのかを評価するための基礎調査を行います。
6 生物多様性に着目した化学物質による生態リスク評価手法の構築【新規】 過去の研究を通じて、生活由来化学物質による水生生物への生態リスク評価を進め、抗生物質の濃度が予測無影響濃度を超過する地点が多いことを示してきました。一方で、これまでの測定対象物質は有機化学物質のみで重金属をはじめとした無機化学物質は対象外だったことに加え、手法も単物質の濃度と予測無影響濃度を比較する手法に留まっています。本研究では、無機化学物質のうち重金属について、生物利用性や毒性の高い形態に着目しながら濃度実態を調査するとともに、化学物質による生態リスクが生物多様性に与える影響を定量的に解析します。
萌芽研究

1 溶存有機物の光反応作用を活用した新たな地下水流動指標の検討 地下水の溶存有機物は、光反応が不十分な状態で地下へ保存され、地表水に比べて光反応作用が高いです。一方、区部南部には溶存有機物が高濃度に含まれる着色した地下水が存在します。この地域の地下水は地層の違いにより、北多摩層の地下水と、旧ガス田浅部の地下水に2分されます。本研究では、北多摩層と旧ガス田の2箇所の着色水の光反応作用を測定します。これにより、溶存有機物の光反応作用が地下水流動指標として有用であるかを評価します。
2 有害大気汚染物質調査で使用するろ紙に含まれる重金属類のブランク影響について 有害大気汚染物質調査にはPTFE製ろ紙の使用が望ましいと考えられますが、同素材のろ紙でもメーカー、ロット及び切断方法等による違いがある可能性も示唆されました。本研究ではこれらの点に関してさらに調査を行い、測定結果への影響についての知見を得ることで、行政が実施する委託調査の精度向上に資することを目的とします。
事業化支援研究

1 気候変動に伴う東京湾流域圏の水温変化の実態把握と水質・水塊構造に及ぼす影響解析 国内の多くの内湾や沿岸域では、長期的な水温上昇傾向が確認されています。東京湾においても水温上昇が認められるが、社会情勢の変化に伴う水温変動も想定されるため、水温変化に及ぼす気候変動の影響把握には、海域のみならず、河川等陸水域も含めたデータの収集と精緻な解析が必要となります。本研究では、その一助として河川・貯水池等の陸水域および東京湾海域の水温等の水質情報のデータベースを構築し、気候変動に伴う水圏環境の変化を把握することを目的とします。
2 都市緑地の更なる質向上に資する生態系サービス・ディスサービス評価モデルの実用化研究 SDGsや、コロナ禍からの復興を目指す東京都のサステナブル・リカバリー政策において、「みどりの質」の向上が重点課題となっています。本研究は、都内緑化樹木が持つ多様な恵み(生態系サービス: 大気改善、生物多様性保全、炭素貯留)と害(生態系ディスサービス: BVOCによるオゾン大気汚染)を定量的に評価するモデルの開発を行います。そして、生態系サービスを最大限活用し、ディスサービスを最小化する有効な緑化計画の立案に貢献するようにします。
3 都市緑地におけるみどりの多様な効果による社会的便益の研究 緑化機能評価システムi-Treeの利用及びアンケート調査により、「みどりの多様な効果による社会的便益」を評価し、定量的及び定性的観点から緑化推進の政策的根拠を提案します。また、緑化推進に関する都民理解を醸成し、緑化を進めやすい環境の創出のための普及啓発手法等について検討します。
4 災害時の化学物質漏洩等を想定した環境リスク評価・管理手法の提案 近年の自然災害の発生は、気候変動による災害外力増大との関連性が強く指摘されており、災害に伴う化学物質漏洩・放出時等の環境被害防止・軽減に向けた対策は喫緊の課題です。本研究では、化学物質漏洩・放出時の環境汚染状況の的確な把握や環境汚染の拡大防止のために、網羅的な化学物質調査手法の展開・構築や都内の化学物質排出・濃度情報等のデータベース化と災害リスクの可視化を検討します。

○先行的研究・・・将来的に重要性が高くなると思われるものの、研究受託に至っていない課題について、先行的に研究を行い、研究成果をもとに、委託研究や公募研究の獲得が期待できるもの
○萌芽研究・・・現在は重要性が顕在化していない環境テーマについて、独創的なアイデアにより知見の集積を行い、研究成果により、将来の研究に発展させる可能性を有するもの(研究期間:1年)
○事業化支援研究・・・公社事業の展開・充実に資する実践的研究を行い、公社における技術分野の人材育成も期待できるもの

過去の研究テーマ

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