東京都環境科学研究所

評価結果 H23-2-6

平成23年度第2回外部研究評価委員会 継続研究の事前評価結果

研究テーマ
土壌等におけるダイオキシン類の評価手法に関する研究
研究期間 23年度~25年度
研究目的 (1)自然環境下におけるダイオキシン類の組成変動を検証し、より精度の高い汚染原因評価手法を確立する。
(2)ダイオキシン類の水質調査における懸濁物質・河川水量等の影響を調査し、より適切な水環境汚染状況評価方法について検討を行う。
研究内容 (1) 高濃度汚染土壌等の汚染評価手法に関する研究
①室内実験による検証
 高濃度汚染土壌に対し太陽光照射や恒温槽内での加温実験を実施し、照射量や時間経過に伴う濃度・組成変動を検証する。
②実試料による検証
 東京湾底質柱状試料を約10年前に実施した調査地点と同一地点で採取・分析し、実環境下での経年的なダイオキシン類の組成変化を検証する。また、東京湾河口域から沖合までの表層底質中のダイオキシン類を調査し、河川から流入するダイオキシン類の濃度と異性体組成分布を河口域からの距離や底質粒度分布等から検証する。
 ・高濃度汚染及び一般環境試料等の分析、汚染源等に関する情報の収集
 ・より正確な汚染原因評価手法の確立に向けた検討
(2) 水域環境の汚染評価手法に関する研究
 都内河川において、通常時及び降雨後の河川水を採取して降雨前後のダイオキシン類濃度変動を調査し、懸濁物質量や河川水量等の降雨の影響を検証する。
(3) 分析法の検討及び情報の取りまとめ
事前評価 A2名、B3名
評価コメント及び対応
  • 東京都ならではのプロジェクト。是非継続して、系統的なデータの蓄積により、成果をあげていただきたい。
  • 現場に即した調査を継続していきたいと考えております。
  • ダイオキシン類の問題は、かつてほど注目を集めなくなったものの、局所的な高濃度は現在も時折観測されており、問題が消滅したわけではない。そのため、以前とは異なった観点の研究が求められるようになっている。
  • 本研究は、ダイオキシン類の局所的な高濃度汚染の原因究明を目的としたものであり、目立たない課題となってはいるが、重要性は依然として高い。
  • ダイオキシン類の組成が変化していくプロセスについては、発生源解明に与える影響が大きく、重要な要素であるので、学術的な価値、実用的な価値ともに高い。
  • 水域での分析データから統計的に起源を求める方法は、複数の方法を併用することによってより信頼性の高い結果が得られる可能性がある。
  • ダイオキシン類の調査研究は、数が減ってきているので、本研究は、組成変化など、十分な独自性があるので、早期の論文化が望ましい。
  • ダイオキシン類問題は、個々の現場では深刻な問題であると認識しております。組成変化等に関する検討を継続し学会等に発表して参ります。
  • 発生源の特定にまで至るためには避けて通れない、環境中での変質・変化に関する確実な知見の積み重ねに正面から取り組む、重要なテーマと考えられる。科学的な検証に耐えられる丁寧な設計と研究の推進を望む。
  • 大気についてはCMB法などの長い経験の蓄積を有しており、水質、底質など水域環境についてもダイオキシンに限らず汚染の発生源探索やその寄与率の推定に使える手法体系をうまく構築してほしい。
  • ダイオキシン類以外の難分解性の有害化学物質にも、それらの長期間の分解・変化を考慮した手法が発生源の推定に有用であると思われます。当面は、ダイオキシン類に対象を絞り込んで検討を進めてまいります。
  • 組成変動、底質試料の分析は、今後の研究に有用と考えられる。
  • 東京湾底質の試料は、深さ1mにつき、およそ100年分の集積物であり、ダイオキシン類のみならず、様々な有害化学物質の記録が含まれていると考えられるため、試料の一部を保管し、今後の研究に活用させて参ります。
  • 新しいダイオキシン汚染源特定のキッカケになるかもしれない、光による組成変動の有無など確実に判断のできるデータを共同研究先の統計数理研究所とタイアップして蓄積していっていただきたい。
  • ダイオキシン組成比率が異なる事例があるということだが、焼却炉(都市ゴミ、産業廃棄物)、農薬(PCP、CNP)、PCBなどそれぞれのダイオキシン類発生源特有の組成比率など判っている組成比率を組み合わせても解釈できないということか。
  • ダイオキシン類の組成変化は、その異性体数の多さなどから解析が困難と思われます。統計学的な知識を借りてまとめる必要があると思われますので、統計数理研究所との共同研究は引き続き行いますが、当面は分析データの集積に努めます。