東京都環境科学研究所

評価結果 H23-2-8

平成23年度第2回外部研究評価委員会 継続研究の事前評価結果

研究テーマ
東京都におけるヒートアイランド現象等の合理的な情報収集及び発信に関する研究
研究期間 23年度 ~24年度
研究目的  東京ではヒートアイランド現象と地球温暖化の影響によるとみられる気温上昇により、過去100年間で平均気温が約3℃上昇し、今後、ゲリラ豪雨や異常高温等さまざまな形で都民生活に影響を及ぼすことが懸念されている。こうした状況を的確に把握し、都の施策立案に反映させるため、現状及び将来の気象情報の収集及び発信に関する検討を行い、次世代の情報収集体制整備の基礎資料とする。
研究内容 (1) 既存気象観測システムの補完計画の検討
 空間・時間・項目等に関する課題(観測の空白域等)の整理による補完計画の検討。
(2) データネットワークシステムの課題検討
 既存のデータ収集・解析・配信システムのネットワークとしての課題の検討。
(3) 次世代型情報収集体制に向けた技術的課題の検討
 気象情報の効率的な情報収集配信体制整備に向けた課題の検討。
事前評価 A2名、B2名、C1名
評価コメント及び対応
  • 関係する機関、関係しない機関や事業体が、バラバラに取得している膨大なデータを合理的に収集、解析するデータベースの構築の研究を推進されると良い。膨大な情報が使われずに死んでいる。(ただし、測定方法、条件が異なる、場所の重複あり、精度がバラバラ、移動体からのデータ、など多種多様であり、大変と思われるが、大変と思えることは、逆にそこに多くの情報が埋もれていることを意味する)コーディネータ役となり、これらの関係機関との調整を図り、収集してデータベースを構築するシステムの設計と提案、それらを各機関に提供することでWin-Winの関係を構築する提案、そういうプロジェクト提案をされてはいかがか。
  • 非常に参考になる意見でありますので、十分検討し、今後の研究に反映したいと考えます。
  • 東京に限らず、大都市圏の温度上昇の主因であるヒートアイランドは、前年度にも既に多くのデータが蓄積されているが、まだ十分とは言えない。次年度にはその不足を補完することが1つの目的となっており、有効なデータが蓄積されることが期待される。
  • この種のデータは単独組織内のみに蓄積されるケースが多いのに対して、データネットワークや次世代情報収集体制という切り口で取り組もうとしていることは、高く評価できる。特に地方自治体の研究機関でこの種の課題に取り組んだ前例はほとんどなく、研究所の先進性をアピールする材料となることが期待される。
  • 情報収集体制は、他部局との調整など、難しい面を多く含んでいるが、一度に全体を構築するのではなく、協力が得られたところからシステム化していくようなアプローチのほうが、最終的にゴールに到達するのが早まると思われる。
  • 東京都全体にとって非常に重要なテーマと考えられますので、貴重なご意見を今後の研究に反映していきます。
  • 環境問題への取り組みで最初に重要となる実態把握の効率化、統合化を目指す意味では重要な課題と考えられる。
  • 類似事業との連携強化と相補性の担保に留意して、できるだけ効率的な推進をお願いしたい。大気の観測体制整備に重点が置かれている様に見えるが、水系への熱の放出、東京湾の表面水温上昇なども降雨、さらには継続課題『生物生息環境・自然浄化機能に関する調査研究』などに影響をもつのではないか。最後は、都民のライフスタイルなどの変化も求めていくような活動に広がっていくことを目指すのであれば、都内での熱の発生とその後の動きを全体的に捉え、ポイントをわかりやすく見せながら要所を押さえていく推進体制が重要に思われる。
  • 水系への熱の放出、東京湾の表面水温上昇などもゲリラ豪雨等の極端現象に影響を及ぼすと考えられますので、そのモニタリングも重要です。現時点では観測体制等の点で、困難な面がありますので、次の研究テーマの課題として検討していきたいと考えます。
  • 省庁間の壁により、データ共有が難しいことは従来から指摘されており、本研究によってデータ共有が進むことを期待したい。
  • 東京都のデータのみでも統合して扱うことはできないか。
  • 情報収集と発信では、従来発信は後回しになることが多かったが、現在では比較的低コストでの発信が可能であるので、発信についても具体的な提言をしてほしい。
  • 本研究の期間のみで、統合的な次世代型観測体制を作ることは難しいが、そのためのロードマップの作成が必要。
  • ご指摘の統合的な次世代型観測体制の構築は、是非、次テーマの主要課題として位置付けていきたいと思います。
  • 住民の生活に密接に関連した研究で重要であり、最終年度なので2年間の検討結果を広報などでPRする他に、まとめの過程で都市環境に関する学術誌への投稿などを通じてPRしてはいかがか。
  • ゲリラ豪雨などは、都民の協力を仰ぎ、各地域における高齢者の体験などを収集することによって洪水リスクの高い地域などを絞っていくことはできないか。(昔の地層に積もった砂の厚みから津波の高さを予測するように、高齢者の体験から洪水の起こりやすそうなところを特定する。)
  • ご指摘の貴重な意見を十分検討し、今後の研究に反映したいと考えます。