東京都環境科学研究所

評価結果 H28-1-1

平成28年度外部研究評価委員会 終了研究の事後評価結果

研究テーマ
高濃度光化学オキシダントの低減対策に関する研究
研究期間 平成25年度~平成27年度
研究目的
  • (1) VOCの移流に関する調査
  • (2) 実大気を用いたアルデヒドの生成に寄与する原因物質の調査
  • (3) 植物起源VOCに関する調査
研究内容
  • (1) 関東地方の他自治体と連携したVOC調査及びVOC濃度分布の把握を行う。
  • (2) チャンバー実験を中心に、大気中で二次生成されるアルデヒド類の原因物質を植物起源VOCも含めて調査する。
  • (3) VOC排出樹種の検索を実施し、植物起源のVOC排出量算出のために必要な基礎データを収集する。
事後評価 A5名、B1名
評価コメント及び対応
(同様の評価及び対応は、まとめて記載)
  • 光化学オキシダントの環境影響は、原因物質の排出量が多い時代には、排出地域が高濃度汚染地域と一致する傾向がある。しかし、原因物質の排出量の規制が進んで、排出量が減少すると、「排出地域=高濃度汚染地域」という構図から、排出地域からの移送によりその周辺地域か汚染地域となる傾向が強くなる。その意味で、当該プロジェクトに取り組む研究者は、横浜市と協力して、Ox、ホルムアルデヒドの移送について、考究している点が高く評価できる。
  • オキシダント生成への関与物質(芳香族、アルケン)の確認の件。今後、これらの物質の発生源の特定により、オキシダント対策が推進すると期待している。
  • 横浜と世田谷のオキシダント構成物質の比較は、前提をきちんと説明しておかないと、かなり批判が出る恐れがある。
  • オキシダント原因物質の移送の評価方法や説明内容について、さらに検討を進めていきます。
  • アルカン,芳香族,アルデヒドなどの大気中の分布(分配率)が地点別,時間別に詳細に分析されており貴重なデータが取得できている。
  • 生麦の空気塊が酸化などの化学変化を受けながら世田谷へ移流するという説明については,拡散の影響なども考慮した妥当な解釈と言えるか?無風状態では生麦と世田谷のオキシダント関連物質の比率は,南風があるときと明らかに異なるのか?
  • オキシダント原因物質の移流の評価方法について、更に検討を進めていきます。
  • 横浜市との共同調査でVOCの移流や各地点のVOC濃度の推移を比べた点は評価できる。
  • 空気塊の移動を推測する手法に若干問題があり、さらに改善を要する。
  • オキシダント原因物質の移流の評価方法について、更に検討を進めていきます。
  • 光化学オキシダントの原因となるVOCの分布、移流状況を隣接する横浜市と共同で広域的に多点計測、分析し、VOCの移動方向、速度、移動中の反応機構を推測し、定量評価され、VOC対策を検討する上で、学術的にも有用な知見を取得された点が高く評価される。また研究結果を積極的に外部発表している点も評価できる。
  • 植物起源VOCの調査に関わり、種々ある葉面積の推計方法の中で航空写真と衛星写真を利用する手法を応用することの長短所の整理と、これによる発展性が理解できる説明があると分かりやすいと思う。
  • 今後、研究発表等を行う際は、衛星画像を用いる手法の利点等を補足するなど、分りやすい説明に努めます。
  • 広域共同調査では有用で興味深いデータが得られ、狙いが概ね達成されたと言えよう。チャンバー実験と違って、日射・気温、移流拡散の中での流動的なデータである点を、関連する気象データの解析や発生源情報によって固め、意味のある解釈を加えて公表していただきたい。(もし、実験によって既に知られている概念と一致した、だけならものたりない。) 植物起源VOC調査についても、まだまとまってはいないようだが、結果を期待している。
  • VOC排出源調査のねらいの範囲や目的がよくわからなかった。モデル分野の研究者がしきりに排出インベントリーの改良・高度化を求めている。彼らのデータに不足している点を充実させるのに役立つような調査になっているのか、連携して役立つものができていく方向になっているのか、が知りたい。
  • PRTR等のVOC排出量届出情報と大気中のVOC濃度の比較等により、排出インベントリーにも役立つ研究となるよう進めていきたいと思います。