東京都環境科学研究所

評価結果 H28-1-8

平成28年度外部研究評価委員会 継続研究の中間評価結果

研究テーマ
有害化学物質の分析法・環境実態の解明に関する研究
研究期間 平成26年度~平成28年度
研究目的 都民への有害な影響を及ぼす可能性を視点に、毒性や排出量等のデータを使用しながら、調査対象として優先度の高い化学物質を明らかにする。それらの化学物質について、排出源や環境運命等を解明するとともに、都内における影響の評価手法について提言を進める。
研究内容
  • (1) 都内環境実態の継続監視
    大気、水、底質、生物の試料採取及び分析(都内定点におけるPRTR法や化審法対象物質、POPs等(ダイオキシン含む)の環境残留状況調査)
  • (2) 化審法関連物質に関する排出源の把握、環境運命の解明
    POPsやPOPsと似た性質をもつ物質(化審法監視化学物質等)のうち、POPsの排出源等を事業場排水等の分析を通じて解明するとともに、紫外線吸収剤の環境実態の把握を進める。
  • (3) 都民に対する影響の懸念がある物質の選定
    有害性や都内における排出量からリスクの高い可能性のある物質のスクリーニングを行い、環境調査の手法について検討を行う。また、学識経験者等の意見を踏まえながら、調査を進め、リスク評価を行うための重要な資料としていく。
中間評価 A4名、B2名
評価コメント及び対応
(同様の評価及び対応は、まとめて記載)
  • 汚染実態の調査 リスク評価 リスク回避対策の提言(行政施策への活用) というシナリオに基いて、推進していることは評価する。
  • 都内地下水の有害化学物質の汚染実態を把握するにあたり、限られた予算と人的資源の制約の中で、特に次の2点について、どんな選択と集中を行っているのか、その根拠は妥当か?という観点を説明願いたい。
  • 調査地域(地点)の選定(都内のどの地点を選択すべきか)?
  • いかなる化学物質を調査対象とするのか?
  • 過去の調査で、PFOS等の濃度がEPAの勧告値等に近いか、あるいは超過していた地点を優先的に抽出し、継続して調査する予定です。これまでの実験で、PFOSをはじめとする有機フッ素化合物には土壌中を比較的浸透しやすい種類もあるので、PFOSの類縁物質(骨格炭素数の異なるもの)を調査し、年毎の濃度変動を把握していきたいと考えています。
  • 継続的に分析している点をまず評価する。環境分析の最も大切な点は分析値の傾向をつかむことであるので。また、分析値をリスクという観点から評価していることも、大切なアプローチである。p.58の下のスライドも「除去率」という言葉をキチンと用いている。
  • p.59の下のスライドは、「風向き」のデータが入っていればさらに解析がしやすかったと思う。
  • POPs物質や環境ホルモンの研究記録として有用であり,データベースの構築にも寄与する環境中(現場)での有用な結果が得られている。
  • PFOS、HBCDなどの微量汚染物質に対して、排出源の特定,環境動態,環境中の寿命(環境運命?)など,今後も継続的に息の長い研究をつづけていただきたい。
  • POPs物質は長距離移動性があるので,DDTのように現在も途上国などでマラリア対策として使用されているPOSs物質の環境動態なども,比較対照としてウォッチしていっていただきたい。
  • 今後も継続していきたいと思います。
  • 異常値を検出した事業所(例えば、HBCDs濃度ではC社)や施設(例えば、下水処理場での除去性では施設⑤)に関して、その要因解明が十分なされていない。
  • C社の処理方法は、凝集沈殿等の物理化学的処理を行わずpH調整のみのため、HBCDを含んだ懸濁物が河川へ流入したと考えています。なお、HBCDは、汚泥に吸着しやすいため、施設⑤も含め全ての下水処理場で95%以上除去されています。
  • 大気媒介だけでなく、水媒介の化学物質のリスク評価を行うべく、広域的、継続的に採取した資料に対する化学物質の予測無影響濃度が分析され、ヒドラジン、ジメチルホルムアミド等影響が懸念される物質、排出工場等が解明されてきていることは、高く評価できる。
  • 今回調査された地点、工場の結果が、それ以外の地域でのリスク評価にも拡張できるような特徴、法則性が考えられれば、本研究の意義がさらに増すと思われるが、それに近づけるための考察と工夫が何かあり得ないか、検討に期待する。
  • 今回の調査に関しては、今後もデータを積み重ねつつ、シミュレーションとの整合性も確認していきます。そして、様々な規模の事業場からの排出についても拡散状況の予測、ひいてはリスクの予測につなげられるように検討していきたいと思います。
  • ①~③の観点から継続監視や新たな実態把握、リスク評価を実施されていることは心強い。調査の結果、継続的に把握すべき物質や、さらに密な調査の項目が増えていく可能性があり、手間や経費をまかなう苦労もあることと思うが、種々トライして続けていっていただきたい。