東京都環境科学研究所

東京湾の水質改善に関する総合的研究(2016-2018年度)

 

平成31年度外部研究評価委員会 終了研究の事後評価結果

研究テーマ
東京湾の水質改善に関する総合的研究
研究期間 2016年度~2018年度
研究目的 長期的・広域的な水質改善に資するため、赤潮や貧酸素水塊メカニズムの解明を進めるとともに、これまで得られた浅場・干潟の浄化機能の知見と合わせ、効果的な対策について研究する。
研究内容
  • (1)貧酸素水塊の発生メカニズムの解析と対策に関する研究
    ①高頻度・高密度の水質現場調査
    ②底層水の貧酸素化と赤潮発生との関係解析
    ③底層水の貧酸素化と底質酸素消費との関係解析
    ④貧酸素水塊発生要因の推定
  • (2)赤潮発生抑制効果を期待できる植栽樹種の研究
    ①赤潮形成プランクトンの特定
    ②各種プランクトンの増殖特性の検討
    ③各種プランクトンの増殖抑制物質の探索
2018事後評価 A 5名、C 1名
評価コメント及び対応
  • 当初研究計画に対し着実な研究が実施され、様々な有益な知見が得られていると思われる。特に、沿岸域における赤潮プランクトンの成長を抑制する植物の特定および海水中の酸素消費対策としてアンモニア削減の有効性を明らかにしたことは評価される。学会での成果発表が多く行われており、成果公表にも積極的であることがうかがえる。
 
  • 赤潮及び貧酸素水塊発生の要因として、海水中の有機物濃度だけでなく、アンモニア性窒素の寄与率が高いことを明らかにしたことは、今後の対策を考えるうえで評価できる。ただし、アンモニア性窒素は陸域からの流入だけでなく、底質からの溶出も考慮する必要があることに留意する必要があるのではないか。一方、底質からのリン溶出について、硝酸が存在すれば抑制されることは理解できるが、実現可能な硝酸供給方法があるのか、昨年も指摘したが、具体案が示されなかったことは残念である。
  • ご指摘のとおり、アンモニア態窒素は底泥からも溶出するため、底層水中のアンモニア酸化に伴う酸素消費については、その対策を別途検討していく必要があります。
    リン溶出抑制に向けた硝酸供給方法としては、底質改善剤として硝酸カルシウムのタブレット等を底泥へ直接散布する方法等がありますが、東京湾における実現可能性についてはさらなる研究が必要と考えています。
 
  • 赤潮形成プランクトンの成長阻害効果をもたらす植物のスクリーニングにおいて、常に水中に存在する可能性のある海草も対象に加えて、抑止効果を調べたことは、実現性において一定の評価ができるが、地上の植栽と異なり、藻場の創出は技術的なハードルが高いのではないか。
  • ご指摘のとおり、藻場造成は陸上の植栽に比べると技術を要する作業だと思います。しかしながら、里海創生活動などにおいて全国各地で藻場造成が盛んに行われています。東京都内湾には天然のコアマモ場もあり、その周辺水域や同様の環境の水域における藻場創出の可能性も考えられます。
 
  • 水質の鉛直特性と底質の酸素消費等が調査分析され、底質の酸化による環境改善効果、植栽による赤潮抑制効果など、有用な基盤的データが得られている。また、積極的に外部発表が行われている。
  • 非常に基礎的な部分の研究から出発しており、このような基礎データは必ず役に立つと思う。
  • 東京湾の水質改善に関して、貧酸素水塊の発生メカニズム解明と赤潮発生抑制効果の期待できる植栽樹種の探索を重点的に研究し、一定の成果が得られた点は評価できる。
  • 東京湾の水質調査は長期的に継続して実施することに意味があるので、今後も新たな研究課題を探索しつつ継続発展することを期待したい。
  • これまでの研究成果は、学会や年報での発表だけでなく、査読付きの(できれば国際学会)学術誌に投稿することが望ましい。
  • リン、窒素の挙動特性についてまとまった成果を提示し、また植生の役割とその利用について研究が進められている。