東京都環境科学研究所

食品ロスに関する研究(2018-2020年度)

 

平成31年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価

研究テーマ
食品ロスに関する研究
研究期間 2018年度~2020年度
研究目的 国連総会(2015。9)で持続可能な開発目標(SDGs)が採択され、東京都資源循環・廃棄物処理計画では、計画目標に資源ロスの削減を掲げ、食品ロス・食品廃棄物の削減を主要施策として促進している。しかし、その実態調査の方法は確立しておらす、特に事業系から排出される食品ロスについては不明点が多い。そこで、本研究では、調査方法を確立し、調査を実施することにより、発生原因解明し、全体像把握を行うこととする。この上で、東京都の行う対策や取組みの効果分析を行い、東京都の削減目標設定に寄与することを目的とする。
研究内容
  • 特に実態把握の難しい事業系からの食品ロスについて
  • ①調査手法(分類方法・作業手順など)を検討・改善しながら、ごみ組成調査を清掃工場で実施する。
  • ②ごみ組成調査結果における食品ロスが占める割合算出や発生原因推定を行い、既往調査結果との比較により食品ロスの実態を把握する。
  • ③ごみ組成調査結果及び既往調査結果より発生原単位を推計する。
  • ④東京都が別途流通事業者等に対して行う食品ロス調査の結果に対する分析や推計などを実施 する。また、施策効果を把握する。
2018中間評価 A 3名、B 3名
評価コメント及び対応
  • 一般廃棄物中の食品ロスについて、その組成割合や特徴を明らかにすることは、都のゴミ処理問題を考える上で大変重要であり、高く評価される。
  • 昨年度の発足時点の話では、廃棄物中の食品ゴミの探索作業が専らの内容のように見受けられ、いささか的外れな軌道方向ではないかと感じたが、初年度の総括として外食産業のヒアリング調査やその反映として廃棄プロセスを区分するなど、調査内容の高度化が検討され、有用な調査となりそうな手ごたえが得られた。
 
  • この調査は大変な労力が必要である。それだけにどのような成果が得られるのか慎重に研究計画を立てるべきである。
    果たして今回の調査で一般的な解が出るのか、疑問である。
  • 本組成調査を発生量推計や効果測定に活用する場合、その代表性が問題となりますので、本調査に加え、他自治体や関連団体で行っている調査結果を使いながらながら、精度向上を図っていきます。
 
  • 研究計画に基づいて着実な研究が実施されている。廃棄物中の組成調査について、どの程度のサンプリング量を対象にされたのかなどの調査概要を可能な範囲で示してほしい。
  • ごみ組成調査は環境省告示にてサンプル量の規定があり、200kg/サンプルで行っています。また、サンプル数は1工場当たり、1日2回採取を2~3日程度としています。
 
  • 施策検討のバックデータになる重要なテーマで、ごみの分類から事業者へのヒアリング、調査結果の分析まで、着実かつ積極的に研究を進められている。
 
  • 予算的に困難かもしれないが、もう少しサンプル数を増やすことが出来れば、組成調査の精度も高まると思われる。
  • サンプリングして調査できる量には限界があることから、本調査に加え、他自治体や関連団体で行っている調査結果を使いながらながら、精度向上を図っていきます。
 
  • 清掃工場に持ち込まれる事業系一般廃棄物中の食品ロス排出状況調査を実施、家庭形廃棄物の分類に用いられている方法をそのまま適用するのについては課題が多いことが明らかになった。同時に、外食産業の事業者にヒアリング調査を実施、業態別の特徴を明らかにした。都民の関心が高いと思われる食品ロス問題について、都独自のデータを収集するための基礎的な知見が得られたことは評価できる。
 
  • 調査分類は手作業のため、非常に負荷がかかる。ヒアリング情報等から全体発生量を推計するモデルを作成するなど、工夫する必要はないか。
  • ヒアリング調査などは適宜、行っていますが、排出事業者自体が測定していなかったり、データを持っていても過少バイアスがかかると考えています。このため、これらのデータと実測データを使って、全体発生量を推計する方法を考えています。
2019事前評価 A 2名、B 4名
評価コメント及び対応
  • この研究と並行して、食に関わる業者への啓もう対策を一つの柱とすべきと考える。また食べ残し対策としては消費者教育、例えば生協や学校との共同での推進が重要である。
  • 消費者や事業者への啓蒙は重要であると考えており、東京都においても様々な施策展開を実施していることから、より説得力のある施策としていくためにも、本研究における定量的分析を活用していければと思っています。
 
  • 研究目標は適切であり、研究手段・方法等も妥当であると思われる。なお、今後の課題に記載されているごみ組成調査の精度向上や発生量推計方法の構築についてより具体的な提案があれば、それらを示してほしい。
  • 精度向上や発生量推計については、定量的データの不足が課題となっています。近年、様々な自治体や関係機関が食品ロスに関する調査が行われ、蓄積されつつあることから、これらのデータを活用し、統計的分析を行うことで、より精度の高い発生量推計や発生量予測につなげていきたいと考えています。
 
  • 食品ロス発生量の推定の根拠となるデータの積み上げ、調査手法の改善が計画されており、妥当と考えられる。
 
  • 計画では2月と3月は一般廃棄物組成調査が予定されていないが、ごみは季節変動があるものなので、3年計画の中で一年を通した組成調査を行えないものかと思う。
  • 季節変動については、調査が必要であると考えていますが、清掃工場には年末や年度末などのごみが集中する時期や定期点検などがあり、安全性の面から調査ができない場合があります。他調査などの活用により補完していきたいと思います。
 
  • ゴミ搬入や焼却実績等から都内全体の食品ロス発生量の推計手法を確立することは評価できる。
 
  • 食品ロスを2030年までに半減するとしているが、具体的な方法を検討して欲しい。
  • 現在、東京都では2020年に向けて「食品ロス東京方式」の策定中であり、様々な施策を検討しています。これらの施策について定量的な部分を明らかにし、より、説得力の施策として半減目標の達成に寄与していきたいと思います。
 
  • 都内発生量の推計のための基礎データの蓄積として価値が高い。都区部に加えて多摩地域でも調査を行うことは都内全体を把握するうえで意義がある。
 
  • 分類方法については、他自治体のデータとの比較を前提とした配慮が必要と思われる(あまり独自色を強めない程度に)。
  • 大都市における食品ロスは類似する部分も多く、これらの自治体と学会などで議論しながら、お互いのデータが活用できるような配慮をしてきたいと思います。
 
  • 調査対象や方法の進化・改善が図られていることは分かったが、定量的把握における数値の高精度化を目指すことと並んで、諸事例の「ここに問題があり、例えばこのようなシステム改善が図られたらどの程度ゴミが減る」といった項目の整理や対策の実例を整理することで、食品ごみ減量の進路が見えるような工夫をお願いしたい。
    コンビニチェーンの賞味期限前廃棄のシステムの例で考えれば、廃棄時期の基準を少し変えると廃棄量がどれほど減るとか、廃棄先や処理方法をどのような工夫があり得るなど、都民にもわかり易く、とお願いしたい。
  • ごみ組成調査のような定量調査に加え、ヒアリング調査など業界のしくみや慣習などの問題も明らかにし、どこの問題があるかを明確にしていきたいと思っています。その上で、問題部分の改善により、どれだけのロス削減が可能かを検討していく予定です。また、これらの結果を分かりやすく、広く都民へ知らせていくことで、より効果的な施策展開へつなげていきたいと思います。