東京都環境科学研究所

都市ごみ中の有害物質の処理及び管理手法に関する研究(2018-2020年度)

令和2年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価結果

研究テーマ
都市ごみ中の有害物質の処理及び管理手法に関する研究
研究期間 2018年度~2020年度
研究目的 都は、「東京都資源循環・廃棄物処理計画」における廃棄物の適正処理の中で、「水銀に関する水俣条約」への対応として、水銀含有廃棄物に対する水銀の排出抑制、施設の適正管理等に関する技術的支援を行うとしている。このような状況から、水銀測定技術や制御技術に関する調査研究について早急に整理し、さらに排ガス対策(特に乾式処理)におけるガス状水銀の挙動を明らかにすることにより、より効果的で効率的な水銀排出における抑制処理および管理を検討して、実用化に結びつけられる技術情報を発信する。
研究内容
  • ①都市ごみ排ガス中の主なガス状水銀である金属水銀及び塩化第二水銀に対する各種活性炭の基本的吸着・反応性能を把握する
  • ②ガス状水銀と反応活性の高い代表的な共存ガスである塩化水素及び二酸化硫黄との反応性に関する実験を行い、焼却排ガス全体に対する各種活性炭処理(吹き込み剤を含む)における乾式処理性能について把握する。
  • ③清掃工場の排ガス対策における乾式処理において、得られた知見を実用化する可能性について検討を行い、技術情報の発信を行う。
2019中間評価 A 5名、B 1名
評価コメント及び対応
  • ガス状水銀の活性炭処理能力について、共存ガスの作用を実験的に明らかにするとともに、粉末状のバグフィルタ吹き込み剤にも対応した実験準備をするなど、現場への応用につながる成果が得られているものと考えられる。
  • ごみ焼却施設の排ガス処理装置として広範囲で使用されているバグフィルターを想定して実験装置を改良、代表的な共存ガスの存在下での粉末活性炭による水銀除去特性を調べた。HClの共存により金属水銀、塩化第二水銀ともに除去率が大幅に向上したことは、実施設において大規模な改造を行わずに水銀除去率を向上させる可能性が示されたデータとして評価できる。
  • 水銀の放出削減に向けて重要な研究をされていると思う。
  • 水銀含有廃棄物処理時におけるガス状水銀の挙動を明らかにし、乾式処理により除去率100%をほぼ達成できている点は高く評価できる。竪型「吸着・反応管」を製作し、実験条件を整理したことで実状の評価が可能になり、改善点などの抽出に繋がるものと期待できる。
  • 前年度構築したガス状水銀の吸着・反応実験装置を用い、金属水素および塩化第2水銀共に塩化水素ガスの共存下で粒状活性炭での水銀除去率がほぼ100%となる条件を見い出したことは高く評価できる。また、塩化水素だけでなく、二酸化硫黄や水による水銀除去率への影響も単独あるいは混合ガスにおいて評価しており、排ガスからの水銀除去法の開発に寄与するものと評価する。
  • 基礎的な実験により共存ガス中の水銀除去に関する有用な知見が得られていると思われる。学術的な機構解明にも期待する。
  • 金属水銀については、ハロゲン化合物を添着した活性炭から排ガスの熱で気化したハロゲン化合物により金属水銀が酸化され、活性炭に吸着しやすくなる、という活性炭メーカーの報告があるが、塩化第二水銀についてもHCl共存下で除去率が上がるのは興味深い。生成水銀化合物の同定及び除去メカニズムの解析を期待したい。
  • 生成水銀化合物の同定は、先行研究においても水銀化合物の推定にとどまっており、難易度が高いと思われます。しかし、除去メカニズムの解析には水銀化合物の同定は不可欠であるため、今まで以上に水銀と水銀化合物相互の基礎的な反応性等に考察を加えて検討したいと考えています。
2020事前評価 A 5名、B 1名
評価コメント及び対応
  • 今年度までの知見を活かし、かつ次年度につながる計画が立てられていると考えられる。
  • 現在稼働中の清掃工場排ガス処理に適用可能な、実用性の高いデータの蓄積が期待できる。
  • 水銀化合物の同定と定量を進めてください。
  • 実用化に向けた新たな添着材を抽出し、次年度以降の実機テストに繋げて欲しい。
  • 2019年度に構築し、実験条件を確立した竪型「吸着・反応管」を活用して、実用化に向けたより発展的な実験が計画されていると評価できる。一方で、学術的には活性炭への吸着能の高い水銀の形態が明確になることを期待している。
  • 粉末活性炭を用いた簡易モデル実験により実際の装置の処理能力検証とともに、水銀化合物の吸着機構の解明が進められることを期待する。
  • 実機は実験室とは環境が大きく異なるであろうことから、実機試験を実施するための条件確認については、今年度内にある程度の当たりをつけ、2021年度からの新たな取組の計画検討に活かせられれば、より有意義な最終年度になるのではと思われる。
  • ご指摘のように、今年度内にできる限り情報収集と測定検証を行い実機と実験室の装置との違いを充分に把握しつつ、2021年度に臨みたいと考えます。
  • 2018年度は添着炭の評価も実施したが、より効果の高い添着炭を開発するのが目的であるのか、無添着炭と添着剤を同時吹込みで除去効果向上を図る目的であるのか。
  • 現時点において、CaCl2または塩酸を添着した活性炭が非常に効果的であることを見い出しています。これらを添着炭として使用するのか、無添着炭と添着剤を同時吹込みとするのかは、実機での使用条件も考慮して検討したいと考えています。
  • この除去システムは、様々な清掃工場等の施設で展開できる仕様となっているのか?水平展開に向けた課題があれば、それも整理して欲しい。
  • 排ガス処理における水銀除去技術には、主に乾式処理(活性炭の吹込みとバグフィルタの組合せ)と湿式処理(スクラバーにおける液体キレートの添加)があります。今回検討している除去システムはより広汎に使用されている乾式処理に対応していますので、様々な清掃工場等の施設で展開可能です。水平展開に向けた課題についても整理しておきます。
  • 質量分析器等による共存ガス中の水銀化合物の特定は可能か?水銀あるいは水銀化合物の吸着メカニズム等の先行研究のレビューは実施しているか。
  • 共存ガス中の水銀化合物の特定は可能かもしれません。ただ、活性炭上で生成したと考えられる水銀化合物の特定もできるかどうかが課題です。先行研究のレビューは実施しています。国内で吸着メカニズム等の仮説提案に至っている報告は高岡研究室(京都大学)のみですが、この報告は(活性炭上に吸着された)水銀化合物の推定にとどまり、特定には至っておりません。