東京都環境科学研究所

自動車環境対策の総合的な取組に関する研究(2018-2020年度)

令和2年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価結果

研究テーマ
自動車環境対策の総合的な取組に関する研究
研究期間 2018年度~2020年度
研究目的
  • (1)自動車排出ガス規制強化の実効性評価等
  •  ・規制物質の排出低減効果の検証、排出係数算定の資料作成
  •  ・VOC、N2O等の未規制物質の排出実態の把握
  •  ・排出ガス低減技術の評価
  •  ・次期排出ガス規制と現行規制との関係性の評価
  • (2)次世代自動車等の排出ガス等の実態把握
  •  ・ハイブリッド車等、最新技術を用いた次世代自動車等の特性及び環境性能の把握
研究内容
  • (1)自動車排出ガス規制強化の実効性評価等
  • (2)次世代低公害車等の排出ガス等の実態把握
2019中間評価 A 5名、B 1名
評価コメント及び対応
  • 自動車排ガス規制検討の基盤データとして、実使用環境下での使用過程車の燃費やNOx、PM、VOC等が継続的に測定・分析され、排出傾向が明らかにされており、また研究成果が積極的に外部発表されていることも評価できる。
  • 大型車使用過程車のVOC排出は、エンジン始動直後の排出量が多いこと、また、車両停止時間が長くなるほどVOC排出量が増加するなどををデータとして明らかにしたことは意義がある。PEMSを用いた路上走行試験では春季と夏季にデータを採り、昨年度の秋季と冬季のデータと合わせ、単位走行距離当りのCO2とNOx排出量と外気温度との関係を明らかにした。
  • 小型使用過程車では、低速域においてディーゼル車だけでなくガソリン車やハイブリッド車でもPM排出量が多いケースがあること、また、ガソリン直噴車で、停止時間60分~120分にVOC排出量が多くなる車両があったはことは興味深いデータである。
  • 大型使用過程車からのNOx排出実態、小型使用過程車からのVOC排出実態を明らかにすることは今後の大気汚染対策にとって重要であり、地道なデータの蓄積が望まれる。
  • 都環研が保有する施設を有効に活用している重要な研究テーマであると評価できる。実際の路上走行試験も並行して行うことで、よりデータの信頼性向上が期待できる。
  • 大型車のPEMSを用いた路上走行試験から、距離当たりのNOx排出量は外気温度に影響され、冬季に多くなることを明らかにしたことは評価できる。また、着実に大型および小型の使用過程車のVOC等の未規制物質を含む汚染物質排出データを収集し、研究成果を学会誌及び学会発表などで公表しており、学術的及び社会的な効果が見込まれる。
  • 様々な種類の自動車についてその排出ガス特性をシャシダイナモ試験と実路走行試験により広範囲な条件で取得されたことは評価される。成果の公表も積極的に行われている。
  • 小型使用過程車で、ディーゼル車の粒子排出個数がガソリン車よりも低い傾向が得られたとあるが、ディーゼル車では排ガスの粒子対策がなされているということか。
  • ディーゼル車は黒煙(PM)除去対策でDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)が設置されています。
  • 試験できる車の数が限られているので限界はあるが、代表性をどのように担保するのかは常に問われていると思う。
  • 測定したデータは、東京都における自動車排出ガス排出係数算定に用いられることから、車両の販売台数や走行距離、排出ガス後処理装置の種類等に考慮して、出来るだけ平均的なデータ収集に努めています。
  • 路上走行試験とシャシダイナモメータ試験の相関などの関係について、何か傾向が顕れているか?
  • 外気温によってNOx排出量は影響を受けて低温期に排出増の傾向が見られましたが、CO2排出量は大きく影響を受けないなど、シャシダイナモ試験では得られなかった情報が蓄積されつつあります。
  • 大型使用過程車でのシアヌル酸の排出は、PM排出量の増加につながることから、再度メーカーへのフィードバックを行っていただきたい。
  • 再度フィードバックをします。
  • 多くのデータを網羅的に蓄積されることはそれ自体有用なことであると思われるが、これらのデータを施策にどのように活用するのか、またどのような施策立案のためにどのようなデータが必要とされるのかを明確にする必要があるように感じられる。
  • 従来からの大気汚染物質、温室効果ガスに係るデータ取得のほか、今後は脱炭素への取組であるZEV(EV,PHV,FCVの)普及に係る施策が考えられます。シャシダイナモ試験において、ZEVの環境性能の把握ために必要なデータ収集について検討していきたいと考えています。
2020事前評価 A 2名、B 4名
評価コメント及び対応
  • 自動車使用過程での排ガス特性を継続的に分析する価値は高く、PEMSによる実使用環境下での特性調査の拡充により、地道ながら着実にデータが積み上げ、拡充される内容で計画されている。
  • 同一車両について継続的にデータを蓄積することに意義がある。
  • データの蓄積は重要です。継続してデータ収集に努めて欲しい。
  • 未規制物質への対応や、新型車・HV車など比較的新しい仕様を対象としたデータを充実させることは重要であり、試験施設を有する都環研が先導すべき課題であると考える。
  • 大型車のPEMSを用いた路上走行試験において異なる走行条件で実施する排出量測定を計画しており、より実態に近い排出特性の把握のために重要であると考える。一方で、継続調査車両の触媒等劣化状況の試験は長期に渡るデータの取得に意義があり、着実に進めていただきたい。
  • これまでの研究に基づいた系統的な研究計画となっている。
  • 観測、分析結果の明示に加えて、それらに基づく使用過程車の保守点検や運転方法に関わる推奨事項が結論として多少とも言及されれば、結果の能動的活用へのきっかけにもつながりやすいのでないかと思う。
  • 測定データの解析や、結果のメーカーへのフィードバックの過程で保守点検や運転方法の改善について言及できるよう検討していきたいと考えます。
  • 今後の自動車排ガス対策や温暖化防止対策の立案に資するまとめを期待したい。
  • 自動車からのNOx、VOCの排出インベントリにどのようにつなげていくのか?
  • 測定データを元に、都内の走行台数や走行速度などの活動量を用いて東京都全体での排出量を算出しますが、当所では走行速度(平均車速)別の排出係数を用いて排出インベントリに反映させています。
  • 路上走行試験とシャシダイナモメータ試験の関係性を明らかにすることで、ダイナモ試験のみ十分な項目と路上試験が必要な項目などの整理を検討して欲しい。
  • 路上走行試験において、外気温、道路勾配などシャシダイナモメータでは得られない環境条件による影響を把握出来ました。一方、シャシダイナモ試験ではデータの再現性が良く、使用過程車の排出ガスと規制値との比較が可能などメリットもあることから、今後も様々な条件で双方のデータを蓄積し、路上走行試験が必要な項目等について整理していきたいと考えます。
  • 温暖化防止の観点から、ディーゼル車におけるN2Oの排出量評価も検討していただきたい。
  • 今回の委員会では報告しませんでしたが、N2O排出量も測定していますので次回報告します。
  • 研究内容が多岐にわたるので、ある程度の選択と集中が必要ではないかと思われる。今後WLTC規制対応の車両が出てくると思われるので、その対応を早めに準備されることを期待する。