東京都環境科学研究所

沿岸域生態系を活用した水質浄化に関する研究(2019-2021年度)

令和2年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価結果

研究テーマ
沿岸域生態系を活用した水質浄化に関する研究 
研究期間 2019年度~2021年度
研究目的 ・沿岸域の栄養塩の貯留・取込みに係る知見を得る。
・東京湾奥に適した環境修復、生息場創出に係る効果を検証し、最適な手法を見出す。
研究内容
  • (1)都内沿岸域における生物生息状況の実態調査
  • (2)藻場・干潟の再生・創出適地の探索
  • (3)底質改善技術の効果の検証
2019中間評価 A 2名、B 4名
評価コメント及び対応
  • 初年度ということで外部発表は無かったが、過去の調査結果を分析し直し、藻場・干潟の再生・創出に適した条件の探索・傾向の考察が独自の視点で試みられ、次年度への発展が期待される。
  • ヨシ植生分布や二枚貝の生息状況の調査結果を分布情報として航空写真上に表示したことは、都民にもわかりやすい情報提供手法として評価される。
  • コンクリート垂直護岸周辺についてソナーにより海底地形を測量、当該水域の海底地形を可視化した。この水域の嫌気的な底質の改善に向けた基本的なデータである。
  • 少ない予算のなか地道に調査されていると思う。
  • ヨシ植生、二枚貝の生息状況・実態を把握できたことは評価できる。敵地の探索という課題に対して、若洲以外の候補地での可能性検討も必要と考える。
  • 「都内沿岸域におけるヨシの植生分布状況と二枚貝の生息状況の可視化、及び藻場・干潟の再生・創出適地としての若洲海浜公園南西側エリアの水深調査」といった多方面からの基盤となる調査研究が進み、3年計画の初年度として着実に結果を得ていると評価する。
  • 文献調査、実地調査および地図情報を有効に利用し、ヨシと二枚貝の生息実態を詳細に分析したことは評価される。
  • 研究内容の(3)底質改善技術の効果の検証については、候補となる技術の選択を行っているのか。
  • 今回使用予定の底質改善技術は、環境技術実証事業(ETV)で実証済みの技術です。嫌気性の底質環境において改善材を用い、底質のアルカリ化により硫化水素の発生が抑制されることで底層の溶存酸素量などの改善を図る技術の使用を予定しています。
  • 若洲海浜公園西側エリアを候補地としているが、横浜港エリアと比較した適正評価を行っているのか?
  • 都内の主な海浜公園には人工干潟が造成されていますが、若洲海浜公園には人工干潟が造成されておらず、垂直コンクリート護岸である点に着目しました。
    また、比較対象地とする横浜港エリアは2013年に改善材の敷設により底質改善がみられた事例で、改善前にはヘドロ層が堆積し、生物の生息場としての機能が失われた状態である点及び船舶航行のある港湾域の底質改善という点において当該エリアとの共通点があることも室内実験のサンプリングを実施するエリアとした理由です。
  • 若洲海浜公園南西側エリアについては、水深以外に底生生物、水質および底質の調査は行われているのか。
  • 環境局により調査エリア付近で定期的に水質の調査が実施されています。底質については、一昨年度までの研究事業で底泥コアを採取し、DO減少速度等の計測を行っています。目視確認できる底生生物は皆無でしたが、今年度改めて底生生物調査を実施予定です。
2020事前評価 B 4名、C 1名
評価コメント及び対応
  • 生物生息状況のデータの拡充、再生の進む海浜の深浅測量など、研究目的の達成に向けた適切な取り組みが予定されている。
  • 生物生息状況の可視化の継続は評価できる。
  • コンクリート垂直護岸の若洲海浜公園南西エリアの底質について、環境技術実証事業(ETV)での実証済技術のうちから候補を選択し、室内実験で酸化技術の効果を検証する計画は、結果ある程度予測して実験に取り掛かることができると期待される。
  • 調査、データ収集は重要と思う。
  • 生息情報の収集や充実は重要であるが、その情報から研究テーマの目的である「栄養価の貯留・取り込みの知見を得る」までの推計方法の検討が必要と考える。
  • 当該推計に当たっては各種文献及び資料等を参考にし、方法の検討を進めていきます。
  • 生物の生息状況とともに調査エリアの環境要因を取得し、それらの関係性を把握することは、環境修復・生息地創出手法の検討をする上で重要であると考えられる。
  • 生物生息状況の実態調査、底質状況の確認などこれまでの研究に基づいた研究計画が立てられている。今後、成果の公表も検討いただきたい。
  • 研究成果の外部発表を期待する。
  • 成果の積極的な発信に努めます。
  • 環境改善による生物生息場再生が進んでいる水域として、横浜港エリアを選んでいるが、当該エリアではどのような環境改善施策がとられているのか。
  • 横浜港山下公園護岸の前面に底質改善材を敷設し、環境実験施設としてその改善効果が検証され効果をあげています。
  • 生物生息場の再生が進んでいる地域は具体的にはどこか?③底質改善技術とは何を指すのか?
  • 横浜港エリアの山下公園前エリアです。また、今回室内実験で効果の確認をする底質改善技術とは、嫌気性の底質環境で改善材を用いて、底質のアルカリ化により硫化水素の発生が抑制されることで底層の溶存酸素量などの改善を図る技術です。
  • 室内実験の条件は整理されているのか?
  • 初年度の調査結果から、①東京ゲートブリッジ北側水域の窪地、②その周辺水深6m程度の区域、③南側水域の3地点から底泥を採取し、嫌気性の底質環境となっている採泥サンプルを環境技術実証事業(ETV)で実証済み技術の改善材を用いてDO減少の抑制、底質酸化効果を検証する予定です。
  • 底質酸化効果を示す環境修復技術の検証において、あらかじめ若洲海浜公園南西側エリアの底質調査を実施して現状把握を行うことが適切な技術の選択につながるのではないだろうか。
  • 仰る通り、現状把握は重要だと考えます。底質調査については、一昨年度までの研究事業で底泥コアを採取し、DO減少速度等の計測を行っております。また、昨年度に事前調査として採泥を実施し底質の現状確認を行っております。その結果、底質は腐敗の著しい黒色のヘドロ層でした。
  • 深浅測量データの具体的な活用計画、底質酸化効果に関する室内実験についてもう少し具体的な説明をしていただくと良いかと思われる。
  • 環境改善による生物生息場再生が進んでいる横浜港エリアにおいて深浅測量を実施し、今回調査した若洲海浜公園南西エリアとの底質状況について可視化することにより比較することを考えております。また、室内実験については、初年度の調査結果から、①東京ゲートブリッジ北側水域の窪地、②その周辺水深6m程度の区域、③南側水域の3地点から底泥を採取し、嫌気性の底質環境となっている採泥サンプルを環境技術実証事業(ETV)で実証済み技術の改善材を用いた底質酸化効果の検証を考えております。