東京都環境科学研究所

都内河川における衛生指標細菌の発生源の推定に関する研究(2018-2020年度)

令和2年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価結果

研究テーマ
都内河川における衛生指標細菌の発生源の推定に関する研究 
研究期間 2018年度~2020年度
研究目的 東京都内の河川では、下水道の普及等により通常は糞便性汚染が生じる状況にないが、23区では雨天時の下水道越流水の影響等、大腸菌が増大する要因がある。また、多摩地域の中小河川では、定常的に大腸菌数が高めに検出され、下水道未接続地域の影響等が考えられる。
大腸菌が増大する複数の河川について、その発生源を推定することを目的として調査研究を行い、都の施策への活用を図る。
研究内容
  • (1)23区の河川の大腸菌の発生源の推定
  • (2)多摩地域の河川の大腸菌の発生源の推定
2019中間評価 A 5名、B 1名
評価コメント及び対応
  • 都内河川における大腸菌発生状況を精緻に調査分析し、逆流による汚染や暗渠排水による汚染、遺伝子解析による起源推定など、研究目的達成に貢献する優れた成果が得られているものと考えられる。
  • 23区の江東内部河川、石神井川については、隅田川河川水の遡上により、大腸菌数等が増大することが明らかになった。隅田川河川水の大腸菌の発生源を特定できれば低減につながるものと期待される。
  • 多摩地域の大栗川では暗渠からの流入水が大腸菌が高濃度であることがわかった。
  • 地道な調査は重要だと思う。
  • 詳細な調査で発生源や濃度上昇の要因を明らかにした点は高く評価できる。遺伝子解析の有効性を確認できたことは、今後の調査に繋がるものである。
  • 前年度の研究結果から適切に研究計画を立てて実行し、着実に成果を得ており、高く評価できる。特に、多摩地区での原因究明に関する調査では、適切に採水地点を選定し、さらに大腸菌の遺伝子解析から由来動物の推定に至っている。
  • 研究計画が着実に実施され、大腸菌数の状況が詳細に把握されていると評価される。
  • 平井川については、4月に左岸細流から高濃度の大腸菌を含む水が合流していることを確認したが、5月以降は確認されなくなったのは、排出源が面源ではなく点源であったことを示唆するものと思われるが、どうか。
  • 当初、面源からの排出を予想し調査を進めておりましたが、5月以降に高濃度の大腸菌が確認されなくなったことから、ご指摘のとおり何らかの点源があり、その後、消失したものと思われます。
  • 降雨などの気象条件による影響を評価する必要は無いか?遺伝子分析で由来不明が多いことについて、さらなる条件の追加などの必要性は?
  • 平水時・増水時に実施した予備的な調査により、いずれも同様な大腸菌増加傾向が認められたため、平水時のみの調査を行いました。今後、増水時調査についても検討します。また、大腸菌の遺伝子解析については、由来が判明した負荷源の対策を優先的に検討していきます。本業務内では遺伝子解析の更なる条件検討は予定していませんが、将来的には必要と考えています。
  • 隅田川の大腸菌汚染の原因はどのように考えており、別途対策を考えているのか。
  • 下水処理関連施設からの排出が原因と推察されます。今後の対策については環境局と協議していきます。
  • 遺伝子解析において由来不明という結果は①から④以外の起源が考えられるということか?
  • ウシ・ブタ・ニワトリ・ヒト以外の生物由来の大腸菌である可能性はもちろんありますが、今回使用したプライマー(遺伝子増幅の起点となるRNA/DNA断片)が各生物由来大腸菌の遺伝的多様性を網羅できていなかったため、遺伝子が増幅しなかったためと考えております。
2020事前評価 A 4名、B 2名
評価コメント及び対応
  • 大腸菌数の増大要因の特定に有効な追加の水質・水流調査、土地利用調査等が計画されているものと考えられる。
  • 各河川の大腸菌数を継続的に観測し、増大要因を特定することは、水質改善策の提示につながることが期待される。
  • 隅田川の大腸菌濃度分布から、排出源が特定されることを期待する。
  • 調査の継続は重要で、データの蓄積も大事だと思う。
  • 遺伝子解析や周辺環境の調査などから、発生要因・濃度上昇要因を明らかにできると対策に繋がるものと期待できる。
  • 集水域の土地利用調査を含めた追跡調査により、推定から原因究明へとつながる計画が立てられており、結果に期待している。
  • 当初の全体研究計画に基づいて適切な研究計画が設定されており、有用な知見が得られることが期待される。
  • 大腸菌の起源として由来不明の割合が大きいが、山岳-丘陵地を流下する河川の特徴であり、詳細を解明する必要はないと理解すればよいのか。
  • 大腸菌起源の由来不明の割合が大きい理由として、今回使用したプライマー(遺伝子増幅の起点となるRNA/DNA断片)が各生物由来大腸菌の遺伝的多様性を網羅できていなかった可能性が挙げられます。本研究では由来が判明した負荷源の対策を優先的に検討することとし、由来不明株の詳細については環境局と協議し対応を継続して検討していきます。
  • データをどのように活用して健全な水循環や水辺の水質改善につなげるのかが不明だった。隅田川からの遡上水の影響で大腸菌群数が変動するとして、どのような対策が考えられるのか?また人の健康に影響のあるレベルの大腸菌数はどの程度か例示してくれると、結果の理解がしやすい。
  • 隅田川の高濃度の大腸菌は下水処理関連施設からの排出が原因と推察されます。今後の水質改善策については環境局と協議していきます。また、国内では大腸菌数はまだ基準項目になっておらず、健康影響に係るは疫学的調査も実施されていませんが、EU諸国等の水浴場基準では、90%値で淡水域:900CFU/100ml、海域:500CFU/100mlとなっています(いずれも1,000 人中 85 人の疾病率)。
  • 地域性などを考慮した「調査⇒分析⇒対策検討」のフローの確立を目指して欲しい。
  • ご提案いただいた「地域性を考慮した「調査⇒分析⇒対策検討」のフロー」を最終年度に提示するよう進めていきます。
  • 学術的には学会誌での公表を積極的に進めていただきたい。また、水質改善策の提示についても関係する市と協力をして実施して欲しい。
  • 学術誌での公表については、環境局や関連自治体と協議し積極的に進めていきます。また、関連市町等と調整し、地域の特性を踏まえた適切な水質改善策を検討していきます。