東京都環境科学研究所

高濃度光化学オキシダントの低減対策に関する研究(2019-2021年度)

令和3年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価結果

研究テーマ
高濃度光化学オキシダントの低減対策に関する研究
研究期間 2019年度~2021年度
研究目的 Ox生成への影響が大きい、法・条例の報告制度で把握しきれていない等の更なる対策が必要な成分や発生源を把握する。
Ox高濃度時のBVOCの影響を評価する。また、対策可能なVOCの範囲を把握し、更なる対策の効果を評価する。
研究内容
  • (1)対策が必要なVOC発生源の把握
  • (2)BVOCの光化学オキシダント生成への影響評価
  •  ①BVOCインベントリの作成
  •  ②BVOC放出量の測定
2020中間評価 A 5名、B 1名
評価コメント及び対応
  • 夏季VOC広域調査については、2019年度実施の横浜市、千葉市に川崎市、神奈川県の各機関が加わり、連携して調査したことは高く評価できる。BVOCについては昨年度作成したBVOC排出インベントリを精緻化した。BVOC放出量インベントリデータを、大気質モデルに入力値として与え、BVOCの光化学オキシダント生成への影響を2015年の夏季(7月、8月)を対象に試算したところ、一定の影響があることが示されたことは興味深い。
  • 夏季VOC広域調査で、オゾン生成への寄与が大きく、広範囲に影響を与えていると考えられるエチレンやプロピレン等の発生源地域をある程度絞り込むことができているが、今後のオゾン生成削減に向け、発生源地域での対策については具体的な検討がなされているのか。
  • 調査で検出される成分と発生源のある地域の絞り込みから、発生源候補がいくつか考えられますが、まだ具体的な事業所や業種を特定できておりません。
    行政と連携しながら、まずは事業の活動状況等の関連を把握し、具体的な発生源や発生現象を解明した後、発生源対策につなげたいと考えています。
  • PMの環境基準達成率が上昇してきたので、今後はPM対策と共にオキシダント対策も重要である。VOCについては檜原と都市部の比較から人為起源のVOC発生量が多いように思われる。HONOについては観測がうまくいっていないので、考察は難しいのではないかと思われる。樹種別のBVOC放出データの蓄積は重要だと思います。
  • BVOCの排出の有無でOx濃度に2ppbの差しかないのは、区部のBVOCはあまりOx生成に聞いていないということか。
  • 今回は、大気中VOCが区部のBVOC放出量のみであった場合で試算したため、Ox生成への影響は軽微な結果となりました。実際には、区部以外からのBVOC放出量や人為起源VOCと共存したときの反応等も考慮して評価する必要があると考えており、今年度調査では、これらを加味した大気質シミュレーションを関東全域を対象に実施し、より詳細な検証を行っていきます。
  • 調査データから発生源の特定が進んでいる点は評価できる。
    BVOC放出原単位データの精緻化ができた点も、今後の高精度なシミュレーションに向けての意義があると考える。
  • 風向から発生源を特定しているが、具体的に発生源と推定できる要因があるのか。
    MEAGANの入力条件を見直してG93に近づけた、という理解で良いか。
  • 発生源推定については、調査で検出される成分と発生源のある地域の絞り込みから、発生源候補がいくつか考えられますが、具体的に特定できておりません。行政と連携しながら、事業者の活動状況等を把握し、具体的な発生源特定につなげたいと:考えています。BVOC放出量推計モデルについては、今回、①MEGANに与えていた単位土地面積あたりの基礎放出量と②MEGANとG93に与えていた樹木葉面積を、より実情に合わせたデータに精査することにより、MEGANとG93ともに、2019年度のG93の推計結果に近い結果が得られました。
  • 連携自治体を拡大し、新たにプロパンの発生源地域の推定に至ったことは高く評価できる。また、BVOC総放出量の推計値を精密化するためにBVOC放出量の実測データを追加しており、活用が期待される。
  • HONO測定については、適正にHONO濃度が測定できるように装置を調整することが必要である。
  • 各研究項目について計画通りに研究が実施され、貴重なデータの蓄積およびそれらを用いた詳細な解析が実施されているものと高く評価する。成果の公表にも積極的で、学術的にも有用な知見であると思われる。
  • VOC調査では、昨年以上に広域の観測調査を実施し、物質ごとに発生源の可能性の高い地域の推定を進めるとともに、BVOCの影響評価をシミュレーションで評価し、次年度につながる成果が得られているものと考えられる。
2021事前評価 A 1名、B 5名
評価コメント及び対応
  • 都内で生成されるオキシダントの律速状態がVOCとNOxのどちらの影響が強いか等の関係性を明らかにすることは意義がある。また、BVOCの光化学オキシダント生成への影響評価は継続して進めていただきたい。
  • 夏季VOC調査においてオリンピック、パラリンピック等による社会活動の変化が大気環境に与える影響評価を実施するとありますが、コロナ感染状況の中では解析が難しいのではないか。
  • コロナ感染状況以前の夏季VOC調査データもあることから、オリンピックやパラリンピックによる影響ではなく、コロナ感染症対策も含めた社会の行動変容等による影響を解析したいと考えています。
  • COVIDによる社会の行動変容が、大気質にどのような影響を及ぼしたか(及ぼさなかったか)の解析をお願いします。
    種別のBVOC放出データの蓄積は重要だと思いますので継続し、基礎データとしてまとめて公表してください。
  • 「オリンピック、パラリンピック等による社会活動の変化が大気環境に与える影響評価を行う。」とあるが、コロナ禍なので、オリパラの影響かコロナの影響か切り分けが難しいように思う。大気質に与える行動変容についての解析くらいが妥当なような気がする。
  • 着実に調査も進み、発生源の特定も進んでいるので、今後の進捗は期待できる。
    また、BVOCの光化学オキシダント生成への影響の解明にも大きな期待が持てる。
  • 当初の2020年度までに発生回数ゼロの目標が達成できておらず、新たな目標を設ける必要があるのではないか。
  • 東京都環境局では、2016年に新たに、USEPA基準と同等である「年間4番目に高い日最高8時間値の3年平均値について、2030年度までに全局で0.07ppm以下とする」ことを中間目標として設定し、目標達成状況の評価が行われています。
  • 3年目のまとめとして、具体的な研究計画が示されており、行政に活用できる情報が得られることを期待する。
  • HONO測定装置の調整を優先し、長期間におけるHONO測定を実施することで、分解と生成の解明等に進展することが望まれる。
  • これまでの研究成果を踏まえた適切な研究計画が立案されていると思われ、今後の成果が期待される。
  • 自動車環境対策や光化学オキシダントに関する別の研究プロジェクトとの関係を構築することで、より効率的な研究が実施されるのではないかと思われる。
  • VOCの広域調査、BVOCの追加観測と影響評価など、光化学オキシダントの低減に必要と思われる積極的な取り組みが計画されている。
  • 移流の大きな大気環境を都内でどのように改善しようとされているのか、出口がもう少し見える形で進めると、本研究の意義がより明確になるように思う。