東京都環境科学研究所

有害化学物質の分析法・環境実態の解明及びリスク対策に関する研究(2020-2022年度)

令和3年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価結果

研究テーマ
有害化学物質の分析法・環境実態の解明及びリスク対策に関する研究
研究期間 2020年度~2022年度
研究目的 都民や都内に生息する生物への有害な影響を及ぼす可能性を視点に、優先度の高い化学物質を明らかにして、その排出源等を調査するとともに都内におけるリスクの解明、ひいてはその削減に関する手法について提言を進める。
研究内容
  • (1)都内環境実態の継続監視(環境省受託事業の化学物質環境実態調査含む)
  • (2)都内要調査物質の環境実態解明及びリスク評価
    都内において優先的に調査対象とすべき化学物質に対して、実態調査を継続、データを解析しリスクの評価を行う。さらに排出源周辺におけるリスクの極小化のための検討を行う。
2020中間評価 A 1名、B 4名、C 1名
評価コメント及び対応
  • ヒト及び動物に対して使用されるスルホンアミド系抗生物質であるスルファメトキサゾールの予測濃度(PEC)が、荒川、隅田川で水生生物に対する予測無影響濃度(PNEC)を超過している地点があったことが明らかとなった。また、モニタリングを推進することが国から求められている酸化エチレンについて、モニタリング方法の妥当性を検証した。継続的なデータ蓄積は、化学物質に関する行政施策の基本となるものであり、意義ある成果と認められる。
  • スルファメトキサゾールについては排出源の特定及びリスクの極小化への方向性について見通しがあるのか。
  • 排出源に関しては、事業場排水の分析等を通じて明らかにしていきたいと考えています。また、本成果は行政担当者を対象に含めた研究報告会等で公表し、排出量の削減につながるよう周知をしていきたいと思っています。
  • スルファメトキサゾールの都内での実態を把握しPNEC超過地点を明らかにしたことを評価します。また酸化エチレンの濃度推定に関する観測方法を検討したことも評価します。
  • 要調査物質に関する調査で課題を抽出できた点は良い。
  • 酸化エチレンの測定においては、気象データとの関連は考えられないか。
  • 測定濃度は、風向・風速等により影響を受けるので、季節性も含めて気象データとの関連性について実態把握をしていきたいと考えています。
  • 河川水におけるサルファ剤6種を分析し、都内でのPNEC超過地点を明らかにしたこと、また、大気中の酸化エチレンのモニタリング体制を確立したことは評価できる。また、国際学会でも研究発表をしており、精力的な研究成果の発信についても評価できる。
  • 都内要調査物質の環境実態に関する計測データは貴重であると思われる。計測データには様々な要因が影響を及ぼすと思われるが、スルファメトキサゾールが特定の地点で多量に計測された要因を明らかにするにはどのような方法が考えられるかなども検討していただければと思う。
  • スルファメトキサゾールの計測方法(計測回数や時期など)、またそれらの計測結果への影響に関する説明があればと思う。
  • 河川の上流や下流域を含めて測定を行うとともに、排出源に関する知見も充実化していきます。また本物質の用途を考慮すると濃度に季節変動があると想定されるので、その把握を進めていきます。
2021事前評価 A 1名、B 4名、C 1名
評価コメント及び対応
  • 継続的なデータ蓄積は、都の環境研として意義ある業務である。事故・災害時における分析体制等の構築についてはPRTR情報や網羅分析システムの活用は評価できる。
  • 気候変動に伴う大雨や台風などによる災害、特に河川氾濫については国土交通省などが提供している氾濫シミュレーション情報とのリンクも有益と思われる。
  • スルファメトキサゾールの酸化エチレンの実態把握は大事ですので、調査を継続してください。
  • 両物質の排出源等の推定は可能でしょうか。特に医療関係についていかがでしょうか。濃度を減らすためには医療関係の排出源対策が必要と思います。
  • 排出源からの排出実態に関して、今後知見を充実させていき、そのデータを通知することで注意喚起していく方向で考えています。
  • 非常時における影響評価は重要であり、評価手法の確立を進めるべきと考える。
  • 昨年度の研究結果を基に、具体的な研究目的と計画が示されている。また、新規に事故・災害時における分析体制等の構築が計画されており、行政への活用が期待される。
  • 環境実態の継続的な監視は重要であり、着実に研究が進められることを期待する。
  • サルファ剤と酸化エチレンの調査、リスク評価が予定されているが、未達の有機フッ素化合物も含め、二物質以外の調査対象は依然として決まっていない点が憂慮される。
  • 調査結果をどのように活かしていかれるのか、計画段階からの熟慮が必要ではないかと思う。
  • 調査対象物質は、都度行政担当者と協議・情報共有したうえで優先順位をつけて決定しています。また、本成果は行政担当者を対象に含めた研究報告会等で公表し、排出量の削減につながるよう周知をしていきたいと思っています。