東京都環境科学研究所

東京における地下水の実態把握に関する研究(2019-2021年度)

令和3年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価結果

研究テーマ
東京における地下水の実態把握に関する研究
研究期間 2019年度~2021年度
研究目的 様々な地下水利用ニーズをふまえた新たな地下水管理手法の検討に資するため、地下水位や揚水量等、蓄積されたデータを活用し、揚水と地下水位等の関係性を長期的に分析する等、地下水の多様な実態を把握する。
研究内容
  • (1)揚水の影響予測
  • (2)地下水流動系の解明
2020中間評価 A 3名、B 3名
評価コメント及び対応
  • 地下水位-地盤変動予測モデルは地盤変動量の観測データの再現や地盤特性値の推定が概ねできる確認できた。地下水流動系の解明については、地下水における無機成分、安定同位体比、SF6による年代推定じなどから、東京都の地下水の涵養源には地域による違いがあることが示唆されたことは、今後の地下水の保全と適正利用に向けた施策にとって意義があるデータである。
  • 地下水位-地盤変動予測モデルと広域地下水流動モデルの連結で、特に明らかになる点はどのような項目なのか。
  • 東京都内などの広域的な地域における地下水流動を考慮しながら、特定の地域における揚水と地盤沈下の影響の有無を予測することを目指します。
  • 地下水位はなかなか推測が難しいと思いますが、地盤沈下がモデルで再現できたことを評価します。併せて地下水の流動調査も重要と思います。
  • なかなか調査が難しいことは理解できるが、近似した物性値は現実の土壌の物性値と比較してかなりばらつきが多い様に見え、十分な精度を確保できたとの判断は難しい。
  • 近似した物性値の評価において、どんな基準で良好な再現と判断したのか。
    大気中SF6濃度が季節変化をする要因としては、何が想定されているのか。
  • 解析による地盤物性値の推定値は、東京都土木技術支援・人材育成センターの年報や既存調査報告値と概ね合致していると判断しました。
    大気中SF6濃度が初冬季で高くなった要因としては、東京の大気中の揮発性物質等と同様に、大気の安定した秋に濃度が高くなったためと想定されます。
  • 東京大学及び筑波大学との共同研究により、着実に研究が進められている。地下水流動系の解明では、地下水の地域差が見いだされると共に、より正確な地下水の年代測定に使用されるSF6の都内での大気中濃度の測定データを蓄積したことは評価できる。
  • 現在は予測モデルの開発、計測データの取得に注力されている段階であると思われるが、研究計画に基づき、着実に成果が得られていると評価される。
  • 予測モデルは地下水位の変動による地盤変動を予測することが最終目標と思われるが、現時点では地盤変動の観測結果を再現するためのモデル構築という段階であると思われるので、その目標に沿ったモデル構築の方向性を明確に示していただければと思う。
  • 揚水による地盤変動を予測するシミュレーションコードの精度改善に成功するとともに、地下水年代推定のための六フッ化硫黄濃度の観測が通年を通して多数の地点で実施されており、次年度の研究につながる有用な成果が得られているものと考えられる。
2021事前評価 B 6名
評価コメント及び対応
  • 本研究は、地下水管理方策の立案に資するものである。
  • 調査を継続してください。
  • SF6による正確な値を出すことは重要だが、調査の結果地下水流動系の何が明らかになるのかがよくわからなかった。仮説をもう少し書いて欲しいと思う。
  • SF6による地下水の涵養年代が把握できると、地下水の流動性が分かります。被圧地下水では、若い地下水は涵養源が近く、古い地下水は涵養源から遠いことを示しています。本研究では、水の安定同位体比や他の溶存物質等との関係も考慮しながら、地下水流動を把握していきます。
  • 今年度の最終的な成果が少しわかりにくい。
    重要な課題であることは認識するが、かなり長期的な研究スケジュールとなっており、短期的な成果がわかりにくい感がある。
  • 長期的な研究スケジュールの中で、マイルストーン管理をできないものか。
  • 都や共同研究を行っている大学の意向も加味しながら、長期的な研究管理、将来的な施策への活用に留意して研究を進めていきます。
  • これまでの研究成果を基に、研究目的に対応した研究計画が具体的に設定されている。
  • 継続的な研究計画が策定されていると思われるが、本年が最終年度であることから本研究の最終的な目標をより具体的に提示していただければと思う。
  • 代表地点における地盤変動モデルと流動モデルとの連結解析、および地下水流の解明に資する六フッ化硫黄濃度の継続的な観測が予定されており、目標達成への妥当な計画になっているものと考えられる。
  • 地盤変動モデルと流動モデルとの連結解析の早期実現に期待する。また、一定の制限下で地下水を活用するためにどのような仕組み、活用方法が考えられるのかも併せてご検討・提言してくれると、研究成果の早期活用につながるものと思われる。