東京都環境科学研究所

グリーンインフラによる暑熱環境改善効果に関する研究(2019-2021年度)

令和3年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価結果

研究テーマ
グリーンインフラによる暑熱環境改善効果に関する研究
研究期間 2019年度~2021年度
研究目的 再開発等による都市緑地創出前後の暑熱環境改善効果を、省エネ効果等も含めて定量的に明らかにし、都市緑化等による都のヒートアイランド対策推進に資する科学的知見を得る。また、複数の地区を調査対象とすることで、緑地の量や質の違いによる暑熱改善効果を比較・検討する。さらに、ヒートアイランドや気候変動適応に関する情報収集等を行う。
研究内容
  • (1)都市緑地創出前後の暑熱環境の調査
  • (2)ヒートアイランドに関する情報収集等
  • (3)気候変動適応に関する情報収集等
2020中間評価 B 5名、C 1名
評価コメント及び対応
  • 武蔵小山駅前通り再開発地及び調布ヶ丘一丁目計画地について、IoT環境計測センサやヘリコプター搭載サーモカメラによる計測により得られたデータを解析し、緑地創出前の暑熱環境を把握することができた。また、数値モデルによる暑熱環境シミュレーションを実施し、再開発前後(緑化前後)の体感温度の変化等を解析した結果は、再開発地における暑熱環境の改善につながることが期待される。
  • 2019年7月1日~9月30日の期間についてスマートメーターによる電力消費量解析を行ったということだが、新型コロナ感染状況の影響を考慮する必要はないのか。
  • 2019年はコロナ禍以前でしたが、2020年以降のデータにつきましてはコロナ禍の影響が入ってくると思われますので、慎重に比較解析したいと思います。
  • 令和4年度の緑地創出後の比較結果に期待します。
  • ヘリによる観測と地上での気温観測は何か異なるところはありますか。
    暑熱環境シミュレーションは、温度変動要因として風速、日射、境界条件など何が一番効きますか。
  • ヘリによる観測では地表面温度(地表面から上向きに放射される赤外線エネルギー)を測定しています。地表面温度は日射により大きく変動しますが、地上の気温は空気移流の影響も受けます。暑熱環境シミュレーション結果を見ると、放射(日射量及び地表面からの赤外放射量)の変化が最も大きな体感温度変動要因になっています。
  • 計測は気温のみで十分と言えず、暑熱環境改善に目的があるのであれば、放射環境についても計測をし、シミュレーションの検証を行うべき。
  • これまでヘリにサーモカメラを搭載し地表面からの上向き赤外放射量を測定してきましたが、今後は地上においてサーモカメラを用いた建物壁面からの放射の測定や黒球温度の測定を行いたいと考えています。
  • ビルによる日陰やビル風による影響は、グリーンインフラの効果と言えるのか。
    同じ日最高気温下で電力消費量に差が生じる要因について説明が必要である。
  • グリーンインフラというワードを課題名に入れて研究を開始しましたが、研究を行っている中で、緑化よりもビルの日陰形成や風通しの向上が屋外の体感温度を大きく低減させることが見えてきました。ただ、再開発に伴う緑地創出により、多くの木陰が形成されるとともに建物密集状態が解消して風速が増加し、結果的に局所的に体感温度を低減させることも事実です。また、同じ日最高気温下での電力消費量の変化に対しては、緑化によるフィーリンググッド効果(例えばエアコンを止めて緑地からの空気を取り込もうという気にさせる効果)が寄与する可能性も考えられますので、今後検討していきたいと考えています。
  • 計画に基づいて、着実にデータの取得とシミュレーションによる効果予測が実施されており評価できる。
  • 学会等での発表だけでなく、大学や高等学校で講演を行うなど、環境教育においても貢献されており、今後も継続していただきたい。
  • 研究計画に基づき、着実に成果が得られているものと思われる。報告書の記載には制限があると思うが、例えばシミュレーションの計算条件として再開発をどのように設定したかなどを説明すると理解が進むと思われる。
  • シミュレーションの妥当性検証の一環として、WBGTの計測結果との比較などにも言及していただきたい。
  • 緑地創出前後の暑熱環境調査の方は、限られた人員の中で工夫され、次年度以降の比較分析に必要な測定データとシミュレーション解析が行われ、外部発表も積極的に行われている。
  • ヒートアイランド対策を考える上では、真昼よりも夕方から深夜にかけての緑地創出効果を明示していただく方が、意味があるのではと思う。また、計測ポイントの地理的偏りへの説明が必要ではないかと思う。
2021事前評価 A 1名、B 5名
評価コメント及び対応
  • 同じ場所(武蔵小山・調布)で緑地創出前後の暑熱環境調査結果を比較することで、都市緑化 による街なかの暑熱環境改善効果を定量的に明らかにすることは意義あることと評価される。
  • 再開発等に伴う都市緑地創出はヒートアイランド対策の1つであることは理解できますが、都全体としての寄与率は何%程度なのか。
  • 都全体の寄与率は現状ではせいぜい数%と考えられ大きなものではありませんが、シミュレーションの結果から、再開発地付近の暑熱環境改善効果は少なくないものとみられます。
  • 令和4年度の緑地創出後の比較結果に期待します。
  • 非常に限られた地区での観測結果を、シミュレーションなどで一般化すると思うが、シミュレーションの精度について感度解析などの結果もあわせて示してもらえれば理解が深まると思う。
  • 緑化による暑熱環境緩和に関しては、多くの実測・解析例があり、そのレとの比較や新規性を持たせる必要がある。
  • グリーンインフラについては、暑熱環境緩和以外の様々な効果を合わせて評価する必要があると思われる。
  • 2019年度に都市緑地創出前のデータを取得した再開発地区3か所の創出後の暑熱環境調査が計画されており、暑熱環境変化の分析及び課題抽出の成果に期待する。
  • 継続的な研究計画が策定されていると思われる。昨年度提供されなかったデータにより暑熱環境改善効果が評価されることを期待する。
  • 開示が不可となっているスマートメーター電力消費量解析結果について、生データでなく規格化(無次元化)された数値を使うなどの工夫ができないか。
  • 今後、無次元化した状態での開示の可否も含めて、データ提供元と交渉したいと思います。
  • 緑地創出前後の定量的な比較分析を行うための準備と計画が、しっかりと立てられているものと考えられる。
  • 開発地域の熱容量・消費エネルギー増に対する、緑化の夜間への効果が明確にわかるような分析を期待します。また、後れている適応策の情報収集を加速させ、どう活かしていくべきかの提言につなげていくことを期待します。