東京都環境科学研究所

グリーンインフラによる暑熱環境改善効果に関する研究(2022-2024年度)

令和4年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価

研究テーマ
グリーンインフラによる暑熱環境改善効果に関する研究 【終了】
研究期間 2019年度~2021年度
研究目的 再開発等による都市緑地創出前後の暑熱環境改善効果を、省エネ効果等も含めて定量的に明らかにし、都市緑化等による都のヒートアイランド対策推進に資する科学的知見を得る。また、複数の地区を調査対象とすることで、緑地の量や質の違いによる暑熱改善効果を比較・検討する。さらに、ヒートアイランドや気候変動適応に関する情報収集等を行う。
研究内容
  • (1)都市緑地創出前後の暑熱環境の調査
  • (2)ヒートアイランドに関する情報収集等
  • (3)気候変動適応に関する情報収集等
中間評価 B 5名
評価コメント及び対応
  • 緑地創出前後の暑熱環境調査を再開発に合わせて計画的に進められ、有意な改善効果を定量的に捉えられています。同再開発地区の暑熱環境シミュレーションで、再開発の環境改善効果を分析し、WBGTの大幅低下につながることも導出されています。また、外部発表も積極的に行われています。
  • 暑熱環境改善に再開発の内容がどの程度有効であったのか、理想的な緑地化でどの程度改善を高められるのかなど、シミュレーションをより活用し、有用な知見を出していただければ、なお有意義な研究になったのではと思われます。
  • 北青山三丁目再開発地区及び四谷駅前再開発地区とそれらの隣接市街地で暑熱環境の調査を実施、再開発事業敷地内では、風速の増大 、ビルの日陰形成と樹木の木陰形成による熱放射の減少、 樹木の蒸発散による気温低下により、 体感温度が大幅に低下した。また、再開発敷地の風下側隣接市街地でも体感温度の低下が確認されたことは興味深い。
  • 電力消費データについては、コロナの巣ごもり外出自粛の影響で住宅地における電力消費は増加したとのことですが、様々な社会環境の変化に伴う都市でのエネルギー消費の変化を推測するデータの一つとして活用可能と思われます。
  • 公開空地の緑化効果に関する研究において緑化による定量的な温度低下などの効果を解明したことを評価します。コロナで社会の状況が変わり電力消費などの影響が推計できなかったのは残念でした。
    真夏炎天下で緑化前後での温度低下を比較していますが、比較対象として何も覆うものが無い場合と緑化を比較することにあまり意味があるとは思いません。例えば人工物による日陰と植物(緑化)による日陰で比較して緑化有効という結果なら、緑化の効果といえると思います。
  • 気温,地表面温度計測と数値シミュレーションを用いて緑化により暑熱環境改善効果について検証する目的はほぼ達成されたものと思われるが、本結果が再開発および緑化に関する普遍的な知見として利用できるか若干疑問が残る。
  • 対策前後での測定データは貴重であり、有効活用が期待できる。
  • 【問】ヒートアイランド緩和と適応の両面での評価に関して、ロジックを整理した上で測定・解析を行うと良いのでは。
  • 【答え】ご指摘のように「緩和」と「適応」の両面での評価は重要と考えますが、本研究では市街地再開発における局所的な暑熱軽減効果(局所的な暑熱適応)に主眼を置いた調査を行っており、都市スケールの暑熱を緩和する効果を把握してはおりません。今後、それを明確にしたうえで計測や解析を行っていきたいと思います。
研究テーマ
グリーンインフラによる暑熱環境改善効果に関する研究【新規】
研究期間 2022年~2024年
研究目的 市街地再開発に伴う都市緑地創出による暑熱環境改善効果を、省エネ効果等も含め定量的に明らかにし、都のヒートアイランド対策とグリーンインフラ(都市緑化)のさらなる推進に資する科学的知見を得る。また、複数の再開発地区を調査対象とすることで、緑の量や質の違いによる暑熱環境改善効果を比較・検討する。さらに、都市ヒートアイランド現象等に関する情報収集を行う。
研究内容
  • (1)都市緑地創出後の暑熱環境調査
  • ①計画準備:本研究に必要な機材、調査方法及び計測する再開発地区2か所について、事前調査を踏まえつつ検討を行う。
  • ②事前調査:計測する地区2か所を事前に調査・確認し、課題や現地条件を把握する。
  • ③実地計測準備:計測趣旨を事業者や住民に説明し、計測機器設置等の協力を求める。
  • ④実地計測の実施:再開発地及び近隣建物の気温・湿度等について、7月から9月までの間の1か月以上、連続計測を行うことに加え、熱画像撮影による輻射熱計測を行い、都市緑地創出後の暑熱環境データを収集する。また、同時に、電力消費量の計測を行うか、もしくは、スマートメータ等による既存の電力消費量データを収集する。
  • ⑤データ整理:収集した計測データを整理し、品質チェックを行う。
  • ⑥データ解析:整理した計測データの統計処理等を行い、体感温度や熱帯夜日数等を算出することにより、都市緑地創出後の暑熱環境の特性を把握する。
  • ⑦シミュレーションの実施:熱流体解析モデル等を用いて再開発による緑地創出後の暑熱環境の再現シミュレーション等を行う。
  • ⑧暑熱環境変化の分析:上の緑地創出後の調査結果を、令和2年度に実施した緑地創出前の調査結果と比較し、緑地創出前後の暑熱環境の変化を定量的に分析する。
  • ⑨課題抽出:上の結果から、緑地創出前後の暑熱環境変化について課題抽出等を行う。
  • (2)ヒートアイランド等に関する情報収集
事前評価 A 1名、B 4名
評価コメント及び対応
  • 緑地創出前後の定量的な調査分析を予定され、緑の量に加えて質も評価対象とされるなど、有用な知見が期待できる計画となっています。
  • データ収集のしやすさから、域内のエネルギー消費を電力需要で安易に評価しがちですが、電力に起因しない産業・民生部門の消費、運輸部門の消費もあって、電力だけではそれらの一部しか捉えられていないことに注意が必要です。
  • 公開空地の緑の価値(機能等)についての評価は期待される。
  • より規模の小さい場所で研究を継続されるようですが、規模が小さくなると緑化効果は低くなると予想されるので、何を明らかにするのかを明確にした方が良いと思います。また社会環境はコロナでかなり変わり、テレワークなども進んでいるので、コロナ前との単純な比較はできないと思います。
  • 【問】緑の価値の「質」とはどのようなものか。具体例を挙げて欲しい。
  • 【答え】緑の価値に係る「質」とは、緑陰等による局所的な暑熱軽減効果に加え、例えば、樹木が有する雨水流出抑制機能や大気汚染物質除去機能を指しています。/li>
  • 前研究とは異なる地区を対処とした研究であり、着実な成果が得られるものと評価される。様々な地区での再開発、緑化を進める上で適した計画策定に資する成果が得られることを期待する。
  • すでに実施されているのかもしれませんが、数値計算手法の妥当性と定量的評価の信頼性を評価し、種々の条件が暑熱効果に及ぼす影響に関するパラメータスタディを実施することで普遍性のある知見が得られるのではないかと思われる。
  • 緑の「質」に関する評価は興味深いが、分析の詳細・具体性が見えていない印象。
  • 暑熱環境緩和効果を評価するのであれば、WBGTなどの体感指標を計測する必要があると思われる。
    電力量についても、因果関係がわかるような計測方法・測定点を検討してほしい。
来年度へのアドバイス
  • 観測と並行して行われるシミュレーション解析のより高度な活用も期待します。