東京都環境科学研究所

都市ごみ飛灰の循環利用に関する研究(2021-2022年度)

令和5年度外部研究評価委員会 終了研究の事後評価

研究テーマ
都市ごみ飛灰の循環利用に関する研究【継続】
研究期間 2021年度~2022年度
研究目的 近年、都市ごみ焼却灰がセメント原料の代替として活用され始めているが、主に主灰であり、飛灰については大部分が埋め立て処理されている。飛灰には、セメント製造の阻害成分である塩素、鉛等が主灰より多く含まれる。このことから、飛灰の循環利用に向け、飛灰中の塩素を効果的に脱塩するとともに、金属資源を種類ごとに効率的に分離回収する調査研究を行い、実用化に向けた情報を発信する。
研究内容
  • ◯都市ごみ焼却施設(ストーカー炉を想定)から排出される飛灰の脱塩率を算出するための塩素溶出実験など
  • ◯脱塩に関する技術情報調査
事後評価 A:優れている     2
B:普通        2
C:やや劣っている   1
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • 焼却飛灰のセメント化に求められる脱塩処理の効率化に取り組み、処理設備の建設コストの粗見積もりまで行われ、一定の結果は得られている。
  • 当初の3年計画を2年で終了せざるを得なくなったのは残念です。20年前に企業がプラント試験を行った際の知見に対し、今回どのような新規の知見が得られたのか、成果の来年度以降での活用、処理コストの試算なども実施されれば、良かったのではと考えます。
  • 脱塩の手法を定量的に示されたことを評価します。
  • (質問)脱塩処理施設の費用見積もりを出しておられますが、このコスト計算の結果、費用対効果として実現可能性はどの程度あるのでしょうか。
  • (回答)東京23区清掃事務組合ではセメント工場では飛灰を処理できないため、一部を民間の灰溶融施設で徐冷スラグ化して処理している状態です。民間の灰溶融施設の能力を超えて、埋め立てをやめて飛灰処理処理を考える場合、自前で脱塩する施設を建設するならば、セメント処理の可能性はあると考えられます。
  • ストーカ炉から流動床炉へと着実に進んでいるように思います。
  • より効果的な脱塩手法についての検討を進めてもらいたいと思います。
  • 脱塩処理に関する実験は系統的に実施され、有用な知見が得られていると思われる。参考資料のCO2吸収量およびコストに関する検討は大変興味深いものである。
  • (質問)一般論としてですが、計測結果の定量的な解析を実施する場合には,結果の再現性(実験回数、平均値や分散)に関する記述を簡単にでも加えていただくと良いかと思われます。
    Caを溶出させずに他の重金属を溶出させる手法について何か解決策はあるのでしょうか。
  • (回答)実験では重金属の溶出のために硝酸を用いましたが、同時にCaが溶けるためにセメントへの利用のためには現実的ではないと考えられます。そこで硫酸を使用して酸性にした場合、硫酸カルシウム(石膏)の沈殿ができて、溶液中の重金属と分離することができます。セメントはクリンカーに石膏を混ぜて作りますので、硫酸で酸性する方法が使用できないことはないと考えられます。
  • 本研究の目的は飛灰中の塩素を効果的に脱塩するとともに、金属資源を種類ごとに効率的に分離回収する調査研究を行うこととしているが、金属類の分離回収技術に関しての研究結果が示されなかったことは残念である。
  • (質問)ストーカ炉、流動床炉ともに飛灰はセメント化が困難という結論でしょうか。
  • (回答)飛灰は脱塩によってセメント化できると考えられますが、現在ではセメント工場の脱塩のための施設は飛灰の引き取りコストより脱塩コストが大きい状況です。しかし、自治体側の埋立地利用が困難となり、飛灰の引き取りコストを引き上げられる状態になれば工場側でも脱塩施設を新たに作るか、自治体側でも自前の脱塩施設を運営することを考えると思われます。