東京都環境科学研究所

 都内河川における衛生指標細菌の発生源の推定に関する研究(2021-2023年度)

令和5年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価

研究テーマ
都内河川における衛生指標細菌の発生源の推定に関する研究 【継続】
研究期間 2021年度~2023年度
研究目的 都内の河川では下水道の普及等により水質が改善してきているが、衛生指標(大腸菌群数)は有機汚濁指標(BOD)ほど改善されていない。特に高い類型の河川を持つ区市の関心は高く、大腸菌が増大する要因を推定するための調査研究が必要となっている。
そのため、代表的な都内河川を対象とし、大腸菌数の発生源の推定に関して調査研究を行う。
研究内容
    区部及び多摩部で環境基準類型が高い河川のうち、大腸菌群数が高い河川において次の調査研究を行う。

  • (1)発生源の推定に関する調査
    河川で広域の調査を行い、大腸菌数が高くなる地点を絞り込み、大腸菌の発生源を推定する。
  • (2)増大要因の推定に関する研究
    大腸菌数が高い地点で採取された大腸菌の由来を解析し、大腸菌が増大する要因を推定する。
中間評価 A:優れている       4
B:普通          1
C:改善の余地あり
D:計画変更ないし中止
評価コメント及び対応
  • 都内4河川における大腸菌の発生状況の実地調査、とくに前年度の調査で明らかになった大腸菌増大個所のより詳細な調査が行われるとともに、大腸菌の遺伝子解析のためのマーカーの有効性の確認が追加実施され、大腸菌発生源の推定に向けた知見が積み上げられていると考えます。
  • 調査4河川のうち妙正寺川で降雨の影響が特に大きいことは昨年度の調査で明らかにされており、その結果を裏付けるような短い時間尺度での調査を行うことも必要だったのではと考えます。また、調査結果の積極的な外部発表と情報交換を引き続き期待いたします。
  • 大腸菌数の調査は重要であり、4-11月などある程度長期にわたって調査をしたことを高く評価します。またDNAマーカーによる起源推定もある程度可能となっていることを評価します。
  • (質問)大腸菌数については生残性は確認されているのでしょうか。
  • (回答)本研究においては、培地上で増殖する生きている大腸菌を対象にしています。河川中の大腸菌生残性については未確認ですが、今後検討していきたいと考えております。
  • 4つの河川を対象とした丁寧な調査により、それぞれの河川の特徴が明らかになってきた印象です。
  • 4つの河川の流域において大腸菌数の時系列計測から大腸菌数の詳細な実態が明らかにされており、また、遺伝子解析についても進展が認められる。今後、より積極的な成果公表が望まれる。
  • (質問)細かい話ですが、今回新たに開発したDNAマーカーは11から14なのでしょうか。DNAマーカーを開発する指針のようなものはあるのでしょうか。
  • (回答)起源推定には合計14DNAマーカーを使用します。2021年度に10マーカーの設計及び有効性を確認しましたが、そのうちのひとつのマーカーにPCR増幅が不安定である可能性がありました。そのため、2022年度にはPCR増幅が不安定であるマーカーと残りの4マーカーについて再設計及び有効性の確認を実施し、全14DNAマーカーを開発しました。DNAマーカーの開発は、過去文献や遺伝子解析における専門家の意見を取り入れながら進めております。
  • 比較的水質が良好な河川のうち大腸菌数の基準値超過が懸念される河川についての広域調査の結果は、基礎データとして価値が高い。新たに開発したDNAマーカーにより、これまで由来不明であった大腸菌株の起源を推定することができたことは評価できる。
事前評価 A:優れている
B:普通          5
C:改善の余地あり
D:計画変更ないし中止
評価コメント及び対応
  • 大腸菌発生源推定のための4河川の増大地点における詳細調査、増水時調査、およびDNAマーカーによる起源推定が予定され、目的に沿った妥当な計画だと考えます。
  • 単純な月単位のサンプリング調査で降雨の影響が避けられないようであれば、場所に応じてサンプリングのタイミングを調整する必要がないか、検討が必要と考えます。
  • 大腸菌数調査やDNAマーカーによる起源推定は重要なので、調査を続けてください。
  • (質問)DNAマーカーによる起源推定で得られた結果と、流域の鶏、牛、豚などの家畜からの排出実態はある程度整合性が取れているのでしょうか。(流域に鶏、牛、豚など家畜を飼育している施設があるなどの情報と整合性はあるのでしょうか?)
  • (回答)流域に畜舎等の施設が存在しており、鶏起源の割合が多いとされた地点上流に鶏舎がある等見受けられましたが、飼養している家畜と起源推定で得られた結果は必ずしも一致しておりませんでした。当該地域は農地が多いため、鶏、牛、豚糞を元にして作られた堆肥が流域内で広く利用されていると考えられます。畜舎や家畜由来の堆肥、人間活動の影響を考慮して検討していきます。
  • 新規開発した14DNAマーカーの適用性・汎用性について評価して、他の河川への展開なども検討していただきたいと期待します。
  • (質問)汚染源の推定においては、周辺の土地利用などの特性を把握されているのでしょうか。
  • (回答)はい。ヒト由来大腸菌については家庭(浄化槽)排水や下水道雨天時越流水、ブタ・トリ・ウシ由来大腸菌についてはこれらを飼養する畜舎排水に加え、これらの糞を原料とする堆肥の流出(畑地や公園緑地等の面源)を想定して、汚染源を推定しております。
  • 基本的に継続研究であり、2022年度と同様な研究事項のように見えますが、2022年度からどのように発展させるのか具体的な研究計画の記載が望まれる。
  • 大腸菌数の広域調査の継続はデータ蓄積として意義がある。発生源の特定は対策につながるものと期待される。