東京都環境科学研究所

評価結果 H30-1-4

平成30年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価結果

研究テーマ
東京湾の水質改善に関する総合的研究
研究期間 平成28年度~平成30年度
研究目的 長期的・広域的な水質改善に資するため、赤潮や貧酸素水塊メカニズムの解明を進めるとともに、これまで得られた浅場・干潟の浄化機能の知見と合わせ、効果的な対策について研究する。
研究内容 (1)貧酸素水塊の発生メカニズムの解析と対策に関する研究
①高頻度・高密度の水質現場調査
②底層水の貧酸素化と赤潮発生との関係解析
③底層水の貧酸素化と底質酸素消費との関係解析
④貧酸素水塊発生要因の推定
(2)赤潮発生抑制効果を期待できる植栽樹種の研究
①赤潮形成プランクトンの特定
②各種プランクトンの増殖特性の検討
③各種プランクトンの増殖抑制物質の探索
H29中間評価 A4名、B1名、C1名
H29評価コメント及び対応
  • 地道に基礎的なデータを取得していることが評価できる。
  • 多数回の計測により海水の酸素消費速度との相関が高いパラメータを同定するなど、当初の計画に沿った研究が実施されているものと評価される。一部の試験では計測結果が不足していると思われるものも散見されるが、次年度も継続して調査が行われる計画であり、当初の予定通りに研究を遂行することが適当であると判断される。
  • 報告書の図2から、酸素消費速度と相関が高いものは全窒素と溶解性有機体炭素であると結論づけられているが、これらの計測値の絶対量はその他の計測成分に比べて比較的大きいため、計測結果の測定誤差が相対的に小さくなり、相関が大きくなったとは考えられないか。
  • ご指摘の点を再度検証します。検証結果を踏まえ、今後の測定、分析及びデータ解析を進めていきます。
  • 貧酸素水塊に対しては、計画通りに水質の鉛直特性と底質の酸素消費等が調査分析・評価され、環境改善の考察に有用な基盤的データが得られている。また、積極的に外部発表が行われている。
  • 赤潮発生抑制に対しては、植栽によるプランクトンの生長阻害効果の定量評価の進展を期待する。
  • 東京湾の水質改善に関する研究は、これまで長期間の研究実績があり、特に赤潮や貧酸素水塊のメカニズム解明をめざす点で大いに評価できる。
  • これまで得られた研究成果について、学会発表や年報だけでなく、査読付き学会誌や国際ジャーナルなどにも積極的に情報発信されるよう助言したい。
  • 本研究の終了後に成果をまとめ、水環境学会誌等に査読付き論文として投稿する予定です。
  • 東京湾内の多地点で現場測定をしてデータを蓄積したことは評価できる。また、低酸素水塊の層は直上の層と流向・流速が異なり、水深方向の上下で海水の混合がないとみられることは興味深い。
  • 低酸素水塊に酸素(分子状酸素を含む)を供給すればリンの溶出が抑制できることは、従来の知見からも容易に推測できるが、実際にどのような方法が可能なのか、よくわからない。例えば硝酸イオンを供給する場合、窒素ガスまで還元できれば良いが、残存して上層に拡散すると赤潮発生を助長する懸念がある。
  • 東京湾では相対的に窒素が多く、りんが少ない状況であることから、残存した硝酸イオンの影響は小さいと考えられます。硝酸イオンの底層への供給方法は、将来の課題として検討します。
  • 3年計画の2年目で着実に調査実績が積み上げられていると感じられる。海域の多点および鉛直調査に加えて溶出試験やプランクトン増殖試験など、多面的な取り組みが進展していることに期待が持てる。
  • りん溶出試験の結果は納得できるが、ばらつきが何に支配されているのか解釈ができるとよい。
  • 底質からのりん溶出に影響していると考えられる複数の因子について、今後も試験、研究を継続します。
H30事前評価 A2名、B4名
H30評価コメント及び対応
  • 基礎データをさらに積み上げてほしい。
  • 研究の進展に沿った妥当な計画である。
  • これまでの研究計画に沿った研究テーマが設定されており、研究目標は適切である。従来の底質および水質調査と合わせて、底質コアサンプルを用いた室内実験を行うことで、より基礎的な検討が可能になるものと評価される。
  • これまでの研究成果の精査と活用の検討を中心に、適切な目標、研究事項が計画されている。
  • 水質と併せて底質の測定を実施することは、全体把握の点で意義あるものと評価できる。
  • 対策・対応の検討が年次計画に記載されているが、その前に最終年度でもあり、3年間で明らかになった研究成果について再度分析検討し、成果を論文にまとめて学術誌に投稿することを期待したい。
  • データの再現性について、ぜひ確認してほしい。
  • 今後の試験、研究で昨年度までのデータを再度検証し、再現性を確認します。
  • 植物プランクトン増殖抑制試験の方法が不明です。定量評価の方法について、十分な検討を期待する。
  • 「OECD における生態影響試験法」の藻類生長阻害試験を参照した方法で試験を行います。植物成分の添加方法について、抽出手順や添加量等を十分検討し、試験を行います。
  • 2018年度も、湾内の流向・流速の測定や底質および海水の酸素消費速度の測定を継続的に行うことは評価できる。外的気象条件(日射、風向・風速)による影響についても、検討すべきであろう。
  • 日射量、風向・風速等の測定を行い、水質データと合わせて解析し、気象条件が赤潮、貧酸素水塊の発生に与える影響について検討します。
  • 植栽によりプランクトン発生を抑制することについて、リーフテストとの関係が十分に理解できない。植物の葉に含まれるアレロパシー成分を利用することが想定されているものと推測するが、湾岸植栽による海中のプランクトン発生抑制について仮説や実例があるのか。
  • 海水プランクトンの成長を阻害する樹種のスクリーニングを行うため、リーフディスク法を行いました。実例については、淡水域では報告されていますが、海域での実例の報告はありません。
  • 「底質の酸化により溶出が抑制できる可能性」について、具体的な対策の検討としてはどのようなことがあるのか聞き逃がしたが、何かイメージされているのか?
    植物プランクトン増殖試験も継続されるようだが、具体的施策に活用される見通しはどの程度あり、どのような手法が考えられるか。
  • 硝酸性窒素や酸化剤による化学的な酸化とスラグ等の空隙を有する資材による物理的な酸化が具体的な対策として考えられます。植栽による赤潮抑制については、赤潮発生水域周辺(遊歩道、公園等)に植栽を行う際に、より効果の望める樹種への転換等の周知に活用されることを想定しています。