東京都環境科学研究所

評価結果 H30-1-7

平成30年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価結果

研究テーマ
微小粒子状物質の濃度低減等に関する研究
研究期間 平成29年度~平成31年度
研究目的 PM2.5の短期基準を超過する原因を明らかにするため、硝酸塩の生成条件を把握するとともに、人為起源微小粒子の評価指標であるPM1.0の環境実態を把握し、低減対策を示すことを目的とする。
また、常時監視測定結果の解析や有機成分分析の充実を図り、短期基準のみならず長期基準を達成する方策の検討に必要なデータを提供する。
ナノ粒子について、都内大気中環境濃度の実態を把握し、経年変化等について評価する。
研究内容
  • (1)PM2.5短期基準超過要因となる成分組成に関する研究
    ①硝酸塩の生成条件
    ②有機成分の発生源寄与
    ③PM1.0の実態把握
  • (2) 常時監視測定結果の解析等
    ①質量濃度、成分組成のデータ解析
    ②関東SPM合同調査における広域的検討
  • (3) 大気中ナノ粒子に関する研究
H29中間評価 A3名、B3名
評価コメント及び対応
(同様の評価及び対応は、まとめて記載)
  • 基礎データを地道に取得している点が評価できる。
  • PMの化学成分組成計測結果に基づき、硝酸塩の生成挙動および有機成分の発生源に関する調査研究は、PMの二次生成メカニズム解明に重要であると思われる。
  • PM2.5の増加原因として、硝酸塩、有機成分の変動状況が分析され、PM1.0発生の定性的な特徴も明らかにされている。また、研究成果が積極的に外部発表されている。
  • PM2.5等の微小粒子状物質の濃度に関して、短期基準超過要因の解明に向けた研究は意義があり評価できる。
  • PM2.5の前駆体である硝酸ガスやアンモニアの観測体制を整備し、連続測定したことは評価できる。また、有機指標についても季節的な濃度推移を把握した。
    PM1.0の測定装置を設置し、PM2.5と併せて評価できるようになったことにより、観測されたPM2.5が人為起源であることを示唆するもので、評価できる。
  • 無機成分では冬季の高濃度の主体である硝酸塩と有機物に的を絞り、都内における詳しい挙動の解明を着実に進めている。有機成分についても理解に役立つ情報を積み上げている。
  • 東京都におけるPM2.5の月平均濃度の推移をみると、暖候期(4月~9月)は区部の綾瀬と郊外の檜原で差がないが、寒候期(10月~3月)は綾瀬の方が高くなっている。この要因として、秋冬における気象条件(大気安定度など)や都市気候の影響が考えられるので、月平均値だけでなく日別・時刻別濃度についても解析することを助言したい。
  • 硝酸塩の生成に関する反応メカニズムは既知なのか。本研究成果はこの反応メカニズムの検証に活用することは可能か。
  • 不均一反応(気相-液相)や共存物質の影響等を含めて生成メカニズムは十分に解明されていないと考えています。本研究成果に基づいて検証していきたいと思います。
  • 取得されてきた大量のデータに対する分析が、十分には成されていない印象がある。図表の羅列ではなく、目標に向けて新規に判明した点、逆に未だ不明の点などを簡潔に明示すると、第三者がより容易に理解できるのではないかと思う。
  • 研究フロー等、成果と課題を概観できる資料を工夫して内容を理解いただけるよう努めたいと思います。
  • 季節別の発生源寄与率の推定では、春季に特に寄与率が大きい発生源に土壌や二次(硫酸塩)であったとあるが、大陸からの影響については検討されているのか。
  • これまで関東バックグラウンド調査(八丈島; 2014-2016年度)等により地域由来と越境由来のPM2.5を切り分けを試みることで越境汚染の影響を検討しました。また、関東PM会議やⅡ型共同研究等では広域的な調査を実施し、越境汚染を含む高濃度要因について検討しています。
  • 硝酸ガス、アンモニア、それらに関係する粒子の月平均の変動や日内変動が図示され、興味深い点が多々あるが、理由の追究には至っていない。排出と、気温等に支配されるガス・粒子分配率を合わせての解釈を望む。月平均でなく事例に注目していくということで期待したいが、それが、今回示された月平均の変動図の理解にも役立てばよいと思う。
  • ご指摘のように、データが蓄積された段階で事例解析を行って、ガス-粒子分配等も加味した動態解明に取り組んでいきたいと思います。
H30事前評価 A2名、B4名
H30評価コメント及び対応
  • これまでの方向で研究を継続してほしい。
  • PMの二次生成挙動を明らかにするための研究計画として適切であると評価される。PM生成に支配的な因子が特定され、PM低減対策に有用な知見が得られることが期待される。
  • PM2.5の高濃度発生プロセスを明らかにするとともに、人為起源のPM2.5の特定が目指されており、次年度のNOx対策と発生源推定に向けた適切な計画が立てられている。また、外部機関と積極的に連携が進められている。
  • PM1.0の連続測定を実施する点は評価できる。
  • 前年度の方向性でさらに検討を深めていただけばよいと思う。アンモニアの挙動に関する知見が深まることを期待。
  • 継続的に調査し、データを蓄積することは意義深く、また、関東PM合同調査により広域的な検討をすることは評価できる。
  • 人為起源粒子がPM2.5の生成にどの程度寄与するのかがある程度解明されれば、有用な知見となると思われる。
  • アンモニアガスの高濃度発生時の動態把握手段を明示してほしい。
  • PM1.0のデータが蓄積されれば、PM2.5高濃度時におけるPM1.0の挙動との関連が明らかになり、高濃度発生メカニズムの解明につながることを期待したい。
  • 大気中のナノ粒子についてはPM1.0との関連性が示唆されているが、高濃度要因をどうやって明らかにするのか、作業仮説が不明である。