東京都環境科学研究所

東京湾沿岸域における底層環境改善に関する研究(2022-2027年度)

令和4年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価

研究テーマ
沿岸域生態系を活用した水質浄化に関する研究 【終了】
研究期間 2019年度~2021年度
研究目的 ・沿岸域の栄養塩の貯留・取込みに係る知見を得る。
・東京湾奥に適した環境修復、生息場創出に係る効果を検証し、最適な手法を見出す。
研究内容
  • (1)都内沿岸域における生物生息状況の実態調査
  • (2)藻場・干潟の再生・創出適地の探索
  • (3)底質改善技術の効果の検証
中間評価 A 2名、B 3名
評価コメント及び対応
  • これまでの知見を活かしつつ、生物による栄養塩類の貯留量や環境改善による底生生物の多様性、底質改善材の効果などがすべて定量的に評価され、3年計画で研究目的に沿った成果が得られているものとみなせます。
  • 底質改善材の効果は限定的になっている要因分析を、もう少し踏み込んで行うことができていれば、次年度につながる成果になったものと考えられます。
  • 沿岸域のヨシや二枚貝による栄養塩類(りん・窒素)の貯留量を数値化したことは評価できる。
    生物生息場再生が進んでいる横浜港エリアは護護岸から沖に向かって徐々に深くなり、起伏に富んだ地形であるのに対し、若洲海浜公園南西エリアは、護岸からすぐに水深が深くなり、水深5~7mのエリアが多く広がっていることが明らかになった。
  • 【問】若洲海浜公園南西エリアは生物生息場再生が難しい場所と理解してよろしいか。
  • 【答え】若洲海浜公園南西エリアは水深が比較的深く、平坦な地形になっています。こうした地形の海域では浅場造成等が有効と考えられますが、本研究では大規模工事によらない生息場再生手法としての底質改善材散布を試行いたしました。しかしながら、効果の持続時間が比較的短いという課題があり、長期的な視点での生物生息場再生が今後の検討課題と考えております。
  • 結果は貴重な成果と思いますが、底質改善剤による改善か、動植物による水質浄化が目的か、最終的にはよくわかりませんでした。今後のこの成果がどのように活用されるのかがよくわかりませんでした。
  • 当初の研究計画は概ね予定通りに達成されたものと思われる。生物生息場再生事業の有効性が確認され、溶存酸素消費低減に関する基礎実験データが蓄積されたことは今後の研究進展に寄与するものと思われる。
  • 【問】横浜港での生物生息状況の改善はある程度長いスパンで実現されているようだが、室内実験での溶存酸素残存率は比較的短い経過時間で改善されているようだ。実際には改善剤を定期的に散布、混合する必要があるのか。
  • 【答え】ご指摘のとおり室内実験では改善材散布の効果は短い経過時間で発現しています。しかしながら、その効果の持続時間も数100時間と短く、定期的な散布・混合が必要と考えられます。
  • 藻場・干潟の再生や底質改善に関して、可能性を確認できた点は評価できる。
  • 【問】若洲については、今後も継続して展開していくのか。
  • 【答え】新たな環境基準である底層溶存酸素に係る基準点が他の地点に設定されたため、若洲エリアでの調査は継続せず、底層溶存酸素に係る環境基準点で調査を行っていきます。
研究テーマ
東京湾沿岸域における底層環境改善に関する研究【新規】
研究期間 2022年~2027年
研究目的 (1)都内沿岸域における底泥酸素消費の把握とその抑制手法に係る知見の集積
(2)底生生物の生息状況の実態把握
研究内容
  • (1)都内沿岸域における底泥酸素消費の把握とその抑制手法に係る知見の集積
    東京都内湾において水質の現地観測を行い、底層溶存酸素の現状把握を行う。また、複数地点の底泥を採取し、室内実験により底泥酸素消費速度を推定し、酸素消費に影響を及ぼす因子を検討する。
  • (2)底生生物の生息状況の実態把握
    東京都内湾の複数地点で底生生物を採取し、生物生息状況を把握する。併せて、底層溶存酸素量や酸素消費速度と生物生息状況との関係を検討する。
事前評価 A 1名、B 4名
評価コメント及び対応
  • 前年度までの研究成果のうち、底層、底泥の酸素消費に焦点を当てたデータの蓄積と分析評価が計画されており、生物多様性の保全・回復を目指す都の政策に合致する業務になっていると考えられます。
  • 酸素消費に影響を及ぼす因子の検討、酸素消費等と生物生息状況との関係検討について、もう少し具体的な目標設定を置かれれば、より実のある成果につながるのではないかと思われます。
  • 生物生息場保全を目的として水質汚濁に係る環境基準項目に底層溶存酸素量が追加されたことを受け、都内湾の底層溶存酸素の測定及び底生生物の生息状況の実態把握は基礎データの蓄積という点で意義がある。
  • 研究期間が2022年~2027年と非常に長いので、ある程度年度計画を示していただいた方が良かったと思います。
    研究期間の前半は底層溶存酸素の観測と底生生物の生息調査を行うと思いますが、中盤から後半にかけてどのように底層環境の改善を検討していくのかが不明でした。
  • 底層溶存酸素量の状況把握のための現地観測計画が適切に立案されており、また、酸素消費削減に関する基礎研究も継続的に実施されることでその成果が期待される。
  • 詳細な現地計測と酸素消費速度に関する基礎実験をうまく融合させて研究を進めていただきたい。
  • 具体的に検討する手法の詳細がわかりにくい印象。
来年度へのアドバイス
  • 横浜港エリアの環境改善効果の調査結果を活かすことも留意していただければと思います。
    底質改善材の効果は限定的であったので、今後の改善策の検討に期待いたします。