東京都環境科学研究所

都有施設のゼロエミッションビル化に向けた調査研究(2023-2025年度)

令和7年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価

研究テーマ
都有施設のゼロエミッションビル化に向けた調査研究【継続】
研究期間 令和5~7年度
研究目的 都有施設におけるエネルギー消費構造を詳細に調査した上で、消費構造に応じた対策を講じた場合に想定されるCO₂排出削減効果及び中長期的な電力消費量の変動を推計すると共に、脱炭素化の実現が困難とされる用途の特定・整理を目的とする。
研究内容
  • 本研究では、知事部局、教育庁、警視庁、東京消防庁、議会局、各行政委員会事務局及び東京都職員共済組合の所管する建築物を対象とする。研究の実施に当たり、必要に応じて主要施設等へのヒアリングを行う。
  • (1)脱炭素対策効果の推計
  • (2)中長期的な課題及び対策の整理
  • (3)既存施設のZEB化に関する調査
中間評価 A:優れている      2
B:普通         3
C:やや劣っている
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • 【質問】2000年比で2030年でのCO2排出量の70%減達成とありますが、2013年比ではどの程度削減されているのでしょうか?日本の二酸化炭素削減目標は、2030年度に2013年度比で46%削減ですが、同程度の水準なのでしょうか?
  • 【回答】東京都の公表資料によると、2013年の温室効果ガス排出量は64.8万t-CO2ですので、2013年比で69.7%削減という推計結果になります。
    ※東京都公表資料:https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/results-201325-files-2013_tokyo_ghg
  • 各事業所を対象としてCO2削減対策のアンケート結果に基づいて、カーボンハーフ実現の可能性を明らかにしたことは評価され、研究は適切に実施されているものと思われます。
  • 対策が実施未定と回答されたものについては、実施が困難な理由を明らかにしてもらうなど対策実施の実現性を向上させる方策も検討してはどうでしょうか(おそらく費用の問題だとは思いますが)。
  • 対研究計画に沿って成果が示されている点を評価しています。
  • アンケートの結果と対策実施率の関係について、もう一工夫があればと思います。具体的には、「実施未定」で本当に40%も対策に取り組むのか疑問で、実施未定の部局に対して実施を促すようにいくつかの想定を置いて計算し、各部局の取組がどのように脱炭素に貢献するのかわかるようにしてもらえるとよいと思います。また、技術的なポテンシャルだけなく費用の評価など、実施に向けて必要な情報が提供できるようにして頂けると更によいと思います。
  • 対策実施率などに、もう少し算出の根拠があれば良かったと思います。
  • 【質問】熱中症対策等により、ますます空調化が推進されていますが、将来の気温上昇に伴うエネルギー増大の影響には、こういった部分も十分に考慮できていますでしょうか?
  • 【回答】将来の気温上昇に伴う冷房エネルギーの増加は考慮していますが、冷房機器の増設等によるエネルギーの増大は考慮していません。熱中症対策としての空調増設もエネルギー消費に影響を与える重要な要素ですので、どのような影響があるのか、いくつかの前提に基づいた検討が必要だと考えています。
  • 都有施設において省エネルギーの推進と、再生可能エネルギーの大幅な利用拡大により、2030年カーボンハーフ達成の可能性を確認したことは、今後の都の施策目標策定の際の基礎データとして評価される。
  • 【質問】購入電力における再エネ比率100%達成の実現性についてはオフサイトPPAを検討とのことですが、「水素エネルギーの実装化に向けた調査研究」では「2050年頃までに カーボンニュートラル化により系統電力の排出係数ゼロを想定」とあり、それまでの経過措置と考えてよろしいでしょうか。
  • 【回答】都有施設におきましては、2030年に電力の再エネ比率100%を目標に掲げていますので、これを達成するためには、オフサイトPPA等の仕組みが必要だと考えています。一方で、2050年の日本全体の電源構成は明確には示されていませんが、オフサイトPPA等も含めた再エネ活用は引き続き必要になると考えています。
事前評価 A:優れている      3
B:普通         2
C:やや劣っている
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • 「都内全体の電力需要を、都内の再エネのみで供給することは困難であるため」とありますが、都内の再エネポテンシャル(31Twh)以下に都内の電力需要を賄う方向で省エネ等を進めるよう検討してください。国内での電気や水素等のエネルギーを融通することは合理的ではありますが、一方で周辺地域からエネルギーを調達できることを前提とする議論は電力需要の上限の制約がなくなるのであまり生産的ではないと思います。
  • 今年度の調査計画は妥当であると思われますが、例えば費用対効果の高いものから優先して対策実施計画を検討するなど、ゼロエミッションに向けた具体的な方針を提言できればより有益な研究になると思われます。
  • 上記の通りですが、再エネポテンシャルについては太陽光、風力、地熱の他に将来的な観点から燃料電池なども考慮してはいかがかと思います。
  • 電化による効果などは十分な成果が期待できる。
    電化の障壁や新燃料の技術動向に関する調査は、一般の事業者にとっても有効な情報ですので、解決策も含めて調査、分析して下さい。
  • 費用に関する情報なども、一般の事業者に有用な情報となりますので、是非、公表するようにしてください。
    計算の前提や計算方法のマニュアル化なども重要な情報ですので、きちんとフォローできるようにしてください。
  • 東京都の各部局がこの研究成果をどのように活用したのかのフォローアップもお願いします。
  • 今後の有効な対策の検討につながるよう、より詳細な内訳の分析を進めてください。
  • PPAに頼りすぎることなく、エネルギー削減の取組みを強化してほしいと期待します。
  • 都有施設について将来のZEB化に向けた基礎的な調査研究として評価できる。
  • 【質問】今年度の調査事項に「水素や合成燃料の技術動向調査」とありますが、水素については「水素エネルギーの実装化に向けた調査研究」とは別の視点で調査するのでしょうか。
  • 【回答】技術動向については、「水素エネルギーの実装化に向けた調査研究」の成果も有効に活用したいと考えています。「都有施設のゼロエミッションビル化に向けた調査研究」では、都有施設において必要となる水素や合成燃料の消費量を算出しますので、技術動向を踏まえ、どのような供給方法が可能か考察していきたいと考えています。