東京都環境科学研究所

使い捨てプラスチックの削減による環境負荷低減の検証に関する研究(2023-2025年度)

令和7年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価

研究テーマ
使い捨てプラスチックの削減による環境負荷低減の検証に関する研究【継続】
研究期間 令和5~7年度
研究目的 都が策定したプラスチック削減プログラムにおいて、廃プラスチック焼却量 40%削減が2030 年目標として掲げられている。使い捨てプラスチックの使用状況、廃棄実態の他、使用せざるをえない理由などを調査し、温室効果ガスなど環境負荷への影響を分析し、その削減効果を検証する。
研究内容
  • 容器やカトラリーなど、使い捨てプラスチックが多用されている食品産業における物質循環に着目して、次の分析・検証を行う。
  • (1)使い捨てプラの廃棄による環境負荷の推計と使用削減や資源回収による環境負荷低減効果の検証
  • (2)産業連関表などを用いた上流(製造~使用)側からの分析と廃棄物関連データを用いた下流(使用~再利用・廃棄)からの分析を統合した最適な物質循環のあり方の検証
中間評価 A:優れている      4
B:普通         1
C:やや劣っている
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • 使い捨てカトラリー等の排出原単位を定量化したこと、複層プラスチック組成を明らかにしたことを評価します。
  • カトラリーの排出原単位の推計およびラマン分光法による包装プラスチックの組成分析について有用な知見が得られており、目的に沿った研究が着実に実施されていると思われます。
  • 【質問】カトラリーの調査が2022年2月に実施されており、コロナの影響がある程度残っている時期ではないかと思われますが、ライフスタイルで原単位が影響されるということはないのでしょうか。
  • 【回答】家庭系からのごみ排出量は、比較的、安定してきている時期です。ただし、調査実感としては、マスクやPCR検査キッドなどがある程度、含まれていたので、これらが影響する可能性があります。
  • カトラリー類の排出量推計は、既存研究と比較しても整合的な結果になっていると思います。一方で後半の複層断面分析とのつながりがよくわかりませんでした(分析結果は理解できますが、2つの課題をどうつなげればよいのか、明確ではありませんでした)。
  • 【質問】研究1と研究2が具体的にどのように1つの大きな課題に結びつくのか、説明して頂けるとありがたいです。個別の課題として取り組んで頂いても良いのではないかと思いました。
  • 【回答】いずれも、食品関連プラスチックのマテリアルフロー全体を作成するため、未知となっているデータの調査研究です。研究1は、使い捨てカトラリーの廃棄に関するデータがほどんどなかったためにごみ組成調査を実施したものであり、研究2は、複層プラスチックが、どのような樹脂が、どのような構成で、どの程度含まれているかについてのデータが不足しているため調査したものです。個別の課題として取り組むとともに、マテリアルフローを作成のデータとして活用します。
  • カトラリー等の組成割合を把握、推計できるデータが少なく、データ収集の難しさが理解できました。その中でも推計を試みられている点は評価できると思いました。いずれ推計の検証ができると良いでしょう。
  • 【質問】カトラリー等のデータが少ない要因は、分類方法によるものでしょうか?
  • 【回答】組成割合が小さいためだと思われます。通常の組成調査では、歯ブラシ、くし、使い捨てライター、小型おもちゃなどと合算して集計されることが多く、使い捨てカトラリー単独でのデータは、きわめて少ない状況にあります。
  • 「製品プラ・その他プラ」中のカトラリー等の重量割合を調べ、都区部における排出原単位を推計できたことは評価される。
  • 容器包装の複雑な構造は生産者側の理論から導かれるもので、消費者(廃棄側)からのコントロールは難しいと考えられる中、カトラリー等は「製品プラ・その他プラ」に対する割合は必ずしも高くないものの、消費者個人が直接手に取り、廃棄するものなので、環境負荷を考えるきっかけとなると思われます。
事前評価 A:優れている      2
B:普通         3
C:やや劣っている
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • コンビニ弁当など家庭の外で使用されるカトラリー類は衛生的な観点からも廃棄せざるを得ないように思います。また複層プラスチックも分離回収再利用は技術面コスト面で難しいのではないかと想像します。
  • 最終的な研究目的に沿った研究計画が立案されていると思われます。プラスチック排出状況調査は不可の大きな作業とは思いますが、継続的な調査が行われることを期待いたします。
  • 焼却量削減を前提とした解析ではなく、焼却も含めた最適な資源循環システムの提言が行われることを期待いたします。
  • 1年間で取り組むには非常に多くの内容が提案されていますが、すべて取り組めるような内容なのでしょうか?(多くの課題に取り組むという意味ではAなのですが、研究内容が多すぎるのではないかと危惧しています)
  • 個々の研究内容の目的や期待される成果は、研究としてまた政策として非常に重要な内容ですが、欲張りすぎずに優先順位をつけて取り組むことも必要ではないかと思います。
    研究内容の評価とは異なりますが、こうした研究成果がどのように公表され、政策決定者との間でどのようなやり取りがなされて、研究にフィードバックされるのか、そうしたプロセスを示すことも重要ではないかと思います。
  • この課題に対するコメントではないですが、廃プラスチックの処理やリサイクル全体について、何が課題なのか大きな枠組みを説明して頂く機会を設定して頂きたいと思います。非常に詳細な分析が行われていますが、どの程度詳細にする必要があるのか、個別課題の説明を聞いていただけでは判断できませんでした。これは、廃棄物だけではないと思います。東京都独自の課題なのか、全国的な課題なのかといった点も踏まえて、個別の研究が行われることで、成果がどのように活かせるのか、現状の分析を踏まえてさらにどのような研究が必要となるのか、コメントできるようになると考えています。
  • 循環利用の可否も含めた収集・分別方法の検討を期待します。
  • 【質問】上流(材料や製造)側の問題も大きいように思いますが、上流側での対策の検討はされるのでしょうか?
  • 【回答】材料については、プラスチックではない素材(紙や木など)に代替するなどの対策が進められています。また、バイオマスプラスチックなど温室効果ガスや生態系保全を意識した製品の導入も進められています。
  • 適性な物質循環の実現に向けては、生産者側も含めた対策も検討すべきかと感じました。
  • 容器包装のように分離が難しく、複層化が進んでいるプラスチックについて、ライフサイクル全体を通じた最適な物質循環のあり方について検証することは意義がある。
  • 【質問】サーマルリサイクルについては、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルが困難な廃プラスチックの有効利用(エネルギー回収)という位置づけと考えてよろしいでしょうか。
  • 【回答】ご指摘のとおりです。