東京都環境科学研究所

東京湾沿岸域における底層環境改善に関する研究(2022-2026年度)

令和7年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価

研究テーマ
東京湾沿岸域における底層環境改善に関する研究【継続】
研究期間 令和4~8年度
研究目的 東京都環境基本計画における今後の政策の柱に掲げられた水環境の向上について、河川や海域において水質改善が進み、都民等が身近に親しみ、水生生物が多く生息する水辺環境が整備されていることを「あるべき姿」としている。また、「『未来の東京』戦略」においては、水と緑溢れる東京の実現のための方策として、干潟等沿岸域の保全が記されており、東京都生物多様性地域戦略についても、生物多様性の保全・回復が基本戦略に掲げられている。さらに、生物生息場保全を目的として水質汚濁に係る環境基準項目に底層溶存酸素量が追加され、東京湾における環境基準の達成や生物多様性保全に向けて、底質環境の現状把握と環境改善に係る知見の集積が求められている。
研究内容
  • (1)都内沿岸域における底泥酸素消費の把握とその抑制手法に係る知見の集積
  • (2)底生生物の生息状況の実態把握
中間評価 A:優れている      4
B:普通         1
C:やや劣っている
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • 東京湾内の底層DOの状況を観測から定量的に把握したことを評価します。
  • 溶存酸素量の継続的な観測結果や成層強度と底層DOの負の相関関係など有用な知見が得られており、研究が着実に実施されているものと思われます。
  • 【質問】成層強度と底層DOの負の相関関係が明確に表れる計測地点とそうでない地点があるのは移流の影響なのでしょうか。
  • 【回答】成層強度と底層DOの関係が不明瞭な原因として、河口部では流下する河川流や遡上する海水の影響によるもとの考えますが、沖合の深底部では移流の影響を強く受けているものと考えております。
  • 長期的な観測を通じて現状把握の理解が進んでいると評価しています。
  • 【質問】蓄積されてきた知見はどのように公表、公開されているのでしょうか?非常に貴重なデータが収集できていると思いますので、公開も含めた利用方法についても検討して下さい。
  • 【回答】日本水環境学会等で対外的な発表を行っております。九都県市の底質調査報告書等への掲載について環境局と協議をしております。
  • 底泥のDOが低くなる要因に関して、「一定程度の普遍性」で確認できたことは、大変意義があると評価いたします。より詳細な調査・分析から検証を進めてほしいと期待します。
  • 【質問】鉛直方向の温度変化(分布)で、変化の大きくなる層(深さ)が測定点によって異なるように見受けられますが、その要因は何が考えられるでしょうか?
  • 【回答】躍層の厚さに影響する要因として、河川由来の淡水流量、風などが挙げられます。
  • 東京都内湾部の溶存酸素の挙動、底生生物の変遷について継続的に調査し、一定程度の普遍性があることが確認されたことは評価できる。
事前評価 A:優れている      2
B:普通         3
C:やや劣っている
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • 主に夏季に底層DO濃度が非常に低く、湾内の鉛直循環混合が起こらず、易分解性の有機物が多いという状況を改善するのは非常に難しいと思います。
  • 室内実験と現地観測結果に基づき溶存酸素の挙動、底生生物の生息状況に関するデータの蓄積を得るために適切な研究計画が策定されていると思われます。
  • 様々な要因が重なった結果の現地観測結果から普遍的な知見を抽出することは困難ではありますが有用な成果であると思われますので、室内実験結果も含めた総合的な解析を期待いたします。
  • これまでの研究実績から、記載されている研究内容は、十分に対応できる内容と思います。
  • 【質問】室内実験はどの程度の規模の実験を想定されているのでしょうか?
  • 【回答】前年度までに使用していた400mL程度のガラス容器を用いた小規模な実験を行う予定です。
  • 東京湾全体について解明を進めるためには神奈川、千葉との協力が不可欠と思いますが、具体的にどのような協力関係が構築されているのでしょうか?都環研のテーマとはいえ、東京湾全体を対象とした解明を目指しているのであれば、連携した取組もあわせて示すと良いのではないかと思います。
  • 底質の環境改善に向けて、様々な対策を検討して進めてほしいと期待します。
  • 【質問】温度成層が形成されることが要因だと、改善としてどのような方法が考えられるのでしょうか?
  • 【回答】底層への酸素の供給、底質酸化による酸素消費の低減などが挙げられます。
  • 移流の影響も含めた対策の検討に期待しています。
  • 調査の継続は、行政の研究機関として基礎データの蓄積という点で意義がある。
  • 【質問】易分解有機物の分解に伴う酸素消費の検証に関し、大阪府立農林水産総合研究所との共同研究おありますが、役割分担はどのようになっているのでしょうか。
  • 【回答】当該共同研究における易分解有機物に係る検証では、東京都環境科学研究所は東京湾の底泥試料採取を担当します。