東京都環境科学研究所

都内河川における衛生指標細菌の発生源の推定に関する研究(2024-2026年度)

令和7年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価

研究テーマ
都内河川における衛生指標細菌の発生源の推定に関する研究【継続】
研究期間 令和6~8年度
研究目的 「『未来の東京』戦略」において、水と緑溢れる東京を実現する方策として、良好な水環境を更に高めていくことが提示されている(戦略13)。また、環境省は令和3年10月に生活環境の保全に関する環境基準のうち、大腸菌群数を大腸菌数へ見直すとして、環境基準の改正について告示し、令和4年4月1日に施行した。都内の河川では下水道の普及等により水質が改善してきているが、衛生指標(大腸菌群数)は有機汚濁指標(BOD)ほど改善されていない。特に高い類型の河川を持つ区市の関心は高く、大腸菌が増大する要因を推定するための調査研究が必要となっている。そのため、代表的な都内河川を対象とし、大腸菌の発生源の推定に関して調査研究を行う。
研究内容
  • 環境基準類型が高い河川(環境基準 B 類型以上(例)秋川、北秋川等)のうち、大腸菌群数及び大腸菌数が高い河川において次の調査研究を行う。
  • (1)発生源の推定に関する調査
  • (2)増大要因の推定に関する研究
中間評価 A:優れている      4
B:普通         1
C:やや劣っている
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • 遺伝子解析を使いかなり起源推定ができたことを評価します。Gomi-MethodとECC-Methodによる起源推定結果がかなり異なるようなので、起源推定の制度向上が望まれます。
  • 大腸菌発生現の推定に向けて、広域調査および遺伝子解析を実施し、さらに遺伝子解析推定の精度向上に向けた研究にも取り組んでおり、研究計画に向けて着実な成果が得られていると思われます。
  • 【質問】起源推定の精度向上にはサンプル数を増加させる以外に改良方法あるいは新手法があるのでしょうか。
  • 【回答】少数のサンプルに基づく遺伝子情報からマーカーを作成しているため、現時点ではサンプル数を増やすことで精度向上が図れることを期待しています。 
  • 大腸菌起源推定の高度化に向けて着実に成果があげられていると評価しています。
  • 研究成果から、どのような対策が必要となるかについて何らかの提案がなされることも期待しています。
    具体的に大腸菌数の推定結果からどのように発生源を特定するのか、メカニズムを明らかにしてほしいと思います。
  • 既存の遺伝子解析に加えて、新たな手法(ECC-Method)を加えることで、大腸菌の増大要因の推定が進んでいるものと評価できます。
  • 2つの方法で異なる要因となっている点について、さらに詳細に分析を進めてほしいと期待します。
  • 大腸菌数の広域調査の継続はデータ蓄積として重要である。大腸菌の単離株の起源推定において、新規開発した遺伝子解析法を用いることにより確度を向上させることができたことは高く評価される。
  • 【質問】秋川下流部流域の土地利用は、上流域や中流域と大きな違いがあるのでしょうか。
  • 【回答】秋川上・中流域の集水域の土地利用が95%程度が「森林・原野」であるのに対し、秋川下流部では「森林・原野」が52%程度、「住宅用地」が15%程度、「農用地等」が10%程度などとなっており、土地利用形態に差異が認められます。
事前評価 A:優れている      4
B:普通         1
C:やや劣っている
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • 堆肥から生残性の大腸菌が検出されることもあるようなので、まずはヒト由来の大腸菌をターゲットにして、発生源を突き止め、浄化槽等の処理状況を確認するのが良いのではないかと思いました。
  • 研究の最終目標に向けた適切な計画が立案されているものと思われます。
  • 現状の手法では起源推定を高精度で実施することは困難かもしれませんが、推定手法の限界をふまえた成果のとりまとめを期待いたします。
  • これまでの分析結果をもとに、効果的な水質改善策の提示に向けた研究が予定されています。
  • 大腸菌の高濃度地点・区間の特定にとどまらず、発生源の特定につながる解析や分析手法の提案につなげてほしいと思います。
    すでに言及されていますが、土地利用との関係は重要と思いますので、そうした調査も並行して進めて頂きたいです。
    また、実際にこの手法を適用する場合の課題などが存在するのであれば、そうしたことを克服するための提案も必要になると思います。
  • 大腸菌発生源の推定がゴールと思いますが、それに向けてどこまで進んでいるのか、何が課題なのかを明らかにして頂きたいと思います。
  • 対策の検討につなげるために、要因分析の検証と精度の向上を進めてほしいと思います。
  • 【質問】対策も考慮に入れた場合の、要因分析の要求精度はどの程度でしょうか?ヒトとそれ以外がわかれば十分とも言えるのでしょうか?
  • 【回答】対象河川においては、堆肥を含む畜産由来の大腸菌の混入が想定されるため、発生源対策のためには、ヒトのみなら家畜(ウシ・ブタ・ニワトリ)由来の大腸菌も区別して検出する必要があると考えています。
  • 要因の検証のためにも、周辺の土地利用の詳細な調査(堆肥の使用実態など)も併せて実施したら良いと思います。
  • 大腸菌数の広域調査の継続はデータ蓄積として意義がある。
  • 大腸菌の発生源については、面源汚染の可能性が高い地域・地点の対策の方向性を関連部署とも協議する必要があるのではないかと思料します。