東京都環境科学研究所

水素エネルギーの実装化に向けた調査研究(2024-2026年度)

令和7年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価

研究テーマ
水素エネルギーの実装化に向けた調査研究【継続】
研究期間 令和6~8年度
研究目的 脱炭素化に向けた動きが加速する中で、水素エネルギーの位置づけがさらに重要視されている。グレー水素やブルー水素も含め水素エネルギーの実装化していくこととしているが、脱炭素社会に向けては再生可能エネルギー(再エネ)由来の水素(グリーン水素)の普及を進める必要がある。そこで、東京都内において利用する水素エネルギーについて、より温室効果ガスの排出が少ない水素にしていくために、都の地域特性や最新の技術開発動向を踏まえた低炭素水素の水準等を検証するための調査・研究を行う。
研究内容
  • (1)東京都における温室効果ガス排出が少ないグリーン水素に関する調査・研究
  • (2)水素製造装置等の技術開発動向調査
  • (3)東京都立産業技術研究センター(産技研)との連携事業
中間評価 A:優れている      5
B:普通         
C:やや劣っている
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • 日本の国内全体で脱炭素のための水素利用を考えた場合の、東京都の水素利用の最適化も視野に入れて検討してください。東京都が水素を利用できるポテンシャルの検討とは別に、社会全体として東京都が2050年ごろに北海道や九州から水素を調達するのが妥当かどうかは検討の余地があると思います。
  • 輸入ブルー水素と国産生産グリーン水素について輸送時のCO2排出を考慮した脱炭素化の寄与度を推定する解析手法を考案し、解析を行ったことは評価されます。様々な仮定に基づいた推算である点は留意すべきであるが、現段階では適切な知見が得られているものと思われます。
  • 2050年推計の際の系統電力の排出係数がゼロという社会において、水素の役割がどうなるのか想像しずらく、バスや航空機の燃料として使用されるのであれば利用地点がかなり限定する(必ずしも都内とは限らない)のではないかと若干疑問に思います。
  • 研究内容の妥当性、進捗については、予定通り進められており、結果も示すことができていると評価しています。
  • 【質問】輸送距離の閾値についてはわかりやすいメッセージになると思います。こうした結果は広く都民や事業者、また周辺自治体の関係者に公表されているのでしょうか?
    また、コストに関する分析はどこまで進んでいるのでしょうか?普及に向けた課題は費用と思いますので、費用に関する分析もしっかりと取り組んで頂きたいと思います。
  • 【回答】結果は、東京都への報告のみでなく、年報等を通じて広く都民等に対して公表して参ります。これまでに行っている水素製造や燃料電池等の導入コストの試算結果からは、現時点では、実装化に向けた課題が大きいと認識しておりますが、本研究テーマの中で実施している技術開発動向調査と国が掲げているコスト等の目標を比較しながら、継続してコスト分析に取り組みたいと考えております。 
  • 水素の運搬まで考慮したグリーン水素活用の検討に関して、丁寧な試算がされており、大変興味深く聞かせていただきました。
  • 【質問】グレー水素の排出係数算出時において、CCSの実現・導入の可能性はどの程度でしょうか?
    また、都内から71kmの範囲におけるグリーン水素製造のポテンシャルはどの程度でしょうか?
  • 【回答】国の低炭素水素の基準は、グレー水素からのCO2排出量をCCSにより70%削減した値としていますが、厳しい値と言われています。現時点ではCCSの実証等の実例が限られおり、実現性や導入可能性については十分な知見を持ち合わせていないため、CCSの国内外の取組動向についても注視していきます。
    都内から71km以内といった首都圏では、余剰再エネは限られ、グリーン水素の製造ポテンシャルも小さいと考えられます。このため、系統電力の排出係数が高い間は、低炭素水素の利用拡大は見込めませんが、本試算の結果から、首都圏以外での再エネ拡大とそれによる電力の排出係数の低下が進む中で、国内の遠隔地からもグリーン水素の供給が可能となることにより、都内での低炭素水素利用の拡大の可能性が考えられました。
  • 国の「水素社会推進法」の施行を受け、脱炭素に貢献する水素の都の水準案(考え方)を定義し、国内で製造されたグリーン水素の都内での水素利用までのCO2排出量の各種条件下で試算した結果は、今後の都の施策に貢献するものと評価される。
  • 【質問】都のプランの水素使用量(2050年)は輸入水素(76.6%)>他県からの水素(18.9%)>都内製造(4.5%)とありますが、今後、世界的な水素需要の増加から輸入水素の確保が困難になるとの指摘があること、また国内産グリーン水素についても都が優先的に確保できるのかという点から、都内製造4.5%が適切なのかどうか(より高い目標は困難なのか)についてご教示願います。
  • 【回答】今回の試算は、委託仕様に基づき、都が独自に作成した水素の導入プラン(グリーン水素利用モデル)を前提に水素使用量を設定しました。このプランでは、都内で水素を製造するパターンとして、限定された地域での製造、運搬、利用を想定したモデル事例を作成しています。水素製造に関する今後の国内外の動向を踏まえて都内への供給元の再考が必要になると考えます。
事前評価 A:優れている      2
B:普通         3
C:やや劣っている
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • 【質問】ドイツでの現地調査は重要と思いますが、ドイツの事例が最適かどうかは検討の余地があると思います(なぜドイツを選択したのかが不明)
  • 【回答】IEAの調査によると、ドイツは、水素エネルギーの導入に向けたプロジェクト等が世界で最も多く、州レベルでの取組も多いといった特徴があります。また、中小企業等の参画や支援等も行われていることから、都立産業技術研究センターとドイツで共同調査を行うこととしました。
  • 2025年度に実施した解析手法で使用する原単位等をより正確に把握するための実機運用データの蓄積や文献調査を実施することは推定精度向上にとって重要だと思われますので、実施計画、目標は妥当であると評価されます。
  • 上述しましたが、2050年の都内においてどのようなエネルギーがどれくらい使用されるのかを想定したうえで、輸入ブルー水素および国内産グリーン水素の最適な利用戦略を検討していただきたいと思います。
  • 難しいかと思いますが、日本全土を対象とした(あるいは数カ所の大都市圏)を解析ができると日本としての水素戦略の一助になるように思います。
  • 研究提案については妥当と判断しています。
    一方で、研究対象範囲が限定的なので、システム全体をカバーできるような視点を広げた研究への拡張を期待しています。
    具体的には、製造段階に加えて、輸送段階における技術評価も検討できると、より広範囲な評価が可能になると思います。
  • 水素をどのように消費するかというもう一方の境界についての評価をすることで、電化と競合する分野に対してより有効な提案が可能になります。
    設備の更新などのタイミングを考えると、できるだけ早い成果が求められますので、研究を加速して頂きたいと思います。
  • 実機によるグリーン水素製造に関する実験で、想定の検証を進めてほしいと期待します。
  • 燃料電池などの普及の想定等の根拠も示せると良いと思います。
  • 都の地域特性や最新の技術開発動向を踏まえた低炭素水素の水準等を検証するための調査・研究として継続すべき内容である。
  • 【質問】ドイツでは州レベルでの取組を調査する予定となっていますが、特にヒアリングしたい具体的な取り組みの例について既に絞り込まれているのでしょうか。
  • 【回答】ドイツでは、州政府や民間企業によって水素に関する様々な取組が進められていますが、本調査においては、特に、大規模な水素製造、パイプライン事業、水素対応ガス火力発電への転換及び水素関連技術の安全性評価について、今後、都における水素関連の施策展開や水素サプライチェーンの構築等への活用が期待できるプロジェクトや水素関連産業拠点等を選定し、ヒアリング調査を実施する計画です。