東京都環境科学研究所

微小粒子状物質の濃度低減等に関する研究(2023-2025年度)

令和7年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価

研究テーマ
微小粒子状物質の濃度低減等に関する研究【継続】
研究期間 令和5~7年度
研究目的 PM2.5の高濃度化をもたらす二次生成物質について、ガス状前駆物質を含めて濃度変動特性を把握し、その発生源を明らかにすることを目的とする。また、ナノ粒子や大気中マイクロプラスチック等の新たな環境問題に関する情報を収集し、対策の必要性を検討する。
研究内容
  • (1)PM2.5濃度上昇要因となる成分組成に関する研究
  •    ①PM2.5濃度上昇事例の解析、②硝酸塩の生成条件、③PM1.0等の実態把握
  • (2)常時監視測定結果の解析等
  •    ①質量濃度及び成分組成のデータ解析、②関東PM・Ox合同調査における広域的検討
  • (3)大気環境の新たな課題に関する情報収集
中間評価 A:優れている      4
B:普通         1
C:やや劣っている
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • 【質問】長期的な観測を継続されていることを評価します。夏季の硫酸アンモニウムの濃度上昇に火山の噴火などの影響は無いでしょうか?人の健康に影響がある可能性もあるBCの長期的な濃度変動も検討してください。
  • 【回答】2020年8月に火山噴火の影響を受けた事例があります。地域の人為発生源の影響による硫酸アンモニウムの濃度上昇は、晴天時に日中に増加する日内変動を示しますが、火山影響は遠方からの輸送のため、明確な時間変動を示さず、高濃度時間が一定期間継続する特徴がありました。
    BCの長期的な濃度変動については、自動測定機(OBC)とフィルタ分析(EC)の結果を併せて検討していきたいと思います。 
  • 継続的なモニタリングよりPM2.5の挙動観測と濃度上昇要因に関する詳細な解析が実施され、加えてPM1.0の実態に関する貴重なデータが得られていることは評価されます。
  • 学術的な観点からも有用なデータが得られていると思われますので、積極的に外部への成果公表を進めて頂きたいと思います。
  • PM2.5の通年観測やナノ粒子の測定などが適切に行われ、その結果をもとにした解析が進められていると評価します。
  • 【質問】どのような観測点でも同様の傾向が見られるのでしょうか。それとも条件によって異なるのでしょうか。
    濃度が高くなることが予想される場合には、事前に注意報等を発令することが理想ですが、そうしたことを実現するためには追加的にどのような研究が必要で、何年くらいかかるのでしょうか?
  • 【回答】PM2.5質量濃度については区部、多摩部、といった地域の範囲でおおむね同様の変動傾向が見られます。一方で、PM2.5の化学成分ごとに見ると、地域特性や周辺環境によって傾向は異なっており、例えば、硫酸アンモニウムは関東域にわたって広く分布するのに対し、硝酸アンモニウムは主に区部から湾岸部にかけての狭い範囲で濃度が高まる傾向が見られます。これは、前駆物質である硝酸ガスやアンモニアガスの局所的な発生源の影響を反映したものと考えられます。PM2.5の予報については、数値シミュレーションモデルの精緻化が必要だと思いますが、そのためにはエミッションインベントリを充実させる必要があると思います。また、アンモニアガスや硝酸ガスといったPM2.5の前駆物質のモニタリングも整備する必要があります。
    ナノ粒子の環境実態については前駆体ガスを含めて観測体制が整備されておらず、広域での状況は把握できていません。今後、ナノ粒子の予測を行うためには、まず常時監視測定局における測定項目の拡充等を実施し、長期的なデータを蓄積していくことが必要だと考えられます。 
  • PM2.5の高濃度化をもたらす要因を季節別の特徴から明らかにした点は、成果として挙げられると思います。
  • 【質問】10nm以下の超微粒子の個数濃度が近年減少傾向にある要因は何が考えられるのでしょうか?
  • 【回答】大気環境中の超微小粒子は、燃焼起源などによる一次生成と、光化学反応による二次生成が発生要因として知られています。二次生成は硫酸による核形成が主要な経路として知られており、硫酸の前駆体となる二酸化硫黄ガスの濃度減少が超微小粒子の濃度減少に結びついていると考えられます。
  • 大気中ナノ粒子個数濃度が年々減少傾向にあることは興味深い。
事前評価 A:優れている      4
B:普通         1
C:やや劣っている
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • UFP濃度上昇の要因検討に関し、都環研近くの主要道路沿道と都環研での測定との比較を行うことも検討してみてください。
  • PM2.5濃度上昇要因に関するより詳細な解析、マイクロプラスチックなど新たな課題に関する検討等、目的に沿った研究計画が設定されているものと存じます。外部と積極的に連携することで研究の進展が期待されます。
  • 【質問】2件の外部資金に言及されていますが、これらに研究分担者として参加されるということでしょうか。また、研究計画書で予算計上されている同位体分析はいずれの研究で使用されるのでしょうか。
  • 【回答】2件の外部資金はそれぞれ研究分担者として参加しております。
    同位体分析については、本研究において使用することを考えています。具体的には、PM2.5中のアンモニア態窒素の安定同位体比を測定することにより、PM2.5に含まれるアンモニアの発生源について、寄与率の推定を試みます。
  • 外部資金も獲得しての研究であり、相乗効果を期待しています。
    濃度低減に向けた具体的な取組を、都民や事業者に対して提示できるように、他の研究課題(自動車環境対策の総合的な取組に関する研究など)と連携して取り組むことが求められていると思います。
  • 【質問】広域連携も計画に示されていますが、観測結果の共有に加えて解析についての具体的な連携も行われているのでしょうか(あるいは行われる予定でしょうか)?
    特に解析については、様々な条件で解析、評価することで信頼性も上がると思いますので、是非、東京都にリーダーシップをとって頂きたいです。
  • 【回答】東京都の常時監視測定局での観測結果については関東地方大気環境対策推進連絡会微小粒子状物質・光化学オキシダント調査会議、国立環境研究所とのⅡ型共同研究で共有し、共同で解析を進めております。今年度も上記2つの会議及び共同研究に参加し、広域での連携を継続します。
  • 様々な要因が関係していると思いますので、複数の研究テーマが連携することが必要になると想像しています。是非、多くの研究チームが協力して取り組むことを期待しています。
  • 外部資金を獲得して、充実した観測体制を維持・向上させられる点は評価できます。
  • 引き続き調査を継続して、高濃度要因の検証や対策につなげてほしいと期待します。
  • 継続的なデータ蓄積は行政の研究機関として重要である。